「告白」(2010年)や「北のカナリアたち」(12年)など映画化される作品も多い人気作家の湊かなえさんの同名のサスペンス小説を、井上真央さん主演で映画化した「白ゆき姫殺人事件」が公開中だ。「ゴールデンスランバー」(10年)などの中村義洋監督が手掛けた。美人の女性会社員殺人事件を題材に、疑惑を向けられた同僚女性の人物像を、同級生の記憶やワイドショーの報道、SNSなどのメディアを通して語らせ、人間の闇を浮かび上がらせる。出演は綾野剛さん、菜々緒さん、蓮佛美沙子さん、貫地谷しほりさん、金子ノブアキさんら。
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しぐれ谷国定公園で、美人の女性会社員の死体が発見された。被害者・三木典子(菜々緒さん)は日の出化粧品の社員だった。典子と同期入社で地味な女性・城野美姫(井上さん)に疑惑の目が向けられる。テレビのディレクター赤星雄治(綾野さん)は、日の出化粧品で働く知人の狩野里沙子(蓮佛さん)から被害者の情報をもらい、ツイッター上で事件について安易につぶやいていく。するとネット上でさまざまなうわさが流れ出す。ワイドショーは過熱し、赤星は美姫の同僚や同級生、故郷にいる家族らに取材を進めていくうちに「美姫には呪いの力がある」「城野は黒魔女」と語る者がいる中、美姫の故郷の親友・夕子(貫地谷さん)と出会い……という展開。
人は外見やうわさなどの上辺に翻弄(ほんろう)されてしまう……。原作の現代的なテーマを得て、中村監督は的確に芸達者なキャストを配置した。被害者の美人会社員を演じる菜々緒さんはスクリーン上で息をのむほど美しく描かれ、井上さんは実際の可愛らしい素顔を隠し、伏し目がちな地味な同僚をオドオドと演じ、「どんな人物なのだろう?」と興味を抱かせる。見た目から、それぞれの証言者に都合のいいように独り歩きしていく美姫のうわさは、やがて恐ろしい虚像を作り上げていく。すぐにSNSでつぶやいてしまう赤星という底の浅い人物を、綾野さんが軽さとあやうさの両方を持ち合わせた演技で見せていく。多くの若手実力派俳優たちが登場し、自分の言動に責任がなく無自覚で、そして悪びれない人物をサラリと演じてみせ、美姫が陥った現象は誰の身にも降りかかることなのだという現代特有の怖さを実感させる。それに対して、美姫の故郷の親友・夕子の場面では映画はガラリと色を変え、子ども時代の友情をファンタジーも交えた作りで仕上げ、見る者を飽きさせない。この世で自分を知っている人は、たった一人でもいればいい。人と本当につながることとは何か、振り返る機会を与えてくれる映画だ。3月29日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)全国で公開中。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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