テレビ試写室:「おやじの背中」第10話 期待を裏切らない三谷ワールド 笑わせて最後はホロリ

TBS提供
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 ドラマからドキュメンタリー、バラエティー、アニメまで、さまざまなジャンルのテレビ番組について、放送前に確認した記者がレビューをつづる「テレビ試写室」。今回は、14日午後9時半に放送されるオムニバスドラマ「おやじの背中」(TBS系)の第10話「北別府さん、どうぞ」だ。

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 「おやじの背中」は、倉本聰さんや岡田惠和さんら脚本家10人が父と息子・娘という同じテーマで書いた脚本を実写化する各話完結ドラマ。最終回となる第10話は三谷幸喜さんが脚本を担当した。病気の治療で病院に通う“売れない役者”の北別府は、幼い息子に自分の仕事を秘密にしていたが、ひょんなことから病院で息子と出くわしてしまい、見栄(みえ)を張って自分の仕事を医者だとうそをついてしまう。せめて自分の命がある間は「息子に尊敬されていたい」と、別れた妻や主治医、ナースまで巻き込んで「ニセ医者劇場」が始まる……という展開。

 当初、主役の北別府を演じる予定だった俳優の市村正親さんが病気療養のため降板し、急きょ代役を務めることになったのが小林隆さんだったが、三谷作品の常連でもあり、安定の演技力で役柄としっかりなじみ、見栄っ張りの父親を好演している。「HERO」の新シリーズで脚光を浴びた女優の吉田羊さんが妻役、俳優の小日向文世さんが主治医役で脇を固めるほか、酒井若菜さん、木南晴夏さん、元AKB48の秋元才加さんも出演している。

 ドラマは常に突拍子もない展開の三谷ワールドの魅力にあふれている。北別府が必死にうそをつき通そうとすればするほど、その姿は滑稽(こっけい)に見え、思わずクスリと笑ってしまうが、その必死さの根底には、息子への深い愛情を感じ、同時にしんみりともさせられる。クライマックスでは、子どもは濁りのない目で、しっかりと“おやじの背中”を見ていたんだと実感させられ、10話のタイトルに込められた思いも伝わってくる。オムニバスドラマの最終回にふさわしい結末だ。

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