WOWOWは毎週土曜午後1時に「WOWOWオリジナルドキュメンタリー」枠として、「ノンフィクションW」と「国際共同制作プロジェクト」の2番組を両輪に、国内外のさまざまなテーマを扱ったオリジナルのドキュメンタリー番組を放送している。12月27日に放送される「国際共同制作プロジェクト 1984~不朽のSF小説から生まれる過去・現在・未来」を共同プロデュースしたWOWOWの制作部の内野敦史チーフプロデューサーに、番組の魅力を聞いた。
ウナギノボリ
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−−番組の概要と魅力は?
ジョージ・オーウェルが書いた「1984年」。執筆された1948年以降、映画や舞台、音楽などあらゆるエンターテインメントの形で表現され続けるディストピア小説の金字塔です。小説の舞台となって描かれた1984年から今年で30年、現実社会はいったいどうなっているのか? 番組は坂本龍一や押井守、英「ガーディアン」紙からの世界的スクープ報道で知られる記者らによる証言を織り交ぜつつ、オーウェルの世界を忠実に描いた映画「1984」で知られるマイケル・ラドフォード監督(「イル・ポスティーノ」)が、オーウェルが描き切れなかったITを中心とした“見えない監視社会の今”をクリエーター目線で斬ります。また近年、世界を震撼(しんかん)させたITメディアの重要人物に、ラドフォード自ら肉薄します。さらには、英「ガーディアン」紙で20年以上活躍する風刺マンガ家らによる独自未来予測などから、エンターテインメントを表現するクリエーターを通してこそ見えてくる“表現の自由”とは何か、そして“未来社会の姿”を追います。
−−今回のテーマを取り上げたきっかけと理由は?
WOWOWは現在、世界のメディアやクリエーターと番組に取り組む「国際共同制作プロジェクト」に力を入れています。「1984」はWOWOW発信のオリジナル企画として私が提案したものです。この企画は昨年夏に「来年はどんな番組をやるか?」考えていた際にひらめいたものです。2014年という数字をずっと見ながら考えていたら、「そうだ!オーウェルの小説の世界からちょうど30年だ、そこを入り口にしよう!」と。
もともとこの小説は私の愛読書で、高校の頃の担任教師が“あまりに”成績が悪く音楽ばかり聴いていた私に「これならお前も興味を持つだろう」と手渡されたのがこの小説との出合いでした。以来、小説「1984年」の世界にハマってしまった、というわけです。実際に企画を進めていくと、オーウェルが描いた絶対的監視社会が、2014年の今ではIT社会の急速な発展により、むしろ皆さんが日常何気なく利用しているモバイルやパソコンの背後に潜む“見えない監視の恐怖”がこの企画で描けることに気がついたのです。
−−制作中、一番に心掛けたことは?
本を読んでいない方にどう伝えるか、監視テクノロジーの進化の実態をどう伝えるか、大きくこの2点が一番の悩みどころでした。前者の課題点については、番組前半にこの小説から大きな影響を受けたと伝えられている世界中のアーティストやクリエーターを紹介し、さまざまな表現形態を通してオーウェルのDNAが時空を超えて地球の隅々までつながっていることを描く。そのことで“オーウェルの世界観”を視聴者の皆さんに楽しんでいただけるような演出を心掛けました。次に後者の課題点については番組のテーマが技術発展の検証自体に重心をおいてはいないため、“芯を食った”インタビュー内容は生かしつつも、マニアックな方向にはいかないよう心掛けました。
−−番組を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったエピソードは?
一番大変だったことはこのプロジェクトのミッションである“海外のスタッフと共同で”制作作業する、という点につきます。WOWOWチームは報道制作の経験豊富な日本電波ニュース社さんと組むことで取材や構成内容を固め、編集やCG制作をオーストラリアの制作会社にお願いしました。やはり、と言いますか、制作過程では人種、言語、文化の壁が大きく立ちはだかりました。英語圏の人たちにとっては、特にこの小説の解釈の仕方や、影響の及び方が、アジアに住む私たちとは大きく異なるところが編集段階で露呈しました。オーストラリア人の編集マンと日本人のディレクターと私で長時間にわたる議論が続いたこともあります。今となってはいい思い出ですが(笑い)。
−−番組の見どころを教えてください。
今を生きるアーティストやクリエーター、ジャーナリストから政治家まで、時空を超えてあらゆる人々に影響を及ぼし続ける小説「1984年」の世界を楽しんでいただけるいろんな“仕掛け”を本編内に用意しました。よくある「人物密着型」でもなければ、よくある「情報検証型」でもありません。世の中における“エンターテインメントの存在意義”を問い掛ける、今まで見たことのない、WOWOWにしかできない“ニュータイプ”のドキュメンタリーです。ですから本編内の登場人物は一見バラバラなカテゴリーから集まったようにも見えますが、それが“表現者”というキーワードで一くくりに見えてくるようなところが、番組の見どころではないかと思います。また、その実現に一役買ったのは、演出面におけるオーストラリア制作チームの編集のセンスとCGのセンスではないかと。
−−視聴者へ一言お願いします。
現代特有の“IT監視社会の動向”はもちろん、日本でも「特定秘密保護法の施行」や「ウィキリークス型内部告発サイトの開設」が報じられるなど、オーウェルが描こうとした世界への関心は明らかに高まっているのでは、と考えます。皆さんにはぜひこの番組をご覧になっていただき、“未来社会”を想像するきっかけになってほしいです!
WOWOW 制作部 チーフプロデューサー 内野敦史
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