高橋久美子:「歌詞より詩のほうが丸裸ですね」 チャットモンチーの元メンバーがエッセー発売

初のエッセー集「思いつつ、嘆きつつ、走りつつ、」を発売した元チャットモンチーの高橋久美子さん 撮影:干田正浩
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初のエッセー集「思いつつ、嘆きつつ、走りつつ、」を発売した元チャットモンチーの高橋久美子さん 撮影:干田正浩

 作家で作詞家の高橋久美子さんが、初のエッセー集「思いつつ、嘆きつつ、走りつつ、」(毎日新聞社)を発売した。高橋さんを知る多くの人は、ロックバンド「チャットモンチー」の元ドラマーという認識かもしれない。だがエッセー集には、当時の話があまり書かれていない。「自分が公の場で活動していたことではなくて、生きていく中で、私がただの人間であることを書きたかった」と話す高橋さんに、今の心境を聞いた。(岡部恵里/毎日新聞デジタル)

ウナギノボリ

 −−初めてのエッセー集ですね。

 先に小説を出す予定だったんですが、エッセーの方が先に出来上がりまして。やっぱり私は作詞家なので、初期衝動でガツンと書くタイプなんですよね。このエッセーは、すごくいいトレーニングにもなりました。

 −−詩を書き始めたきっかけは?

 中学生のときの詩の授業です。そのころからノートに詩を書き始めました。私って学級委員や生徒会の委員長を任されるタイプで、人に弱みを見せることができなかったんです。そういった葛藤とか喪失感を書くようになりました。高校時代もどんどん人に話せないような闇がふくらんでいくので、その闇をどこで解決するのか落としどころが見つからず、ひたすらノートに向かっていました。

 −−歌詞と詩の違いは?

 詩の方が丸裸ですね。チャットモンチー時代も、私はドラムで、ボーカルのえっちゃんが歌ってお客さんに届けるわけですから、そうなると、(歌詞は)丸裸のまま、というわけにはいかないですよね。逆に詩の個展に来てくれた人たちは、みんな「高橋さん、大丈夫ですか」とか、町のおじさんとかも「あんた、こんな若いのにいろいろ考えとんのか。大変やな」と声をかけてくださるぐらい、別物ですね(笑い)。

 −−詩を書くのはどんなとき?

 一人で家にポツンとおるとき、ですかね。台所でトントンと何か切っているときや電車の中だったり、世の中の些細(ささい)な違和感を見たときに書きたくなりますね。

 −−今は音楽に触れている?

 あまり聴いていないかな。文章書くときに聴いていると、全然書けないんですよ。電車の中でもみんなヘッドホンしているけれど、私は街のざわざわしている感じとかが好きなので聴いていません。ライブも、作詞をさせてもらったアーティストさんや友人のライブは見に行くことはありますが、お客さんとしては一生見られないんでしょうね。「もうちょい音整えて!」とか「照明、今のタイミングじゃないじゃろ!」とか考えてしまう(笑い)。ステージを降りたからこそ分かる感覚なんだなと思いますね。

 <プロフィル>

 作家、作詞家。1982年、愛媛県生まれ。鳴門教育大学在学時に、ガールズロックバンド「チャットモンチー」のドラムとして加入。「ハナノユメ」「サラバ青春」「シャングリラ」「8cmのピンヒール」などの作詞も担当。10年から、画家の白井ゆみ枝さんらと詩と絵の展覧会「ヒトノユメ展」を開催している。11年、チャットモンチーを脱退。主な著者は詩画集「太陽は宇宙を飛び出した」、写真詩集「家と砂漠」など。アイドルグループ「ももいろクローバーZ」の「空のカーテン」の作詞なども担当。初のエッセー集「思いつつ、嘆きつつ、走りつつ、」が毎日新聞社から発売。ホームページは http://takahashikumiko.com/top

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