5人の殺人強盗集団の男たちの中で育った少年の過酷な運命を描く韓国のサスペンスアクション「ファイ 悪魔に育てられた少年」が公開中だ。主人公を演じるのは、ドラマ「太陽を抱く月」など多くの作品で子役として活躍してきたヨ・ジングさん。ベテラン俳優を相手に体当たりで主役を演じ、青龍映画賞新人男優賞を受賞。殺人強盗集団のリーダーを、「チェイサー」のキム・ユンソクさんが演じ、今回も圧倒的な存在感を見せる。「地球を守れ!」のチャン・ジュナン監督が手がけた。
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ファイ(ヨさん)は17歳だが、学校には通っておらず、父親代わりの5人、殺人強盗集団の冷酷なリーダーのソクテ(キムさん)、心優しい運転手ギテ(チョ・ジヌンさん)、犯行計画を担うジンソン(チャン・ヒョンソンさん)、暗殺スナイパーのボムス(パク・ヘジュンさん)、凶暴なドンボム(キム・ソンギュンさん)から犯罪のスキルを教え込まれて育った。「白昼鬼」と呼ばれる犯罪集団は、ファイの過去と関係していた。ある日、大手不動産企業と癒着している悪徳刑事から仕事が舞い込む。大規模再開発地域で1軒だけ立ち退かないイム・ヒョンテク夫妻を始末してほしいということだった。ソクテはファイにイム家の鍵を破らせ、銃を握らせる……という展開。
犯罪者に育てられた少年が、どう変化してどんな人生を選択をしていくのか。手に汗握るドラマだ。父と息子の対峙(たいじ)という古典的なテーマだが、父性とは何かがよく表現されている。子の成長を優しく見守る母性に対して、自分と同じようになってほしいと息子に願う父性。そんな5人もの“父”からの期待を背負ったファイが、「汚い大人たちめ!」と怒りを爆発させるシーンは圧巻だ。「ベルリンファイル」を担当した世界的アクション監督チョン・ドゥホンさんが激しい死闘シーンを作り上げ、息をのむ見せ場を作り上げた。残酷な運命に身を置き葛藤するファイを、撮影当時15歳だった若手注目株のヨさんが純粋で悲しみを宿した切れ長の印象的な目で驚きの存在感を残している。同時に、犯罪者集団リーダーのソクテのまなざしも印象に残る。愛のない人生を歩んできたこの男が、ファイに愛を見いだしていたことが分かる後半のソクテの目はあまりにも悲しい……。シネマート新宿(東京都新宿区)、シネマート六本木(東京都港区)ほか全国で公開中。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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