フジテレビ:“月9的”時代劇が話題 信長が青島、久利生に続くフジ王道ヒーローに

小栗旬さん主演の月9ドラマ「信長協奏曲」のポスターカット。(左から)木下藤吉郎役の山田孝之さん、帰蝶役の柴咲コウさん、サブロー役の小栗旬さん、池田恒興役の向井理さん=フジテレビ提供
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小栗旬さん主演の月9ドラマ「信長協奏曲」のポスターカット。(左から)木下藤吉郎役の山田孝之さん、帰蝶役の柴咲コウさん、サブロー役の小栗旬さん、池田恒興役の向井理さん=フジテレビ提供

 小栗旬さんが演じる高校生のサブローが戦国時代にタイムスリップし、織田信長となって戦国の世を生き抜いていく“月9”初の時代劇「信長協奏曲(コンツェルト)」(フジテレビ系、毎週月曜午後9時)が、「内容も月9的」と話題を呼んでいる。サブローはひょうひょうとして肩に力が入っておらず、天下統一という大偉業を達成しようとする気概は薄く、どことなく“軽い”感じだ。企画を手がけたフジテレビの臼井裕詞・映画事業局映画制作部長は、小栗さん演じるサブローを、織田裕二さんが「踊る大捜査線」(踊る)で演じた青島俊作、「SMAP」の木村拓哉さんが「HERO」で演じた久利生公平に続く「フジテレビのヒーロー像の系譜」という。「フジテレビが月9でお届けする時代劇とはこういうものだと提示できている」と自信を見せる臼井部長に、その共通点や同作に懸ける思いを聞いた。

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 ◇目の前の正義を貫くヒーロー像

 ドラマは、マンガ誌「ゲッサン」(小学館)で連載中の石井あゆみさんのマンガが原作。天下統一を目指す信長の史実を下敷きに、戦国時代にタイムスリップしてしまったサブローが、自分と瓜二つの信長と出会い、信長として生きていくことを決心する……というストーリーで、小栗さんがサブローと信長の2役を演じている。

 物語には、斎藤道三、今川義元、足利義昭など、おなじみの人物が登場するが、勉強嫌いのサブローは彼らを知らない。現代的な感覚で、戦を避け、話し合いや知恵でさまざまな問題を解決しようと試みる。「桶狭間の戦い」は、信長となったサブローが、今川の支配によって理不尽な扱いを受ける村人たちを助けたことがきっかけで成功したと描かれるなど、原作マンガから更に大胆な味付けが加えられている。

 臼井部長は「サブローが目の前にいる部下たちや、その家族、友達を大切にし、心配をしているうちに天下を取ることになっていく。そこに痛快さがある」といい、「踊る」の青島、「HERO」の久利生と共に「ひょうひょうとして本音で生きている、肩に力が入っていないヒーローが、目の前のちっぽけな正義を貫こうとして、大きく世の中を変えていくというフジテレビのヒーロー像の系譜」と説明した。

 ◇月9初の時代劇、ドラマ&映画というチャレンジ

 1980年代後半以降、人気ドラマの代名詞となった「月9」で時代劇を放送するのは今回が初めてで、「フジテレビ開局55周年記念プロジェクト」としてドラマ化と同時に映画化、アニメ化(同局では9月に放送終了)が発表された。2005年の「大奥~華の乱~」以降、連続時代劇から離れていた同局がビッグプロジェクトに時代劇を選んだのは「刑事モノ、医療モノに硬直化するドラマに新しい風を吹かせたい」「時代劇というフジテレビらしくない企画に挑む」というチャレンジ精神だ。

 そして「ティーンやキッズに楽しんでもらいたい。時代劇の経験のないスタッフが作る時代劇がいい」という考えで、プロデューサー3人とディレクター2人のうち、月9経験者は4人で、時代劇経験があるのは2人のみ。「これまでの時代劇と同じ土俵で勝負するというより、いかに斬新な歴史観を持ち込んでエンターテインメントとして楽しんでもらえるか」を重視し、「ドラマは荒唐無稽(こうとうむけい)でいい。そのなかに人を感動させたり、笑わせたいというところがなければならない」という「踊る」や「HERO」などと共通する視点が貫かれている。

 また今回は、過去に成功した高視聴率ドラマを映画化する手法ではなく、ドラマと映画の制作が同時に決まってからのスタートだ。オープンセットや美術を共通で使うことができ、「標準的な作品の1.5~1.8倍の連続ドラマでの予算を(映画で)回収できる」というメリットがある。一方、ドラマの視聴率が低迷すれば、映画にも影響を与えかねないというリスクはあるが、「仮にドラマの視聴者1000万人の2割が見てくれれば20億を超えるヒット。映画として魅力あるビジネスが展開していける」と期待している。

 ◇本能寺の変は…

 実写化にあたり、原作者側は、オリジナルの設定やエピソードを加えることに理解があるといい、一部のエピソードについては「原作と内容がかぶらないようにしてほしい」という要望を受けるほどという。その声に後押しされ、「我々なりのサブローの行く末を作ろう」という気持ちで制作に臨んでいる。それは信長の最大の“見せ場”となる「本能寺の変」も例外ではない。

 「ドラマで本能寺をやった後、映画があるかもしれないし、ドラマであるところまでやって映画で本能寺かもしれない。またはドラマと映画で本能寺をやるかも」と期待を持たせる。今後、「比叡山焼き討ち」などのシリアスなエピソードが待ち受けるが、「サブローは純粋に仲良く世の中を変えたいと思っている。池田恒興(向井理さん)、柴田勝家(高嶋政宏さん)たちがサブローの天真らんまんさにひかれて、サブローの後に続いていくという青春グラフィティーというテイストは失いません」と話している。

 “月9的”時代劇「信長協奏曲」が、今後、どこまで飛躍するかに注目だ。

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