俳優の奥田瑛二さんの長女、安藤桃子さんが自ら書き下ろした長編小説を脚色し、実妹の安藤サクラさん主演で撮った映画「0.5ミリ」が8日から全国で順次公開される。自身が生きるために押しかけヘルパーを始めたサクラさん演じるヒロインが、関わりを持った老人たちに生きる気力を与えていくヒューマン作。上映時間は196分と長尺ながら、それを感じさせない勢いのある作品に仕上がっている。父である奥田さんがエグゼクティブプロデューサーを務め、安藤姉妹の母でエッセイストの安藤和津さんが劇中登場する料理を監修している。
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「冥土の土産におじいちゃんと寝てあげてくれない?」と派遣先の家族から頼まれた介護ヘルパーの山岸サワ(サクラさん)は、その依頼を受けたことで、とんでもない事件に巻き込まれてしまう。仕事も金も住む家も失ったサワは、生きるために押しかけヘルパーを始めることにする……というストーリー。
サワは、めぼしい“標的”を見つけると、その老人の弱みに付け込み家に上がり込む。そう書くと、サワが“極悪人”と勘違いされそうだが、それは違う。彼女は、自分が生きるために年老いた人々の優しさをちょっとだけ拝借し、触れ合いなど“まごころ”できっちりと返していく。介護や老いについて触れながら“生きる”ということに主眼が置かれた今作に暗さはない。むしろ、サワに弱みを握られオロオロするおじいちゃんたちとサワの掛け合いは愉快でほほ笑ましく、何より、サワを演じるサクラさんの演技が光っている。製作の背景には、安藤監督とサクラさん家族の祖母の介護経験があるようだが、そのことが、今作の血となり肉となっていることがスクリーンからうかがえる。サワが草笛光子さん演じる老人を介護する場面では、サクラさんの手際のよい振る舞いに演技を超えたものを感じたし、何度か映る食事の支度の様子も実に手慣れていた。そんなサクラさんが演じるサワの仕事ぶりは鮮やかで、映画を見ながら「サワちゃん、うちにも来てくれないかな」と思ったほどだ。おじいちゃんたちを津川雅彦さん、坂田利夫さん、織本順吉さん、井上竜夫さんが演じるほか、柄本明さん、東出昌大さん、木内みどりさん、角替和枝さん、浅田美代子さんらが出演している。8日から有楽町スバル座(東京都千代田区)ほか全国で順次公開。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(1978年)と「恋におちて」(84年)。
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