注目映画紹介:「コン・ティキ」 手製いかだで太平洋横断に挑んだ男たちを描く冒険映画

「コン・ティキ」の一場面 (C)2012 NORDISK FILM PRODUCTION AS
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「コン・ティキ」の一場面 (C)2012 NORDISK FILM PRODUCTION AS

 手製のいかだで8000キロにおよぶ太平洋横断に挑んだ男たちを追った映画「コン・ティキ」(ヨアヒム・ローニング監督&エスペン・サンドベリ監督)が29日に公開された。今年の米アカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされた作品だ。

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 1947年、ノルウェーの人類学者トール・ヘイエルダール(ポール・スべーレ・バルハイム・ハーゲンさん)は、「ポリネシア人の祖先は南米から海を渡ってやって来た」という自身の学説を証明するために、5人の男たちと1500年前の先人たちが作ったであろう同じ仕様のいかだで太平洋横断を試みる。その101日におよぶ航海と、事前に計画を実行に移すまでの様子を描いていく。6人が乗り込んだ手製のいかだは、先人たちがそうであったからという理由で、金属ワイヤなどの現代の道具は一切使わず、木材とバナナの葉、竹や麻のロープなど自然素材だけで作られたエコロジー仕様だ。途中には、嵐に襲われたり、サメと遭遇したりといった“事件”もあり、仲間割れも起こる。そうしたピンチをくぐり抜けながら冒険は続いていく。

 ハリウッドからのオファーを長年断り続け、ノルウェーの製作会社が納得のいく形で映画化するということで、ようやくヘイエルダールさんご本人がゴーサインを出したという。ご本人は作品を見ることなく02年に亡くなったが、息子のトール・ヘイエルダールJr.さんが、完成した作品に対し「忠実に描かれている」と太鼓判を押す。メガホンをとったのは、未公開作「ナチスが最も恐れた男」(08年)のローニング監督とサンドベリ監督。脚本は、「ソフィーの世界」(99年)のペッター・スカブランさん。

 のちに多くの冒険家や探検家に影響を与えたといわれるコン・ティキ号。その航海の日々を追った今作は、大人になってもなおロマンを持ち続ける“冒険野郎”の心をくすぐるはずだ。かくいう筆者も、これが幼いころに読んだ「コンチキ号漂流記」のモデルとなった話だったことに今作を見終えて気づき、しばし懐かしさにひたった。29日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

 <プロフィル>

 りん・たいこ=教育雑誌の編集、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。先日、シネコンで洋画を見た際、字幕が出ないトラブルに見舞われた。フィルムなら起こりえないこと。デジタルの弊害はこんなところに出ていた。

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