注目映画紹介:「マドモアゼルC ファッションに愛されたミューズ」ヴォーグ元編集長ドキュメント

(C)2013 BLACK DYNAMITE FILMS, TARKOVSPOP
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 世界のファッション界のリーダーでフランス版「VOGUE(ヴォーグ)」の元編集長、カリーヌ・ロワトフェルドさんの新雑誌創刊に密着したドキュメンタリー映画「マドモアゼルC ファッションに愛されたミューズ」が公開中だ。トム・フォードさんやカール・ラガーフェルドさんといった世界的デザイナーたちとの華麗なる交友や、娘や息子たちの証言を交えて、59歳で一線で活躍し続ける姿を追っている。

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 ロワトフェルドさんは2001年からおよそ10年間務めた仏版ヴォーグの編集長を退任し、2011年、ニューヨークで新雑誌を創刊した。モデルから18歳で業界に入り、グッチやイブ・サンローランのスタイリングを担当。“ポルノ・シック”と呼ばれるスキャンダラスなスタイリングで伝説を作り、以来、大勢のアーティストからミューズとしてあがめられている。書籍と雑誌の中間路線を行く新雑誌「CR Fashion Book」の編集のため、ニューヨークとパリを行き来し、撮影やミーティングを行うロワトフェルドさん。プライベートでは娘にもうじき子どもが生まれる時期で孫の誕生をまたいで新雑誌も生み出されようとしていた……という展開。

 編集長だが、現場が大好き。周囲と溶け込みながら意見を述べたり、立ち話で仕事相手を口説いたりする姿には、上からの目線ではない優れたリーダー像が見えてくる。そして、妥協なき美への追求を一つ一つの仕事に込めている姿が映像から見て取れる。慌ただしく立ち回り、パーティーやショーの華やかな中にいながら、ロワトフェルドさんはどこかクールだ。元雇い主に圧力をかけられ、カメラマンが去るというトラブルに見舞われても、「新しい人を発掘できてよかったわ」と考える。映画は、ファッション雑誌の現場に密着しており、耽美的な撮影現場はおとぎ話の1ページのようだし、「ファッションは夢だったのに、産業になってしまった」と嘆くロワトフェルドさんの新たな挑戦のようにも見える。長年密着したというファビアン・コンスタン監督により、生き生きと仕事を楽しんでいる姿が映し出されているが、過去を紹介する映像やインタビュー映像が少なく、少々サラリとした印象。雑誌に自らのイニシャルをつけ、孫誕生にちなんで表紙に赤ちゃんを使う。ロワトフェルドさんは、拡大化した自我の中で仕事を成功させる稀有(けう)な人だった。TOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほかで公開中。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。

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