世界を守る最強の機密部隊「G.I.ジョー」とテロ組織「コブラ」がし烈な戦いを繰り広げるアクション大作「G.I.ジョー バック2リベンジ」(ジョン・チュウ監督)が全国で公開中だ。今作に出演するイ・ビョンホンさんが、作品のPRのためにこのほど来日。悪役ストームシャドーを演じるための“肉体改造”や、ストームシャドーの人間性、さらに、ブルース・ウィリスさんとの共演の感想などを語った。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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「G.I.ジョー バック2リベンジ」は、2009年に公開され大ヒットした「G.I.ジョー」の続編。前作で、テロ組織コブラのたくらみを食い止めたG.I.ジョーだったが、今作ではいきなり窮地に立たされる。なんと、米大統領がG.I.ジョーの壊滅指令を出したのだ。しかしそれはコブラが仕掛けたわなだった。G.I.ジョーは伝説の司令官ジョー・コルトンに助けを求める。かくして、G.I.ジョー対コブラによる前作以上の戦いが繰り広げられる……という展開。
ビョンホンさんは前作に引き続き、革製の白いコスチューム姿で登場する。マスクをつけたままのアクションは「本当に大変」だったそうで、視野をさえぎられることよりもむしろ、「マスクには息をしやすいように布を当てていましたが、それでも途中休んで息を整える必要があった」ほど息継ぎに苦労したようだ。
激しいアクションをこなすためのトレーニングは前作でも経験済みだ。それでも今作で必要とされたのは「前作以上に筋肉をつける」ことだった。そのため1日4~5時間のきつめの運動メニューを3カ月間、また武術の訓練を2カ月間こなした。食事も前作での「1日3食とプロティン」から「1日6回2時間おきの食事」に変えた。その成果はコスチュームの下に隠されたほれぼれするほどの腹筋と上腕筋、厚い胸板に見事に表れており、それを“おがめる”のも、今作の楽しみの一つだ。
肉体同様、内面的な変化の表現にも気を配った。今作のストームシャドーは、怒りと悲しみが前作以上に打ち出されている。それについて、ビョンホンさんは「ストームシャドーは表向きはクールに見えるキャラクターですが、その裏には彼なりの隠された物語があります。彼は子供時代、歪曲(わいきょく)された真実の中で、本当に孤独な生き方を強いられてきた。あわれなファイターだと思います。だからこそシニカル(皮肉屋)にならざるを得ず、それがまた他人の目には、クールと映るのだと思います」とその二面性を分析し、演じるキャラクターへの共感をにじませた。
ところで今作には、「初代ジョー」と呼ばれるG.I.ジョーの伝説の司令官ジョー・コルトンが登場する。演じるのはウィリスさんだ。共演がかなったハリウッドの大物アクションスターに、ビョンホンさんは羨望のまなざしを送っていたという。「私の韓国における俳優人生は20年ほどです。その間、台本に頼らず、水の流れに身を任せるがごとく、感じたこと、思ったことを演技に反映することがたびたびありました。そうするほうが結構いいものができることがあるからです」と話す。
ところがその方法は、今回ばかりは通用しなかった。というのも「英語のせりふは暗記しなければいけないし、暗記したらしたでアクセントやイントネーションに気を取られ、このせりふは観客にきちんと届いているのだろうかと考えながら演技をした」といい、とても“流れに身を任せる”どころではなかったからだ。そんな中で現場で目にしたウィリスさんの演技は「彼のせりふは本当に自然で、普段の生活で話しているようでした。もちろん彼は米国人だから当然なのですが、そんな彼を見て、早く私も米国人の感情を理解し、文化に慣れ、あんなふうに英語を操れる時が来ればいいなと思いました」としみじみと語った。
この仕事を始めたころは、よく友人たちから、俳優=楽しい職業、あるいは幸せな職業だとうらやましがられたそうだ。そのときの感情を「そのたびに私は、こんなにつらいのにどうして分かってくれないんだ。でも、どうせ言っても理解してもらえないとため息ばかりついていました」と打ち明ける。しかし、あるときから「自分の視点を他人のそれに置き換える」よう、考え方を変えたそうだ。それによって自分を客観的に見つめ、内なる葛藤と折り合いをつけられるようになったという。「それはつまりメンタルコントロール。それがうまくできれば、それこそ神の境地だし、私はそうはまだできませんが、でも、努力をしていけばそこに近づけると思っています」を向上心をあらわにする。そうした俳優としての精神的修練を重ねるビョンホンさんが、葛藤を抱えているからこそ魅力あるストームシャドーの姿と一瞬、重なった。映画は8日から公開中。3Dも同時公開。
<プロフィル>
1970年、韓国ソウル生まれ。91年、韓国のテレビドラマ「アスファルト 我が故郷」で俳優としてのキャリアをスタートさせる。以降、「明日は愛」(92~94年)、「Happy Together ハッピートゥギャザー」(99年)、「美しき日々」(2001年)、「オールイン 運命の愛」(03年)、「IRIS アイリス」(09年)などのテレビドラマに出演。一方、映画は「JSA」(00年)に出演し、日本でも顔を知られるようになる。その後「甘い人生」(05年)、「グッド・バッド・ウィアード」(08年)、「悪魔を見た」(10年)、「王になった男」(12年)などに出演。「G.I.ジョー」(09年)でハリウッド進出を果たした。また、日本のテレビドラマや映画にも出演しており、これまでに映画「HERO」(07年)やテレビドラマ「外交官 黒田康作」(11年)にも出演している。
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