ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は、「エスケヱプ・スピヰド」(九岡望著、吟画)です。アスキー・メディアワークス電撃文庫編集部の荒木人美さんに作品の魅力を聞きました。
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−−この作品の魅力は?
昭和一〇一年夏。物語の舞台は、20年前の戦争で廃虚の町と化した「尽天(じんてん)」です。その町で冷凍睡眠から目覚めたヒロイン叶葉(かなは)。暴走した戦闘兵器に襲われた彼女が、ひつぎで眠る不思議な少年と1匹の巨大な「蜂」に助けを求めたところから物語は始まります。奇妙な縁で、2人−−人間の少女・叶葉と軍最強の兵器「鬼虫」である少年・九曜(くよう)は、主従関係を結ぶことになります。
本作の魅力は、まずは、主人公とヒロイン−−兵器の少年と人間の少女の心の交流です。普通の女の子である叶葉が、軍最強の兵器の“ご主人”になってしまうというギャップもさることながら、兵器であるがゆえ人間の心を解さない九曜が、叶葉と一緒にいることにより徐々に心を開いていくさまには、かなりにやにやさせられます。
また、作品を語る上で外せないのが、作り込まれた世界観です。「昭和一〇一年」という、ノスタルジーと近未来が入り交じった時代に、昆虫形をした兵器「鬼虫」たちのバトルが展開します。無駄のない精緻な文章で描かれる迫力あるアクションシーンは「すごい!」の一言です。“格好いい男たちの熱いバトル”、これも作品の魅力の一つになっていると思います。
−−作品が生まれたきっかけは?
「エスケヱプ・スピヰド」は、第18回電撃小説大賞で大賞を受賞した作品で、12年の2月に発売になりました。応募総数が5293作品という難関を突破して、最終選考会では満場一致で大賞に選ばれました。興味深かったのが、どの選考委員の先生も、「自分しか大賞に推さないと思っていた……」とのことで、それだけ強烈な個性を放っていた作品なんだと思います。ただ、満場一致の大賞作品はだてではなく、作り込まれた世界観と熱いバトル、キャラクターたちの魅力……と、男女関係なく楽しめる要素満載ですので、ぜひ手に取ってみていただきたいです。かくいう私も、選考中に九曜と叶葉の絆に感動して涙ぐんでしまったりしました。
−−作家さんとイラストレーターさんはどんな方でしょうか?
九岡さんはいつもにこにこととても物腰柔らかな方です。また、廃虚マニアだということで、知らない道を歩くのが好きだそうです。いつも計画的に迷子になっているとか。本作も、その趣味が存分に生かされています。また、「鬼虫」という虫をモチーフにした作品を書いているにもかかわらず、実際は虫が苦手なんだとか!
イラストレーターの吟さんは、可愛い女の子はもちろん、格好いい男子から、廃虚、そして物語の肝となる兵器「鬼虫」に至るまで、とてもすてきなイラストを描いてくださいます。2巻以降にも「鬼虫」シリーズの仲間たちが出てくるのですが、すべての機体のデザインもしていただいています。たまに息抜きで叶葉と九曜の4コママンガをメールしてくださるといった、おちゃめな一面もあります。
−−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。
作品に関わっていて一番うれしいことは、作家の九岡さんも、イラストレーターの吟さんも、「エスケヱプ・スピヰド」の世界を本当に楽しんで描かれているところです。打ち合わせのときも、新しいアイデアがいろいろと出てきて、吟さんのイラストから新たな設定が生まれる……ということもよくあり、打ち合わせが毎回楽しいです。
大変なことは、兵器の種類や仕組みにあまり詳しくないので、バトルシーンについて、とにかく格好いいということは分かるけれど、仕組み的に合っているかが分からない時があることでしょうか……。そのあたりは、九岡さんが詳しいので、いろいろ教えていただいています。ただ、兵器に詳しくなくとも、バトルシーンの情景は物語を読めば明確に浮かんできますので、毎回すごいなあと感心します。
−−今後の展開、読者へ一言お願いします。
現在第2巻まで発売している「エスケヱプ・スピヰド」なのですが、物語は廃虚の町「尽天」から、帝都「東京」に移ります。九曜以外は全滅したと思われていた「鬼虫」シリーズの仲間たちや、皇女を名乗る少女・鴇子(ときこ)も登場し、ますます目が離せない展開となっています。第3巻も現在九岡先生が鋭意執筆中です。近々お手元にお届けできる予定ですので、ご期待ください!
アスキー・メディアワークス 電撃文庫編集部 荒木人美
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