SPECIAL EDITED VERSION 『ONE PIECE』魚人島編
第1話 再出発!集う麦わらの一味!
11月3日(日)放送分
長編映画の引退を宣言したアニメーション映画界の巨匠、宮崎駿監督の作品の歌といえば、初期の「天空の城ラピュタ」のエンディングテーマ「君をのせて」、そして「となりのトトロ」の主題歌、オープニングの「さんぽ」などを歌った井上あずみさんの高音の澄んだ声を思い出す人は少なくないはずだ。今月、デビュー30周年記念のコンサートを開く井上さんに当時の思い出、そしてこれからについて聞いた。(油井雅和/毎日新聞)
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「一番好きな言葉は『継続は力なり』。山あり谷ありの30年でした」という井上さんは、金沢市出身。「子供のころから岩崎宏美さんのような歌手になりたくて、地元のいろんなのど自慢大会に出ました。テレビのオーディション番組『スター誕生』とか『君こそスターだ』とか。五木ひろしさんが出られた『全日本歌謡選手権』も小学5年生のときに出て、1回だけうかりました」と振り返る井上さん。
1983(昭和58)年にデビュー。「アイドルでデビューしたんですけど、当時は松田聖子さんとか中森明菜さんとか先輩は素晴らしい人ばかり。83年組って、いとうまい子ちゃんとか岩井小百合ちゃん、武田久美子ちゃん、森尾由美ちゃん、松本明子ちゃんとかアイドル全盛期。なかなか出るすき間がなくて、あまり売れなくて、『アイドルだけど歌唱力がある』ということでデビューしたんですが、賞レースもあまり出られなくて、デビューから3年ぐらいリポーターとかドラマの脇役とか歌以外の仕事が多かったです」とエピソードを語る。
「歌を歌うために金沢から上京したのに……」と思っていたころ、チャンスは突然訪れた。86年6月、「ラピュタ」公開2カ月前のこと。「『アニメのサウンドトラックのオーディションがある。こういう曲があって歌う人探してて、そういえばあずみちゃん歌手だったよね』っていわれて(笑い)。そのくらい歌の仕事がなくて。『これっていう曲を何曲か聴かせてくれるかな』といわれて、あのころはカセットでしたが、デビュー曲の『スターストーム』など何曲かを録音して宮崎駿監督と高畑勲監督に聴いていただいたら、『この子だったら歌えるかもしれないね』と褒めていただいたんです」といまや巨匠といわれる2人のアニメ監督にOKをもらったことを明かした。
映画公開の2カ月前とはずいぶん急な話だが、「なぜかというと、『君をのせて』という曲がとても歌うのが難しい曲で、20人ぐらいオーディションを受けてもなかなか決まらなかったそうなんです。だから、私が歌えなかったらもうメロディーだけにしようかと、切羽詰まっていたそうです。すぐデモテープを作ることになり、作曲の久石譲さんの事務所に行って、久石さんが歌った『君をのせて』を聴かせていただいたら、『明日レコーディングするから』と。トントン拍子に決まったんです。チャンスってこういうことをいうのでしょうか。でも、『君をのせて』はすごくいい曲だったので、私が歌いたい曲はこんな曲だ、絶対歌いたいと思って臨みました。実は私、『風の谷のナウシカ』は見てましたが、ラピュタは内容も全然知らずに歌ったんです」と当時の思い出を振り返る。
ジブリ作品のファンなら誰もが知っている曲を歌っている井上さんだが、井上さんのことを知らない人も少なくない。「『ラピュタ』があって『トトロ』、そして『魔女の宅急便』とありましたが、その間はフリーで、アルバイトをしてたんです。ですから、フリーになってトトロの話があり、自分からトコトコとプロモーションに行きましたし、トトロのイメージアルバムを映画の前に作ったんですが、あのときは昼間は喫茶店でバイトをして、夜、久石さんのところへレコーディングへ行ってました。『魔女の宅急便』の時は広告代理店でバイトしてました」と歌手だけでは食べられない時代もあったことを明かす。
