LIFE!:ベン・スティラーさんに聞く 演じて楽しかったのは「ラテン系の登山家」

最新作「LIFE!」について語るベン・スティラーさん
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最新作「LIFE!」について語るベン・スティラーさん

 映画「ナイトミュージアム」(2006年)や「ミート・ザ・ペアレンツ」(00年)などの作品で知られる俳優のベン・スティラーさんが自らメガホンをとった主演映画「LIFE!」が全国で公開中だ。今作のPRのためにスティラーさんが公開直前に来日。ジャパンプレミアに続き、インタビューに応じた。

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 スティラーさんが演じるのは、雑誌「LIFE」の写真管理部で働くウォルター・ミティという男。彼は、建物の地階にある部屋で毎日コツコツ働いていたが、その努力をたたえてくれる人はほとんどいない。もともと不器用で臆病な彼は、得意の空想癖に逃げ込むことで単調な日々をやり過ごしていた。ところが、本誌最終号の表紙を飾る写真のネガがないことに気付き一念発起。それを撮影したカメラマンを捜す旅に出る……というストーリー。

 スティラーさんが監督を務めるのは、前回来日した「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」(08年)以来約5年ぶり。監督と主演の両方をこなすことに、「ほかの俳優に時間を割くことを優先し、ついつい自分のシーンをおざなりにしてしまいがち」というが、今回ばかりは自分が主役。「自分のシーンはとても大切だと考え、自分にいろんな演技をやらせて、編集段階でさまざまなテークから選べるようにした」と話す。

 映画の中でウォルターは、さまざまな空想の世界に浸る。犬を救うために爆発寸前のビルに飛び込んだり、サメと格闘したり、ある映画の主人公になり切ったりもする。そうした空想の中の人物を演じながら、“主演ベン・スティラー”として楽しかったものとして、「ラテン系のクライマー(登山家)」を挙げる。「背が高いし、アゴもカッコいい形だし、プレーボーイ風だったからね」と笑う。一方、“ベン・スティラー監督”として印象に残るシーンを聞くと、返ってきたのは「なんといってもショーン・ペンが出てくるシーン」との答えだった。

 ペンさんが演じているのは、ウォルターが旅に出るきっかけを与えたカメラマンのショーン・オコンネル。ペンさんとともに、実際に山に登って撮影したというその場面について「あのシーンは、シンプルだけどこの作品の真髄といえる場面。限られた時間だったから1日で登って下りてこなければいけなかったけれど、僕にとっては誇りに思うシーンだね」と満足げに語る。

 さらにペンさんについて「彼自身、監督としてかなり冒険的な映画を撮っている。今回は俳優として山に登り、素晴らしい演技をしてくれたけど、撮影が終わって、僕が気付くと、自分から機材を持って下り始めていたんだ。キャストやスタッフと一緒になって働いてくれて、それを見て僕も、何か持たなきゃと思ったよ(笑い)」と、監督として、人間としてのペンさんの素晴らしさをたたえる。

 ところで、空想の中でさまざまな人間に姿を変えるウォルター。では、スティラーさん自身がなりたいもの、あるいはやりたいことはどのようなことなのだろう。それについてスティラーさんは「よりよい人間になることかな。僕は、常に自分を向上させたいと思っている。願わくは、10年前の自分よりも今の自分が少しはよい人間になっていればと思っているし、10年後の自分が今よりさらによい人間になっていればと願っている」と話した。そして自身の2人の子供についても触れ、「彼らと一緒に旅行し、いろんな国のいろんなものを見せてあげたい。日本に連れて来て、日本の文化にも触れさせてあげたい」と父親の顔ものぞかせていた。

 そのスティラーさんが、この作品の素晴らしいところは「脚本家のスティーブン・コンラッドの功績に負うところ大だ」としつつ、「なんの変哲もない人間を、とてもうまく描いているところ」だと指摘する。「毎日コツコツ働いている人というのは、周囲からあまり注目されず、栄誉に浴することもない。でも、そういう人たちには威厳が感じられるものだ。そうした人に僕らは共感しやすい。それに、たとえ注目を浴びている人でも、その人が持っているものすべてが注目されているわけではない。注目されない部分だってある。さらにもっというなら、100人が100人、その人の素晴らしさに気付かなくてもいい。たった一人の人間、この映画では、ショーンがその人に当たるけれども、彼のような人がそれに気付いてくれれば、それで十分なんだ。その部分も、この映画が観客の心を打つところだと、僕は思っているんだ」と胸を張った。映画は全国で公開中。

 <プロフィル>

 1965年、米ニューヨーク州出身。10代のころから8ミリ映画を撮り始め、UCLA退学後、舞台俳優としてデビュー。「サタデー・ナイト・ライブ」や「ザ・ベン・スティラー・ショー」などの番組に出演しながら、映画では「太陽の帝国」(87年)、「想い出のジュエル」(89年)などに出演。94年、「リアリティ・バイツ」で劇場映画監督デビューを果す。他の監督作として「ケーブル・ガイ」(96年)、「ズーランダー」(2001年)、「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」(08年)がある。出演作に「メリーに首ったけ」(98年)、「ミート・ザ・ペアレンツ」「僕たちのアナ・バナナ」(いずれも00年)、「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」(01年)、「ドッジボール」(04年)、「ナイトミュージアム」シリーズ(06年、09年)、「ペントハウス」(11年)など。現在、「ナイトミュージアム3」を撮影中。待機中の新作に「While We’re Young」がある。

 (取材・文・写真/りんたいこ)

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