注目映画紹介:「ジャンゴ 繋がれざる者」 これぞタランティーノ、痛快、豪快、爽快の極み

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 先ごろ発表された第85回米アカデミー賞で、クエンティン・タランティーノ監督が脚本賞に輝いた「ジャンゴ 繋がれざる者」が、1日から全国で公開された。前作「イングロリアス・バスターズ」(09年)では、ナチス占領下のフランスを舞台に、ユダヤ人がナチの高官たちを皆殺しにするという“妄想”を映像化してみせたタランティーノ監督。今回は、19世紀の米国南部を舞台に、賞金稼ぎとなった黒人奴隷が、愛する妻を捜しながら、自分たちを虐待した白人たちに復讐(ふくしゅう)していくという、これまたかなり過激なストーリーを展開させる。

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 舞台は1858年の米テキサス州。黒人奴隷ジャンゴ(ジェイミー・フォックスさん)は、元歯科医で賞金稼ぎのキング・シュルツ(クリストフ・バルツさん)に命を拾われる。賞金稼ぎとなり、シュルツと行動を共にするジャンゴの目的はただ一つ。奴隷として売られた妻ブルームヒルダ(ケリー・ワシントンさん)の行方を突き止めて取り戻し、自分たちの自由を奪った白人に復讐すること。そして、ついにジャンゴは、ブルームヒルダが冷酷な農園主キャンディ(レオナルド・ディカプリオさん)のもとにいることを突き止める……という展開。

 ストーリーの奇抜さもさることながら、ついつい目がいくのは、キャンディ役ディカプリオさんの何かが吹っ切れたような演技。金にものをいわせ、奴隷を囲うという、これまでにないほどの残忍な悪役ぶりを披露している。骨相学のうんちくを語る際の恐ろしさは半端ではなく、最近、「2年間で3本の映画に出てくたくたになった」と俳優業から遠ざかるコメントをしていたが、その3本のうちの1本がこれ。確かに、精神的に疲れそうな役だ。もう一人、目立つのはキャンディ家の執事スティーブンだ。サミュエル・L・ジャクソンさんが、自分も黒人なのに黒人差別主義者という最低な男スティーブンを演じている。その憎たらしい演技のせいで顔が変わっているように見え、ジャクソンさんであるとはすぐには分からなかったほどだ。なお、バルツさんが、今回のシュルツ役でアカデミー賞助演男優賞に輝いている。

 クライマックスでは、銃弾が降り注ぎ、銃弾が当たるたびに臓物が飛び散る。これぞタランティーノ映画。痛快、豪快、爽快の極み。あまりの強烈さに頭がクラクラした。1日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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