フランケンウィニー:プロダクションデザイン担当者に聞く 背景の街並みに「ティムの世界観が凝縮」

ティム・バートン監督作「フランケンウィニー」のプロダクションデザインを担当したリック・ハインリクスさん(C)2013Disney
1 / 4
ティム・バートン監督作「フランケンウィニー」のプロダクションデザインを担当したリック・ハインリクスさん(C)2013Disney

 「アリス・イン・ワンダーランド」(10年)などで知られるティム・バートン監督の最新作「フランケンウィニー」(12年12月15日公開)のブルーレイディスク(BD)とDVDが発売中だ。映画は、孤独な少年ヴィクターと“禁断の実験”によってよみがえった愛犬スパーキー(フラン犬)とのピュアな愛が、街中に大事件を巻き起こすという冒険ファンタジー。モノクロ(白黒)の3Dで描かれている。プロダクションデザインは「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズや「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」(11年)なども手掛けたリック・ハインリクスさんが担当した。「ダーク・シャドウ」(12年)や「バットマン・リターンズ」(92年)などバートン監督とのタッグも多いハインリクスさんに、今作の製作の裏側を聞いた。(毎日新聞デジタル)

ウナギノボリ

 −−バートン監督が他の監督と明らかに違う点はどういう部分でしょうか。

 独自の世界観がきっちりとあることが最大の違いというか、最大の魅力だと思いますね。彼の描くスケッチ、ビジョンというものがユニークな形で彼の頭の中にきっちりとできていて、それが映像として再現されるというのが彼の優れたところです。キャラクターの世界観、スタイルすべてほかにはない、まさに“ティム・バートンスタイル”という世界があると思うんですが、さらにそれが作品を重ねるごとに進化していくという、そこがまたすごいところだと思います。

 この「フランケンウィニー」にしてもオリジナルの実写版の短編があるんですが、それを長編アニメに作り替えるに当たって、(原作映画と新作の間にある)それまでの何十年の間にバートン監督の進化したスタイルをもって魅力的に別のものとして完成させた、それは素晴らしいことだと思いますね。

 −−元になった実写映画をそのまま新作に反映させたシーンはありますか? また逆に、大きく変えた部分はどこでしょうか

 そっくりそのまま変わっていないのは、スパーキーをよみがえらせる屋根裏の実験のシーンなんですけど、あれはほぼショットごと一コマ一コマ、短編と同じにしました。テーマ的な部分でも一番中核となる死んだものを生き返らせるのが果たしていいことなのかどうか、倫理的な疑問を投げかけているんですけれども、そういった部分とか、あとは往年のユニバーサル映画とかモンスター映画などに影響を受けた見た目がそのまま残っているところなどですね。

 違いとしては、アニメになったことで、スパーキーたちのキャラクターの表現が細かく描けるようになりました。特にスパーキーについては実写版のオリジナルの短編では本物の犬だったので演技にも限界があるわけですけれども、今回はアニメーションになったことで、本物の犬みたいにしながらも、逆に本物よりも表現豊かな喜怒哀楽といった感情が存分に表現できたと思いますね。

 −−現場ではティム・バートン監督と意見の相違などもあったと思いますが、どんなところでぶつかったりしたでしょうか。また、それをどのように解決しましたか?

 もちろんしょっちゅう意見がぶつかることはあったんですが、その作品における役割について自分なりのリサーチをして、そこから今回はこういったアプローチで行こうというアイデアを練り上げるわけなんですね。バートンはバートンで、彼が今回の映画はこういったアプローチでやりたいっていう彼なりの選択や判断があるわけなんですけれど、当然違ってくるわけなんです。

 結局、一言で言ってしまえばテイストの違いということで、意見の違いとは異なると思うんですよ。今回の例で挙げれば、舞台となった街並みは、自分はティムが育った米カリフォルニア州バーバンクの街と米国の南西部の田舎町のような雰囲気を融合させたようなスタイルをやりたいなと思っていたんですが、ティムはちょっと違った考えだったようで、そのへんで意見が食い違ったところもあるんですけれど。といっても結局、とどのつまりは映画は監督のものですから、ティムのビジョンをいかにスクリーンに実現するか、それが自分の仕事なので、それ(ティムの考え)を無視して自分のやり方を通すということはないんですね。それにこれだけ長い間、彼とは作品をいくつもやってきていますから、彼とは意思の疎通というものは完璧にできる。ツーカーといいますか、彼のリズムとかアプローチというものは理解しているので、本当に問題はないんですけれども。

 −−プロダクションデザインという立場から、今回一番こだわった点は?

 この映画はやはり白黒プラス3Dということを念頭に置いてすべてデザインを手がけたわけなんですが、自分の中で、舞台となるニューオランダの街というのが一番こだわりましたね。街の中心部をどういう感じの見た目にしようかというのを絵コンテを基にセットを造っていくわけでなんですけれども、その街が最終的にどれだけ映画の中でフィーチャーされるのかというのが分からないわけで、どこまで撮っているのか分からないんですけれども、とにかくどこから撮ってもいいようにかなりディテールを細かく造ったんですね。そこが一番、街の見た目、雰囲気というのも個人的に気に入っていますし、この街はある種、典型的なティム・バートンの世界を集約したものといってもいいと思うんです。ごくありきたりな小さな二次元の街、うしろを見れば丘の上にへんてこりんな風車が建っているような、そういった一瞬変に見えるものが、ストーリーの中では重要な役割を果たしていたりして、そういう一見変わったコンビネーションというものがティム・バートンならではの世界観になっているのではないかと思うんです。

 −−どうもありがとうございました。

 *……BD(2枚組み、デジタルコピー付き)とDVD+BDのセット(DVD1枚+BD1枚)は各3990円、3Dスーパーセット(3枚組み、デジタルコピー付き)は6090円で、すべて17日発売。また、レンタル、オンデマンド配信も同日に開始された。

写真を見る全 4 枚

映画 最新記事