仕事が安定してきたのは、ファミリーコンサートを始めてから。「もう20年以上になります。今は年間80カ所ぐらい回ってるんですが、二十数年前は年数回でした。最近は、あの当時お子さんだった方がお父さん、お母さんになって、子供を連れて来てくださる。お子さんがいない方はご夫婦で来ていただいてます。始めた当初は小さいお子さんとお母さん、おばあちゃんと女性ばっかりが多かったんですが、次第にお父さんとか男性の姿が増えました。あと、家族みんなでいらっしゃる方が多くなりました。『きょうパパは仕事で来られなかったけれど一番のファンはパパなんで』と、お父さんの名前をサインに書くこともあります」と客層の変遷を語る。
コンサートには9歳の愛娘「ゆ~ゆ」さんが共演する。「おんなのこです。6さいです♪」の歌詞でNHK「みんなのうた」で放送された「6さいのばらーど」を耳にした方も多いことだろう。今年も「みんなのうた」でワタナベフラワーとの共演で「タンタンタン」が放送された。
「娘には結構厳しいですよ。『今、音がフラットしてるよ』とか。まだ壁がないみたいで(笑い)。9歳で壁に当たったら困りますけど。私が『ジブリ名曲セレクション』というアルバムを出したとき、『ナウシカ・レクイエム』の久石さんのお嬢さんが『らん、らんらららんらんらん…』というところを歌ったんです。『一人で歌える?』って聴いたら『歌う!』って。それで味をしめたんでしょうか。私の子供のころと似てますね。私も、ピンキーとキラーズの『恋の季節』を身ぶり手ぶりをしながら歌ってたら、うまいねとか言われて機嫌よくなっちゃいましたっけ」と笑顔で振り返る。
今年は宮崎監督の引退宣言があった。「来る時が来たなと思いました。ただ、監督もおっしゃっていましたが、アニメを作るには気力、体力がいるんですね。お年を召して、次の作品のことを考えて、限界なのかなと思われたのでしょうか。お疲れさまでしたと言いたいですし、日本のアニメーションが世界にこんなに広がったのは宮崎監督のお陰と思うので、ありがとうございますという気持ちでいっぱいです」と感謝の言葉を述べた。
30周年を迎え、2枚組みの記念アルバム「井上あずみ ベスト~セレブレイション~」を10月にリリースした。「君をのせて」を筆頭に全30曲。さらに、さだまさしさん作詞・作曲の「愛の本当のこと」が収められている。親子の愛を描いた作品だ。
「中学生のときに最初に行ったのがさださんのコンサート。同じレコード会社になって、いつか(曲を)書いてもらいたいな、それが無理ならさださんの曲がカバーできたらいいなと思っていたら、1年がかりで書いていただきました。ファミリーコンサートでこういう歌が歌える歌手になってほしいという願いを込めての作品だと思います。実は難しい曲なのですが、この曲が歌えるようになれば、歌の表現の幅が広がってくると思います。子供がじっくり聴ける、子供を引きつけられるような曲にしたいです」と熱弁する。
そして、今回の30周年記念コンサートは「これまでの集大成です。音も素晴らしいホール(文京シビックホール大ホール)で、落ち着いて聴けるアンサンブル(篠崎正嗣とカレイドスコープアンサンブル)がついていただける。篠崎さんはジブリ作品にも参加されてますし」と聴きどころを語る。
ゲストは「弘道お兄さん」でおなじみ、佐藤弘道さん。「昨年、岐阜国体で同じ曲をアレンジを変えて2人で歌ったんです。ダメもとで頼んだら『あずみ姉さんのためなら行くよ』と言っていただいて」とうれしい言葉をもらった。
「いろんなキャラクターも出てきてくれます。以前、プロデューサーにこう言われたんです。『ファミリーコンサートって子供だけが楽しむものじゃないんだよね。子供が楽しんでるところをニコニコ見ているお父さん、お母さんがいる、それがファミリーコンサートなんだよ』って。家族みんなで楽しめるコンサートにしたいですね」と意気込みを語った。
「井上あずみデビュー30周年記念公演」は24日午後3時開演、東京・文京シビックホール大ホール(地下鉄後楽園駅・春日駅直結。JR水道橋駅徒歩10分)。ゲストは佐藤弘道さん、ワタナベフラワー&ゆーゆ。大人4000円、こども(小学生以下)2000円。詳しくは井上あずみオフィシャルサイトhttp://www.doremi-net.com/へ。
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