14年夏アニメ:“アニメの甲子園”開幕! 強豪校からダークホースまで

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 今月にスタートした「夏アニメ」の第1話が一通り放送された。週に約100本(再放送含む)のアニメを視聴し、アニメを使った町おこしのアドバイザーなども務める“オタレント”の小新井涼さんが夏アニメを分析する。

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 ◇手に汗握って見守る

 今年の夏アニメは、一言で表すならば、ずばり「夏の甲子園」。強豪校にダークホース、珍プレー好プレーに逆転ホームランなどなど……。そんな夏の風物詩を思わせる数々の魅力的な作品が続々と放送を開始しました。この夏、手に汗握って見守るにふさわしい高校野球のような「アニメ甲子園」の開幕です!

 ◇2期作品は“強豪校”

 今期は特にシリーズの2期以降として放送される作品が10作以上と多めです。1期の人気があっての続編ということで安定の面白さが期待されるのですが、逆に言えば「勝って当たり前」と思われる強豪校と同じく、「1期があれだけ面白かったのだから、今回も面白くて当たり前」と、ハードルも高めに設けられてしまいます。しかしそんな状況にもかかわらず、どの作品も前シリーズを超す驚きと先が気になる展開が満載で、自らの壁を打ち壊すスタートを見せてくれました。

 例えば「ソードアート・オンライン2」では、主人公キリトたちにやっと訪れた穏やかな日常が一転、新たなVRMMO「ガンゲイル・オンライン(GGO)」内で起きた殺人事件、そして黒幕と思われる「死銃(デス・ガン)」という謎のプレーヤーキャラも登場します。1期が大きく話題を呼んだこともあり、期待のハードルは特に高かったであろう本作ですが、キリトたちが立ち向かう新たな謎や新しい世界での冒険への期待に「これは1期と同じ……いやそれ以上に面白そう!」という予感に胸がふくらむ第1話でした。

 そしてこちらも1期では放送前から話題を呼んでいた「Free!−Eternal Summer−」。学年が上がり、それぞれの環境や心境の変化など1期からの時間の経過を感じさせる遥たちのその後を描きつつ、そんな日常に一石を投じるかのように何やら因縁をにおわせる新キャラが登場します。1期で完結してもおかしくないようなクライマックスを迎えた本作でどのように続編が展開されるのか……。そんな疑問を期待に変えて、今後の展開がますます気になる第1話でした。水しぶきや人物の動きの描写の美しさも健在で、画面を見ているだけでも思わずその世界に引き込まれてしまいます。

 ◇「RAIL WARS!」はダークホースの初出場校

 放送前から期待されていた“強豪校”だけではなく、視聴するまではここまで面白いなんて思っていなかった!という、「初出場校の意外な健闘」のような興奮や今後への期待を味わわせてくれる“ダークホース的な作品”も今期はたくさんあります。

 「RAIL WARS!」もその一つで、キービジュアルを見ただけではコアな鉄道ファン向けの割と地味な作品だと思っていました。しかし実際は「図書館戦争」でいうところの「図書隊」のような「鉄道公安隊」が出てきて、鉄道の安全を守るための射撃訓練や迫力のアクションシーンを展開したりしてファンタジー要素もある、かなりアクティブな作品で、その意外性に驚かされます。かと思うと、ちゃんとマニアックな鉄道知識もさりげなく盛り込まれていて、気づくとだんだん鉄オタの深淵へと誘われていきそうな危険な魅力をも感じさせる作品でした。

 そして、これはまさに!放送前の予想を超えたダークホースであった「信長協奏曲」。勉強嫌いな自由人のサブローがタイムスリップをして、織田信長と入れ替わって生きるという歴史ファンタジーです。歴史が苦手なサブローが教科書片手に信長の人生をたどろうと的外れなことをしつつ、転んだ先でちゃんと史実通りの結末を迎えているというミラクルな展開は、少しでも歴史に興味があればロマンを感じずにはいられないでしょう。一方で、学識がほぼ皆無なサブローの緊張感のないツッコミや行動は歴史知識に関係なく笑えるので、歴史物が苦手な方にもオススメできる作品です。

 ◇“珍プレー好プレー”も

 作品を“チーム”に例えると、作品のさまざまなシーンは、“プレー”に例えられるのではないでしょうか。ということで、夏アニメ第1話に見られた“珍プレー好プレー”の中でも印象に残ったものを紹介させていただきます。

