朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第81回 坂口安吾「白痴」

「白痴」作・坂口 安吾(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「白痴」作・坂口 安吾(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第81回は坂口安吾の「白痴」だ。

ウナギノボリ

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 暦の上では「立秋」を迎えつつも暑い日が続く中、私はあるトレーニングをしています。

 その……ちょっとタイトルが長いんですけど、「東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング」……通称「鬼トレ」。

 このソフトはワーキングメモリーという一時記憶を鍛えることで脳の活性化を図り、同時に集中力を強化できる効果があるそうなんです。

 いつも周りのことが気になってしまい、あまり集中力があるとはいえない私向けともいえるんですが、このソフトで私が注目したのは、トレーニング内容の一つに朗読が採用されていることなんです。

 「鬼朗読」と呼ばれるこのトレーニングは、出題される短文を次々と朗読した後、文中で線の引かれていた場所をまとめて書き出すというものなんですが、これが難し楽しくて……でも、一つのトレーニングは1日5分までしかできないんです(>_<)

 あまりやりすぎると脳を必要以上に疲れさせてしまうとか……。何事もほどほどがいいのかもしれませんね(*^^*)

 では、私がワーキングメモリーを鍛えた成果(?)として、この時期にお誕生日を迎えた作家さんとその代表作を、記憶力の続く限りご紹介します!

・8月5日

 壺井栄さん(1900年生まれ)「二十四の瞳」

・8月6日

 アルフレッド・テニスンさん(1809年生まれ)「国王牧歌」

・8月7日

 司馬遼太郎さん(1923年生まれ)「竜馬がゆく」

・8月9日

 トーベ・ヤンソンさん(1914年生まれ)「ムーミン」

 ダニエル・キイスさん(1927年生まれ)「アルジャーノンに花束を」

・8月11日

 吉川英治さん(1892年生まれ)「宮本武蔵」

 ……すみません、このあたりが限界みたいです。

 まだまだ鍛え方が足りませんね(>_<)

 ではここで、朗読倶楽部のお話……最後の大会前のお話、第9回です。

 以前の大会で知り合った、小口のどかさんの学校にお邪魔した私たち朗読倶楽部。彼女が所属する文芸部朗読サークルとの交流戦は、音楽室で開かれることになりました。

 小口さんたちは顧問の先生と部員3人の合計4人で、ちょうど私たちと同じ頭数です。

 交流戦で朗読する本は、小口さんから好きな本を持ってくるようにと言われていたので、大会で使う予定の本をそのまま持参していました。

 ところがいざ朗読を始める段になって、とんでもない話が飛び出したのです。

 「それじゃあ、お互いの本を取り替えましょう」

 そう提案した小口さんの意図が分からず、3人そろって「え?」と聞き返してしまう私たち。

 意図するところが分かったのか、一人笑みを浮かべている先生にどういうことなのかと質問しても、「言われた通りにしてみなさい」とおっしゃるだけ。

 とはいうものの、今回ばかりは釈然としません。

 先生がより実践的な練習をしようと提案されたからこそ、本番と同じ本を持ってきたのですから……と、いうところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 坂口安吾「白痴」

 こんにちは、今回ご紹介するお話は、無頼派の中心として活躍された作家・坂口安吾さんの短編小説「白痴」です。

 ロシアの文豪ドストエフスキーさんにも同名の著作(1868年)がありますが、こちらは全くの別作品で1946年に発表されました。本作が1999年に映画化されたほか、「安吾捕物帖」などの作品を原案としたアニメ「UN-GO」が2011年に放映されるなど、映像作品から坂口安吾さんを知ったという方もいるのではないでしょうか?

 表題の「白痴」とは、知的機能の発達が幼少期から停滞する重度の知的障害のことです。現代では差別用語と受け取られることが多いようですが、本作ではどのような意味を持って描かれているのでしょうか……?

 昼夜問わずの空襲警報が鳴り響く太平洋戦争末期、小さな町工場とアパートに囲まれるとある商店街。

 その中で仕立て屋さんの離れの小屋を借りている伊沢さんは、文化映画の演出助手を生業としていました。彼は芸術映画の創造を志していましたが、実際の仕事は流行を追い、戦争賛美に明け暮れるものばかり。当然そんな業界は彼にとって嫌悪の対象でしかありませんでしたが、その一方で失職して明日の生活が立ちいかなくなることを恐れてもいたのです。

 商店街の住人はしたたかで退廃的でしたが、特に伊沢さんの隣人は変わり者で、相当の資産家でありながらわざわざ場末の路地裏に家を建て、玄関は人の侵入を拒むかのように裏側に配置されていました。家族構成は、奇行が目立つ主人、常識人に見えてよくヒステリーを起こす母親、そして嫁の3人家族。お嫁さんは家事もお使いも満足にこなすことができず、おしゅうとめさんがヒステリーを起こす一因になっていました。

 ある夜、仕事から帰宅した伊沢さんは、押入れの中に入り込んでいたお嫁さんを見つけます。

 彼女のたどたどしい言葉を拾い集めてみると、どうやらおしゅうとめさんのヒステリーに耐えかねて逃げてきた模様。夜中に隣人の家へ乗り込むのもはばかられ、さりとて一晩泊めればあらぬ誤解を生み出してしまう状況。

 そのとき、伊沢さんの下した決断とは……?

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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