朝井リョウさんのベストセラー小説を、「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」(07年)の吉田大八監督が映画化した「桐島、部活やめるってよ」が11日に公開される。運動部、文化部、帰宅部のそれぞれの青春をみずみずしく、高校生の心の中をリアルに描いた原作のエッセンスがそのまま生かされている。実際の校舎を使って撮影をし、本当に学校の中に自分がいるような錯覚にも陥った。
ウナギノボリ
10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
とある金曜日の高校の放課後。校内のスター、桐島がバレーボール部を突然やめたらしいというニュースが校内を駆け巡った。映画部員の前田涼也(神木隆之介さん)は次回作の企画に頭を悩ませ中だった。バドミントン部、吹奏楽部は練習に励んでいた。帰宅部の菊池広樹(東出昌大さん)らは、中庭でバスケをしてひまをつぶしていた。桐島が部をやめたという事件は、やがて桐島の彼女・梨紗(山本美月さん)だけでなく、関係がなさそうな吹奏楽部の沢島亜矢(大後寿々花さん)、最も関係なさそうな涼也にも影響を及ぼしていく……というストーリー。
オムニバス形式で、主人公を代えながら展開していく小説を、登場人物の視点を変えながら、同じ時間と場面が何度も繰り返されていく形で映像に仕立てた。その効果が出ていると思う点は、誰もが主人公に見えてくることだ。学校の空気を肌で感じ、見ているうちに、俯瞰(ふかん)で高校時代が見えてくる。そうそう、このころは狭い校舎の中がすべてだった。運動部と文化部、イケている人とイケていない人に分かれていた。自分の限界も知ってしまい、手が届かないと決めつけてしまう。あらゆるところに壁があった。焦燥と不安……。高校生の普遍的な心情を、原作通りに浮き彫りにしながら、新しいラストを用意していて新鮮だ。映画部の涼也には、監督の青春が重なっているのだろうか? 見ているうちに気づけば心は10代に戻り、泣けていた。11日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開予定。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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