 まずはパロディギャグ作品「ガンダムさん」から、番組が始まったとたん、いきなりシャアが仮面以外素っ裸で踊るという珍プレー。ガンダムを見たことがないという視聴者も思わず作品が気になってしまうインパクトですし、知っていれば余計に「これいろんなところから怒られないのかな……」と、いらぬ心配をしてしまいそうなほどぶっ飛んだ衝撃的シーンでした。

 一方“好プレー”として印象に残ったのは「美少女戦士セーラームーンClystal」から、主人公のうさぎ初の変身シーンです。初代アニメでの演出を意識した上で、現代のプリキュアを代表する華やかな3DCG技術を駆使したいわゆる「変身バンク」は、懐かしい人は喜び、初見の人をも魅了するまさしく温故知新の極みともいえる“好プレー”だったのではないでしょうか。

 まだまだ魅力的なシーンや作品もたくさんあるのですが、全部は紹介しきれないので、今回も小新井が個人的に、独断と偏見で選んだ「優勝予想」ならぬ「面白そうな夏アニメベスト3+1本」をピックアップして紹介したいと思います。気になるものや見ていないものがありましたら、ぜひチェックしてみてください。

 第3位「ばらかもん」

 自分の作品を酷評した書道界の重鎮への暴力事件を機に、父親に「頭を冷やしてこい」と五島へ“島流し”された主人公の半田清舟が、島の住民や豊かな自然に触れて都会では知り得なかった新しい何かを見つけていくというハートフルストーリー。美しい島の景色や島民の温かな方言、清舟になつく島の子、琴石なるの天真爛漫(らんまん)さに見ているこちらまで癒やされます。疲れた日常の中でほっと一息をつける休憩所のような作品です。

 第2位「東京喰種」

 人肉を“喰らう”喰種(グール)という生物が、人間に混じって生活する現代の東京を舞台に、とある事件で半喰種となってしまった主人公のカネキが自分の存在に苦悩しながらも数奇な運命と戦っていくダークファンタジーです。迫力のアクションシーンやグロテスクな描写のインパクトもさることながら、社会に紛れて生きるおのおのの喰種たちの思いや半喰種であるカネキの葛藤など、登場人物達のドロリとした心理描写も魅力的です。胃の奥から寒くなってくるスプラッターなシーンは暑い夏の夜に見るのがおすすめ。

 第1位「残響のテロル」

 ある夏の日に起きた新宿の爆破テロをきっかけに、首謀者の少年たち、刑事や原子力科学者といった大人や国家が「追う者」「追われる者」として繰り広げる追走劇です。放送前から、新宿爆破シーンのインパクトで気になっていましたが、実際に第1話を見ると、そんな映像美とそれ以上に、登場人物のバックボーンや事件への関与の仕方など、まだまだ謎の多いストーリーやキャラクターたちに強く引き込まれます。アニメオリジナル作品ということで、これからの放送とともに明かされていくであろう物語の核心部分が気になり、次回が待ち遠しくなる作品です。

 おまけ「プリパラ」

 昨年までのテレビシリーズ「プリティーリズム」の系譜を継ぐ女児向けアニメの新シリーズ。アーケードゲームとの連動もあり、女の子が喜ぶ可愛くてキラキラな要素やゲーム解説などもありつつ、アイキャッチや熱血なストーリーや濃い登場人物などからはどこか懐かしい昭和アニメのコテコテ感も感じられ、一緒に見る大人も楽しめる作品です。前シリーズの“プリズムショー”から受け継がれた3DCGキャラのプリパラでのライブもパワーアップしていて、その迫力と臨場感はライブ会場にいるかのような感動と興奮を与えてくれます。

 このように、第1話の時点で紹介しきれないくらいに今後の展開が気になり、見守っていきたいと思える作品がたくさんありました。プレイボール(放送スタート)のたびに引き込まれ、期待や情熱を持って見守ってしまう夏アニメは、季節感も相まって、まさに“夏の甲子園”のような熱さを感じさせます。今後の試合運びによってはさらなるドラマや逆転劇も待っていることでしょう。そんな今期の夏アニメの数々を、私も試合の観客と同じように一喜一憂しながら応援し、楽しんでいきたいと思います。

 ◇プロフィル

 こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。アニメ好きのオタクなタレント「オタレント」として活動し、ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」やユーストリーム「あにみー」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)のアニメを見て、全番組の感想をブログに掲載する活動を約2年前から継続。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、社会学の観点からアニメについて考察、研究している。

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