アンジェリーナ・ジョリー:「マレフィセント」 役作りは「子供たちがアドバイスしてくれた」

最新主演作「マレフィセント」について語ったアンジェリーナ・ジョリーさん 撮影:Hiroyuki Tsutsumi
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最新主演作「マレフィセント」について語ったアンジェリーナ・ジョリーさん 撮影:Hiroyuki Tsutsumi

 ディズニー・アニメーションの不朽の名作「眠れる森の美女」(1959年)を、悪役マレフィセントの視点で描いた映画「マレフィセント」(ロバート・ストロンバーグ監督)が、5日から全国で公開された。主人公の邪悪な妖精マレフィセントを演じるのは、ハリウッドを代表する女優アンジェリーナ・ジョリーさん。会見では女優引退を否定し、ひとまずファンを安心させたジョリーさんに、映画について話を聞いた。

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 一般的に女の子の場合、マレフィセントよりも呪いをかけられ“永遠の眠り”についてしまうオーロラ姫に憧れそうなものだが、ジョリーさんは違った。「子供のころ、マレフィセントに憧れていました。あのころのお姫様というのは一様に同じ描き方で、強さというものをあまり持っていなかったから……」と、その理由を明かす。そして、「ただそれは、お姫様全般にいえることではなく、ディズニーが描くお姫様に関してのこと。日本文学にも、昔のお姫様にはすごく強い女性がいたことは知っています」と教養の深さをのぞかせる。

 ジョリーさんは今作が、いじめを受けたり、疎外感を味わっている子供たちに対しては「どうすれば強くなれるか」、また虐待や不正な行為を受けた女性に対しては「(被害に遭ったことで)攻撃的になったり、暗闇に入り込んでしまうこともあると思う。そうした場合、どうしたらソフトな(優しい)感情を取り戻せるか」を示唆していると話す。さらに、「環境問題や正義感というものにも触れている」といい、多くのメッセージが込められていることをアピールする。

 ジョリーさんが、間もなく6歳になる(2008年7月12日生まれ)愛娘のヴィヴィアンちゃんと初共演したことも話題だ。共演シーンでは、ヴィヴィアンちゃん演じる幼いオーロラ姫がマレフィセントに駆け寄り「抱っこ、抱っこ」とせがむのだが、そのときのマレフィセントの戸惑ったような表情は笑いを誘う。「あれほど恐ろしい彼女が一番怖がるのが、あんなに小さい子供だということがおかしみを生むのでしょうね」とジョリーさんはほほ笑むが、その場面の撮影では、02年に養子縁組をしたカンボジア人のマドックス君を思い浮かべながら演じたそうだ。「マドックスが初めて私のところに向かってきたときのことを思い出していました。子供というものは無条件の愛を与えてくれるものですが、当時の私はそういうものが自分に与えてもらえるとは一切思っていなかったし、彼が私のところに来ても、どうすればいいか分からなかった。たぶんマレフィセントも同じ気持ちだったと思います」と当時の心境を明かす。

 マレフィセントの役作りについては、オリジナルのアニメーションが多くの人々に愛されているだけに「ファンをがっかりさせないよう注意を払った」という。と同時に、「私はマレフィセントが大好きだったし、キャラクターとしてとても興味深い存在でした。肉体的にも声にも存在感がありました。ですから、私が正しい選択をしないと、あのキャラクターは奇妙なものになってしまうという怖さがありました」と打ち明ける。

 そんなジョリーさんを大いに助けてくれたのは、やはり子供たちだ。「私は今、(伝えることが)とても重要だと思うものと、クリエーティブな面で挑戦的なもの、その二つで作品選びをしています。両者の“真ん中”はありません。今回は、本当に子供たちのために、自分の面白い部分を出したり、ちょっと色っぽい要素を出したりしました。子供たちは毎日現場にいて、いろいろアドバイスをくれました。マレフィセントの声を決めたのも彼らだし、瞳の色も決めてもらったし、衣装の承認も彼らから得たし(笑い)。彼らに、どれがカッコよくて、どれがつまらないかを聞いて、反応がいいものを取り上げるようにしていきました」という。そうやって一緒に作り上げた作品だからこそ、この作品がジョリーさんにとって一層特別なものになったのだろう。

 マレフィセントは悪役ではあるが、根っからの悪人ではない。しかも美しい。その美しさは「彼女が本来持つ力、愛情や、誰かを守りたいという気持ち、すなわち母性から来ている」とジョリーさんは分析する。そして、マレフィセントが一線を越えないよう踏みとどまらせていたものも、また母性だと考えている。ならば、人間は何をもってすれば一線を越えずにいられるのだろう。ジョリーさんは「その答えは、私も知りたいです」と前置きした上で、「ただ言えるのは、人との関わり方に尽きるということ。関わりを持った相手も、かつてはやっぱり子供だったわけで、親もいて、今は誰かの親かもしれない。そういう家族や家庭、あるいはお互いを人間として尊重し合っていければ、紛争やいがみ合いはなくなっていくのではないでしょうか」と語った。そして、「あと、(母性だけでなく)父性も(大事)ね」と言葉をつないだ。映画は5日から全国で公開中。

 <プロフィル>

 1975年生まれ、米カリフォルニア州出身。父ジョン・ボイトさんの主演作「Lookin’ to Get Out」(82年)で映画デビュー。「17歳のカルテ」(99年)で米アカデミー賞助演女優賞を得てその名が知られるようになる。「トゥームレイダー」シリーズ(01年、03年)、「Mr.&Mrs.スミス」(05年)、「マイティ・ハート/愛と絆」(07年)、「チェンジリング」「ウォンテッド」(ともに08年)、「ツーリスト」(10年)などの出演作がある。「最愛の大地」(11年)では製作、監督、脚本を務めた。01年には国連難民高等弁務官事務所の親善大使に就任。人道活動も精力的に行っている。カンボジア、エチオピア、ベトナムから迎えた養子と、ブラッド・ピットさんとの間にもうけた3人の実子の、合わせて6人の子供を育てている。

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