新垣結衣さんと大泉洋さんが初共演で夫婦役を演じ、新垣さんが初めて母親役を演じた映画「トワイライト ささらさや」が全国でヒット中だ。劇中で乳飲み子を抱えた新垣さんが演じるサヤが使っている存在感のある籐製の“乳母車”が静かな話題を呼んでいる。今作の舞台となる小さな町“ささら”の不思議で懐かしい雰囲気にもフィットしているこの乳母車を映画に登場させた理由を探った。
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映画「トワイライト ささらさや」は、加納朋子さんのベストセラー小説「ささら さや」を「神様のカルテ」(2011年)などで知られる深川監督が映画化。売れない落語家の夫・ユウタロウ(大泉さん)を事故で突然亡くし、生まれたばかりの乳飲み子を抱えた妻・サヤ(新垣さん)は小さな町”ささら”に引っ越し、心配で成仏できずに他人に乗り移る夫に手助けされながら、母親として成長していく。中村蒼さん、福島リラさん、つるの剛士さん、波乃久里子さん、藤田弓子さん、小松政夫さん、石橋凌さん、富司純子さんといった実力派俳優が脇を固めており、コブクロが歌う主題歌「Twilight」が物語を彩っている。
まだ生後間もない息子ユウスケを連れてささら町に訪れたサヤが引いているのは、大きな籐の乳母車。最近はベビーカーが主流だが郷愁を感じさせる乳母車が目を引く。とにかくサイズが大きく、撮影中、小回りが利かず大変だったと新垣さんも話しているほどで、劇中ではサヤがささら駅の改札が通れずに困って駅員の佐野(中村さん)に助けられたりする場面もある。なぜ、この乳母車を今回の映画で採用したのだろうか。
深川監督は「原作を読んだ時に正直、現代で乳母車はないだろうと思いました(笑い)。乳母車を知らない年代もいると思いますし。ただその違和感を排除することは簡単ですが、映画を見ていて何か気になるものや違和感があるのは、映画の魅力の一つだと僕は思います。それと乳母車は、ベビーカーに比べ、重くて大きくて不便な部分もあるかもしれないけれど、赤ちゃんが“守られている”感じがします。赤ちゃんを大事にする映画という意味合いからも、やはり乳母車だと考えました」とその理由を話している。
サヤはのちに友人となるエリカ(福島さん)と出会った時や再会した時も乳母車を引いているとおり、きっとささらの町でユウスケを外に連れて行くときはいつもあの乳母車で出かけていたに違いないと想像できる。
また、ユウタロウが成仏できないほど頼りないサヤが、母親として大きく成長した理由には、サヤの根底にある“強さ”はもちろん、この乳母車が母親としての成長に力を添えたと思われる理由がある。
乳母車は籐部分の取り外しができ、持ち運んでベッドとしても使える。そして非常に頑丈なためサヤが駅で何度ぶつけても壊れることはなかった。ベビーカーに比べ中身が広いため、荷物もたくさん入れられるし長く使えて経済的でもある。そして何よりもささらの町に住むおじいさん、おばあさんらが子供を育てた時代を思い出すのか、懐かしさから声を掛けてもらったりとコミュニケーションツールになっており、気づけばサヤは自然に地元の人たちと打ち解けていた。
まだまだ頼りなかったサヤが初めて訪れたささら町で、みんなに見守られ、助けられながら母親として成長できたのには、この懐かしくて温かみのある乳母車が、古き良き時代、助け合っていた町の人たちの気持ちを、再び呼び起こしてくれたからかもしれない。
撮影で使用した乳母車は五十畑工業の「スワン S−40」で、現在も販売中。
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