トルコ系ドイツ人2世の女性監督と妹が、実体験を基に作り出した家族の物語「おじいちゃんの里帰り」(ヤセミン・サムデレリ監督)が公開中だ。国際的な映画賞で数々の賞を受賞し、ドイツで7カ月のロングランヒットを記録している。トルコからドイツに移住した男性の半生を、ユーモラスに振り返る。
あなたにオススメ
来春朝ドラ「あんぱん」の“二人の妹” 朝ドラヒロインまで手が届くか
1960年代半ば、トルコからドイツに移り住んだイルマズ家の主フセイン(ベダット・エリンチンさん)も、今や70代のおじいちゃん。3世代の大家族となった。2人の息子は大人になっても相変わらず仲が悪い。6歳の孫は、ドイツ対トルコのサッカーの試合で友だちと大げんかしたり、大学生の孫娘は英国人の恋人との間に子どもができてしまったり、おじいちゃんの知らないところでそれぞれが悩みを抱えていた。そんなある日、フセインは「故郷の村に家を買ったので家族で行ってみよう」と提案する。気乗りのしない家族だったが、おんぼろバスで出発することに。故郷まで3000キロの旅路が始まった……という展開。
この家族の物語は「移民」をテーマに描かれている。空港からオンボロバスで里帰りする旅路の時間を使って、おじいちゃんが孫に優しく語りかける方法で半生がつづられていく。ドイツ政府に労働者として招かれて、言葉も分からずやって来たフセインの一家。文化も宗教も違う苦労の日々を、軽やかな笑いに包んで描写した。トルコ系移民の2世である姉妹が実体験をもとに着想しているので、体験した人にしか分からない細かいエピソードが出てくる。母親は買い物一つに、身ぶり手ぶりで四苦八苦。子どもたちは、十字架にはりつけのキリスト像に絶叫したかと思えば、クリスマスのイベントに引きつけられて、早速ドイツになじんでしまった。異国で頑張った昔のフセイン、そして孫との時間を過ごす現在のフセイン。たくましく生きる大黒柱を中心に、一家の中で変わるものと変わらないものがある中、受け継がれていく各世代の姿も描かれ、国を超えた感動が伝わってきた。11月30日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
12月23日に発表された20~22日の映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)によると、人間の細胞を擬人化したキャラクターが登場する清水茜さんの人気マンガを実写化した「はたらく細…
歌手の氷川きよしさんが開催したデビュー25周年コンサートツアーの劇場版「氷川きよし/KIYOSHI HIKAWA+KIINA.25th Anniversary Concert T…
中島健人さんがMCを務める映画情報番組「中島健人 映画の旅人」(WOWOW)の第6回が、1月12日午前0時からWOWOWプライムで放送される。それに先駆け、1月1日午前0時からW…
ディズニー・アニメーション・スタジオの最新作「モアナと伝説の海2」(デイブ・デリック・ジュニア監督ほか)の大ヒット御礼舞台あいさつが12月23日、東京都内で開かれた。イベントでは…
東宝の2025年の配給作品ラインアップ発表会が12月23日、TOHOシネマズ 日比谷(東京都千代田区)で行われ、2024年の興業収入などが発表された。市川南取締役専務執行役員は、…