ラノベ質問状:「竜殺しの過ごす日々」 よくある“チートもの”ではない!

赤雪トナさん作、碧風羽さんイラストの「竜殺しの過ごす日々」(ヒーロー文庫)11巻
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赤雪トナさん作、碧風羽さんイラストの「竜殺しの過ごす日々」(ヒーロー文庫)11巻

 話題のライトノベルの魅力を担当編集者が語る「ラノベ質問状」。今回は「竜殺しの過ごす日々」(赤雪トナさん作、碧風羽さんイラスト)です。主婦の友社・ヒーロー文庫の高原秀樹さんに作品の魅力を聞きました。

ウナギノボリ

 −−この作品の魅力は?

 「竜殺し~」のタイトル通り、突然、異世界に転移した高校生・幸助が偶然から最強と恐れられた竜を殺し、異世界史上3人目の“竜殺し”となるところから物語が始まります。幸助は偶然とはいえ竜を殺したことでそのパワーを吸収し、異世界における最高クラスのステータスを得て、飛行、治癒、転移など、高度な魔法を使えるようになります。……というと、よくある“チートもの(主人公の能力が極端に高い作品)”を想像されるかもしれません。実際にチート能力を前面に押し出してバトルしまくるラノベも多いですし。

 この作品の最大の特徴は、主人公がその能力を“隠している”ことです。何せ、突然、異世界に転移し、偶然、能力を有してしまったことから、無用な騒動を避けることを幸助は望んだのです。私だったら、喜んで使いまくりそうですが(笑い)、幸助はまだ高校生なのに見上げたものです。

 なので、彼は最初は雑事ばかりやっているので、周りからは下に扱われます。ただ、その雑事も能力が高い故に軽々とこなしてしまいます。何かやるたびに能力が高まる力もあるため、称号がどんどん増えていきます。しかし、“竜殺し”であることを隠したい幸助は“竜殺しの○○”など関連した称号を手にしたくありません。その謙虚さもあって、幸助には異世界での仲間が増えていきます。物語が進むにつれ、その大切な人たちを守りたいという思いから、能力を駆使する場面も現れ、葛藤する様も見どころです。

 −−作品が生まれたきっかけは?

 ウェブ小説として既に人気があったことから、その書籍化をお願いしたというのがきっかけです。ヒーロー文庫自体も一昨年9月末からのスタートなのですが、「竜殺しの過ごす日々」と「理想のヒモ生活」が最初の作品になります。

 弊社はライトノベルを出すのも初めてですし、オファーしたときはレーベルのホームページもできていないので、怪しまれたのではないかと思います(笑い)。オファーのために赤雪トナさんに九州でお会いしたときに「自費出版詐欺とか疑いませんでしたか?」と伺ったら、苦笑されてました。

 −−作家さんとイラストレーターさんはどんな方でしょうか?

 著者の赤雪トナさんはとにかく書くのが早いです。直しをお願いしても翌日にはあがってくるので何度も驚かされました。一昨年9月に1巻を出させていただいてから、今年1月で11巻というハイスペースで刊行できたのもトナさんの筆の早さのおかげです。ちなみにメールのやり取りもまるでチャットのように即レスです。回答はほとんど「確認しました」「わかりました」と一言なんですが(笑い)。

 イラストの碧風羽さんは指南書やマンガも出されているくらい技術力が素晴らしい方です。ラノベのイラストレーターの方には珍しく、学生時代から大学で専門に勉強されていたというだけあります。以前、担当していたケータイ小説で何度かオファーさせていただいていたのですが、多忙でなかなか難しく……。「竜殺しの過ごす日々」で念願かなってお願いすることができました。売れっ子故、いつもスケジュールで無理をしていただいたことには感謝申しあげます。

 −−編集者として、この作品にかかわって興奮すること、逆に大変なことについてそれぞれ教えてください。

 ヒーロー文庫立ち上げ時の作品ということもあり、最初は至らないことばかりでした。担当も一人ですし、ラノベのいろはも分からず、ご迷惑をおかけしたことしか思い浮かびません。

 「竜殺しの過ごす日々」はヒロインを設定していない作品なので、毎号、表紙を誰にするかを考えるのが楽しかったです。以前、雑誌を担当していたんですが、表紙のモデルやタレントを選ぶ感覚に似ていると言ったら言い過ぎでしょうか(笑い)。

 −−今後の展開は?

 1月31日発売の11巻で完結となります。最終巻は日本から戻った幸助の“お礼参り”を軸に物語が展開していきます。碧さんに無理を言って、イラストを多く描いていただいたり、これまで入れていなかったあとがきを入れたりして、ファンの皆さんにはより楽しんでいただける内容になっています。

 そして、表紙の女の子は誰なんだ? というところが最終巻の最大のポイントだと思います。

 −−最後に読者へ一言お願いします。

 今までご愛読いただいた皆さま、ありがとうございました。どのような結末になるか、最後までお楽しみください。今後、別の形でも楽しんでいただけるようにしていきたいと考えています。

 また、この記事をきっかけに興味を持ってくださった方、1巻から発売しておりますので(笑い)、ぜひお読みいただければ幸いです。

 主婦の友社 ヒーロー文庫 高原秀樹

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