ブック質問状:「大泉エッセイ」 “人を虜にする男”の魅力が満載 「どうでしょう」秘話も

大泉洋さんの「大泉エッセイ ~僕が綴った16年」(メディアファクトリー)のカバー
1 / 1
大泉洋さんの「大泉エッセイ ~僕が綴った16年」(メディアファクトリー)のカバー

 話題の書籍の魅力を担当編集者が語る「ブック質問状」。今回は、発売当初に売り切れが続出、増刷を繰り返し、4月の発売から2カ月で20万部を突破するなど異例の大ヒットとなっている俳優の大泉洋さんのエッセー「大泉エッセイ ~僕が綴った16年」(メディアファクトリー)です。メディアファクトリーの「ダ・ヴィンチ」編集部の村井有紀子さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この書籍の魅力は?

 本書には97年から大泉洋さんが執筆されてきたエッセーが108編、さらに書き下ろし4編、合わせて計112編を収録しています。(大泉さんが出演する)バラエティー番組「水曜どうでしょう」(北海道テレビ放送)の初回秘話やご家族とのやりとり、さらに北海道から広げ、東京で仕事をしはじめた当初の出来事など、さまざまなエピソードが散りばめられたエッセーからは、大泉さんの16年間もの年月を感じられ、時の流れに敏感となり、また“大泉節”の利いた文面は「まるで大泉洋が爆笑話をしゃべっているよう」との感想を多くいただいていております。

 書き下ろしでは「水曜どうでしょう」への本音、また、ローカルタレントから全国区へと激変した心情を初告白。さらに、大泉洋が語る“大泉洋の在り方”など、メディアではなかなか見られないご本人のお考えや真意が読み取れる渾身(こんしん)の原稿となりました。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 「過去に雑誌3誌で執筆してきた原稿があるから、いつか本にしたい」とご本人からお話をいただき、そこから打ち合わせを重ね、大泉さんが40歳となる13年4月に出版することになりました。連載当時は2誌にわたって同時期に執筆された上、1誌に関してはイラストまでご自身で描かれており、当時から締め切りに追われまくっていたようです。

 ちなみに、書き下ろしでも、締め切りには大変苦しんでおられました。装画に関しては、ご本人から「あだち充先生のファンだ」と聞いておりまして、「ダメ元であだち先生にお願いしてはどうか?」と編集サイドから大泉さんに提案したところ、「絶対にあだち先生にお願いしたい」とのことでした。しかしながら、あだち先生が自著以外の本の装画は断られているとのお話を受け、そこから大泉さんの希望であだち先生との対談をお願いして、しつこく、強引に(笑い)お願いさせていただいたところ、(あだちさんのマンガ「MIX」が連載中の)「ゲッサン」(小学館)編集長様の説得のお力も借りて、あだち先生から快諾をいただくことができました。「これは神様からのプレゼントだ」と大興奮されて、喜ばれておりました。

 −−大泉さんはどんな方でしょうか?

 とにかく“人を虜にする”という天性の力を持っていると思います。あだち先生も対談後に、大泉さんを“魅力的な男”とおっしゃってくださったようです。出会う人は皆、大泉さんのことを好きになっていくのではないでしょうか? エッセーにも「人を嫌いになりたくない」「だから日々感謝する気持ちを忘れない」と書かれておりますが、人が大好きだからこそ、人から好かれていて、人に対してとても気遣われる、根っから純粋で優しい方だと思います。

 書き下ろしの締め切り交渉でも電話で「腹を割って話したい」(『水曜どうでしょう』の名言です)と開口一番に言ってこられ、編集としては朝の4時でも思わず笑ってしまったり、「ちゃんと寝てね」とこちらを気遣ってくださったり、締め切りで徹夜になろうとも、楽しく笑いながら仕事をさせていただけました。

 −−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことに ついてそれぞれ教えてください。

 編集者として、大泉洋さんのエッセー本を担当できたこと、あだち充先生にイラストをいただけたことにもう感謝の気持ちでいっぱいですが、発売2カ月で20万部突破という大きな反響をいただけたことも、とてもうれしく思います。感想のハガキも10~70代までの幅広い年齢の方から連日届いており、「つらいことがあったけどエッセーを読んで、笑って元気になった」「大泉さんの言葉で頑張ろうと思えた」など、枠にいっぱいの文字で書かれているのを見ると、胸が熱くなります。

 また、「ゲッサン」では「大泉エッセイ」のPOP書きをしていくという横山裕二さんのルポマンガの連載が始まったり、HTB(北海道テレビ放送)のスタッフさんが応援してくださったり、大泉さんの主演映画「探偵はBARにいる」の宣伝チームがプロモーションでお力を貸してくださったりと「面白いことを一緒にやりましょう」と会社を超えて協力してくれる方々と巡り合い、今後もこれほど垣根を越えてたくさんの方々と楽しく仕事ができる、こんな幸せな機会に恵まれることってあるのか? と若干不安になりました(笑い)。

 −−最後に読者へ一言お願いします。

 大泉ワールド全開の「冗舌な」エッセーが、ぎゅぎゅっと詰め込まれた本です。疲れたとき、しんどいなあ、と思ったとき読んでみてください。大泉さんに、がっつりと笑わせてもらえます。若かりし大泉さんと一緒に旅をして、成長して、時にしんみりとして、家族や仲間を思い出して、そしていつの間にか元気をもらえることだと思います。また“大泉洋のようなコミュニケーション力”が欲しい方も必読です。

 メディアファクトリー ダ・ヴィンチ編集部 村井有紀子

ブック 最新記事