東日本大震災で避難所の一つとなった宮城県・石巻市立湊小学校の避難者を、避難所閉鎖までの半年間をかけて映し出したドキュメンタリー作「石巻市立湊小学校避難所」(藤川佳三監督)が18日に公開された。藤川監督は避難所に泊まり込んで撮影したという。被災者の本音と素顔に迫り、人間ドラマに仕上がっている。
ウナギノボリ
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東日本大震災から1カ月がたった11年4月末。湊小の教室に、同じ町に住んでいながらこれまで接点がなかった者同士が共に暮らしていた。避難所には支援物資が届き、ボランティアの人たちがやって来た。しかし使い古された衣類だったり、ふさわしくない歌が歌われたり……。避難所となった小学校の授業を再開するのかという課題もあった。町の人たちは、新しい出会いの中で懸命に前を向いていた……。
被災地をピクニック気分で訪れてほしくない……。そんな本音が思わず漏れる。カメラが被写体と同じ目線にいる。たとえば、校舎を借りて授業を始めた中学校の廊下を小学生が歩く。低い背の高さに合わせて、後ろから映し出す。震災体験を語り出す少女の表情を、時間を十分かけて待ちながら、グッと迫ってとらえている。避難所の人たちとともにいようという藤川監督の姿勢がうかがえる映像だ。出会った人たちを大切に映し出していることを感じる。とりわけ、70代目前の女性・愛ちゃんという人物と監督との出会いは本作の肝ではないか。愛ちゃんと小学生のゆきなちゃんの「たった60歳しか違わない」友情。そして、1人暮らしのこの女性の人生にも思いを巡らせる。震災、津波、原発……。人の姿をただ表面で追っているものとはわけが違う。不安や怒りはもちろんあるし、人って楽しいなと思わせる場面もある。人間の姿があらわになっている。プロデューサーは坂口一直さんと瀬々敬久さん。18日からK’s cinema(東京都新宿区)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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