橋田壽賀子:「愛してたからできた」初の自叙伝的ドラマへの思い語る

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 脚本家の橋田壽賀子さんが自身の体験を脚本にしたTBSスペシャルドラマ「妻が夫をおくるとき」の取材会が11日、東京都内で行われ、橋田さんと主演の岸本加世子さんが登場した。ドラマは、89年に亡くなった橋田さんの夫で同局のプロデューサーだった岩崎嘉一さんとの別れをつづった物語。岩崎さんについて橋田さんは「他の人には本当に優しかった。結婚した以上は言い返さない。嫌なら結婚しなきゃいい。『俺の前で原稿用紙は広げるな』と言われたから絶対広げなかった。原稿を『いつ書いたんだ』ってよく驚かれました」と振り返り、「愛してたからできたんです。のろけてしまいましてすみません」としきりに照れていた。

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 亭主関白に描かれた岩崎さんについて、「どこが好きになった?」と聞かれると、橋田さんは「私だって頭がいいんですけれど、理屈っぽくて、私にない頭の良さがあった」とさらにのろけたが、「あと月給。私は脚本家として食べていけるか分からなかったんですが、彼の月給を聞いたら高かった。動機が不純なんです」と明かし、「主人の月給のおかげで、自分の好きなことが書けた」と照れ隠しをしていた。

 初の自叙伝的なドラマについて、橋田さん自身は書く予定がなかったというが「23回忌を迎えて、主人のありがたさがやっと分かったところだったので、自分の思いをみなさんに分かっていただける機会だと思った」と語り、登場人物を実名にした理由も、「実話に基づいたフィクションにはしたくなかったので、今までとは違う気持ちで書きました」とこだわりを語った。書き上げてみて「主人が守ってくれていると思いました。彼が生きていたら、私はライターになれなかった。彼が死んでくれたから、シビアな気持ちで書けた。怠けると彼から怒鳴られるような気がする。そういう意味では書いたかいがありました」と自信を見せた。

 ドラマは、岩崎さんが59歳、橋田さんが63歳。84年に同局を退職した岩崎さんは大病を患ったが克服して、第二の人生を踏み出そうとしており、橋田さんはNHKの大河ドラマ「春日局」の脚本に取り組みだしたばかりのころの秋の出来事。夫の岩崎が手術できないがんで持ってあと半年、という残酷な宣告を受け、延命しか道がないと知った「私」は、岩崎に告知せず隠し通すことを選択。落ち込むことも、泣くことも、仕事を降板して付き添うことも許されない、今までと変わりない日常を演じることになった……というストーリー。

 「私」こと妻の橋田壽賀子役を岸本加世子さん、夫の岩崎嘉一役を大杉漣さん、TBSの長寿ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」でもタッグを組んだ石井ふく子プロデューサー役を薬師丸ひろ子さんが演じるほか、中村梅雀さん、小泉孝太郎さん、神田正輝さん、泉ピン子さんという主役級の俳優陣が名を連ねている。生前に岩崎さんにかわいがられたという岸本さんは「お仕事という感じではなく、お父さん(岩崎さんのこと)に少しご恩返しをさせていただきたいという思いで、お引き受けしました。お父さんに見てほしくてやった」と話し、橋田さん夫婦については「こんなに夫婦がすてきなら、私も一度くらい嫁に行けばよかった」と橋田さんに話していた。

 完成したドラマは、つらくてまだ見ていないという橋田さんは、オンエアでドラマを見るといい、「楽しみにはしていません。つらいです。でもみなさまには見ていただきたい」と控えめにPRした。スペシャルドラマは23日午後9時から約2時間15分の拡大版で放送。(毎日新聞デジタル)

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