2012年に公開された米国では初登場第1位を記録した「クロニクル」(ジョシュ・トランク監督)が日本で27日に公開された。ある日、特殊な能力を手に入れた高校生3人組。手を触れずに女子のスカートをめくったり、雲の上でアメフットをしたり……。そんなあらすじから、若者を主役にした、軽めの、お色気をちょっぴり含んだ青春ドラマだとばかり思っていた。ところがそうは問屋が卸さず、当初想像していたストーリーから大きく逸脱し次第にホラーめいていく、とんでもないお話だった。
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高校生のアンドリュー(デイン・デハーンさん)は学校ではいじめられ、家では酒びたりの父親の暴力に悩む毎日。彼が唯一心を許せるのは、いとこのマット(アレックス・ラッセルさん)だけ。ある夜、マットに誘われ友だちのパーティーに行ったアンドリューは、マットとアメフット部のスター選手スティーブ(マイケル・B・ジョーダンさん)とともに巨大な穴を見つけそこに入って行く。するとそこにはえたいの知れない物体があり、それに触れた彼らの肉体には異変が起き始める……という展開。
アンドリューがビデオカメラ好きという設定から、今作も彼が回すビデオカメラの映像やパソコンに内蔵されたカメラ越しの映像などで構成されている。いかにもSNS世代に受けそうな演出だ。しかしなんといっても今作の妙は、そのストーリーにある。手に入れた超能力をいいことに使うとヒーローになるが、ではそれを自分の不満やうっぷんを晴らすために使ったとしら? いたずらを徐々にエスカレートさせ、取り返しのつかない行為にまで及んでいく若者を見ながら、人間が分不相応な能力を手に入れることのあやうさに気づかされる。
なお、原案も手掛けたトランク監督は、これまで短編映画を動画サイトで公開したり、テレビドラマの仕事をしており、これが初の長編監督作だ。今作のヒットを受け、2015年米国公開予定の「ファンタスティック・フォー」のリブート版の監督に抜てきされた。27日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか首都圏で2週間の限定公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(1978年)と「恋におちて」(84年)。先日、ニューヨークへ旅行に行き、自由の女神像に上り、ミュージカルを見て、ブルックリン橋を渡り……楽しいひとときを過ごせた。
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