「ザ・ファイター」(2011年)や「世界にひとつのプレイブック」(12年)のデヴィッド・O・ラッセル監督の最新作「アメリカン・ハッスル」は、1979年に米で起きた汚職スキャンダル「アブスキャム事件」を基に、米連邦捜査局(FBI)捜査官がなんと詐欺師とタッグを組んでおとり捜査作戦を遂行するハラハラドキドキのエンターテインメント作だ。オスカー常連の俳優たちが、ちょっとダサい70年代ファッションに身を包み、ノリノリで演じている。
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1979年。ニューヨークのプラザ・ホテル。アーヴィン(クリスチャン・ベールさん)と愛人シドニー(エイミー・アダムスさん)は、FBI捜査官のリッチー(ブラッドリー・クーパーさん)の担当している事件に協力中だった。おとり捜査でカーマイン市長(ジェレミー・レナーさん)をハメるところだ。もともとアーヴィンは裏で盗品や贋作(がんさく)を売るチンケな詐欺師だった。妻ロザリン(ジェニファー・ローレンスさん)とはケンカばかりだったが、彼女の子どもを養子にして可愛がっていた。パーティーで知り合って恋に落ちた相手シドニーを誘って、銀行からの融資をエサに手数料をだましとる詐欺を行っていたある日、引っかけた男にシドニーが逮捕されてしまう。男はFBI捜査官リッチーだった。リッチーはシドニーの釈放と引き換えに、アーヴィンにおとり捜査への協力を持ちかける。それがやがて大物政治家の汚職を暴くという大きな事件に広がっていき……という展開。
一九分けの髪に、ポテポテのおなか。これがベールさんなのか?と思うほどの変わりようだ。そのほか、カーリーヘアのクーパーさん、紳士靴をさかさまにかぶったような髪形のレナーさん、胸元が大胆に開いたドレスのアダムスさん、やつれきった主婦役のローレンスさん……。ビジュアルの変わりようが強烈な個性を生み出している。タイトルの「ハッスル」という言葉も微妙にダサくて笑える。実話を元にした詐欺作戦を軸に、男女関係のもつれを描いているが、語り口には70年代の暑苦しさはなくカラッとしている。ラッセル監督は男女のこまやかな機微を、キャラクターたちの中に描きこんだ。どの人にも大人の弱さが見え隠れする。おとり捜査は上層部からの圧力で手柄を上げるためだし、その大きなヤマにアーヴィンはド緊張。プライベートでは妻にタジタジだ。この妻を演じるローレンスさんの演技が秀逸。情緒不安定でやり場のない気持ちを抱える主婦になりきっていてリアルだ。映画は31日からTOHOシネマズみゆき座(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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