ベイマックス:声優初挑戦の菅野美穂と小泉孝太郎に聞く 「一生に一本の作品だと思った」

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 ディズニーの長編アニメーション最新作「ベイマックス」(ドン・ホール監督、クリス・ウィリアムズ監督)が20日に公開された。米サンフランシスコと東京をモチーフにした架空都市サンフランソウキョウを舞台に、謎の事故で亡くなった兄の形見で人々の心と体の健康を守るケアロボットのベイマックスと、その弟で14歳の天才少年が心の傷を癒やしながら悪の存在に立ち向かう姿を描いている。日本語吹き替え版では女優の菅野美穂さんと俳優の小泉孝太郎さんが声優に初挑戦。ヒロとタダシを女手一つで育て上げる母性愛に満ちたキャラクター・キャス役を演じる菅野さんと、兄タダシ役を演じる小泉さんに、アフレコ時のエピソードや演じたキャラクターについて、ディズニー映画の魅力などを聞いた。

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 ◇喜びと不安が入り交じった声優初挑戦

 ディズニーのアニメーションで声優初挑戦となった菅野さんと小泉さんは、今作のオファーを受けた時のことを、菅野さんは「わあ、すごい! うれしい」と率直に喜びを感じつつ、「お仕事の進み方が独特だった」と驚いたという。「あまりにも驚いて自分がディズニーの世界に入るという感覚がなかった」という小泉さんは、「こんなに実感のない仕事は初めてだった」と当時の心境を明かし、「イベントや取材など日がたつにつれて実感し、出演した喜びは試写会を見た後に最高潮に達した」と笑顔で語る。

 菅野さんと小泉さんは、ともにドラマや映画など多数の作品に出演しているが、「普段は声、顔、動きで役を表現しますが、今回は声だけ。声だけはこんなにもよりどころがなく、確信がないまま(1行のせりふを)20回、30回やったりするのは不安だった」と菅野さんは実感を込め、「すごく新鮮な経験で、まだまだ勉強しなければいけないことがたくさんあると思いました」と振り返る。

 一方、小泉さんも「声優初挑戦でしたし、タダシの声を吹き込むのには想像よりもはるかに苦労しました」と慣れない作業に苦心した様子。「一言で何十回も(収録を)やったり、(台本)1ページで2時間ぐらいかかったりしたけれど、本当に納得できるまでやることができて、そこは正直タダシというものを作り出せたとは思う」と力を込め、「(完成した映像を見て)タダシの方向性が間違いではなかったのかなというのは、ホッとした部分もある」と胸をなで下ろす。

 ◇弟がいることが生かせた…小泉孝太郎

 菅野さんが演じるキャスはヒロとタダシの親代わり。菅野さんは、「すごくパワフルで明るく前向きで、決して何が起きても悲観的にならないし、いざという時はヒロのペースに合わせ待ってあげられるような女性」と人物像を表現し、「私に(キャス役の)お話をいただけたことは、なんとなく理解でき、納得しました」と綿密なリサーチに基づいたディズニーのキャスティングに納得の表情を見せる。

 タダシの声を担当する小泉さんは、「普通、兄弟は男でも女でも幼い時はライバル心があると思う」と持論を語り、その上で「ヒロとタダシが年の差がある兄弟ということ」を意識したといい、「ロボット工学に関するやり取りの時だけライバル心があり、それ以外のところはライバル心をなくし、小さい弟を見守る兄や父のような感覚を大事にした」と役作りの過程を明かす。役作りでは「実生活でも弟がいるので、その部分では感覚的に役立ちました」といい、「共感は持ちやすかった」と小泉さん。菅野さんは「すごく自然でぴったりだった」と小泉さんのタダシ役を絶賛した。

 ◇ディズニー作品の魅力を再確認した2人

 出演経験も踏まえてディズニーのアニメーション作品の魅力を聞くと、「一番のすごさは、名シーンと名曲があること」と小泉さんは言い切る。「名作というのは名シーンだけでも音楽だけがよくてもだめ。その二つがバランスよく一致しないと人の心に残らないと思う」と語り、「作っている人に子供心と遊び心があるから心に残るものを作れるのでは」と力説する。発言を聞いた菅野さんも、「ディズニーのビジネスを担う偉い方たちが皆さん、作品を愛していて、楽しみながら仕事をしている感じが、あらゆる世代に響き伝わるのだと思います」と同意していた。そして、「キャラクターとストーリーはディズニーの素晴らしいところだと思うけど、時代とともに少しずつディズニー作品も変化していると思う」と続け、「ディズニー“らしさ”もあるけど(今作は)そう来たかという部分もあり、ある意味、そこが“自由”なのが魅力だと思う」と分析する。

 今作を鑑賞し、「自分のところはハラハラしながら見ていました」と笑う菅野さんだが、「どんどんキャラクターの魅力とお話の面白さに引き込まれ、普通のお客さんのように感動しました」といい、「37歳の私でも素直に感動でき、今までのディズニーらしさもありつつ、またちょっと違ったイメージもあるのが新しい魅力」とアピールする。小泉さんは「改めて名作には必ず名シーンがあるというのを気づかされた」とうなり、「あまりここでは言えないですが、クライマックスのシーンなどもすごく、映画が持っているエネルギーを見終わって感じた」と絶賛し、「そこがディズニーのすごさ」と力を込める。

 ディズニー作品では一度キャスティングされると、続編や関連作品が製作される際は、常に同じキャストが声を演じるのが通例だ。小泉さんが「一生に一度のことだと思って臨み、完全燃焼しました」といえば、菅野さんも「“燃え尽きる”感じはあった。よその現場とはまったく違う得がたい経験ができ、一生に一本の作品だと思いました」と口をそろえる。そんな2人に今作を一緒に見るなら誰とがいいかという質問を投げ掛けると、小泉さんは「家族や恋人など当たり前に一緒にいる身近な人と見てほしい。改めてすがすがしい気分になれると思う」と答え、菅野さんは「ディズニーだから親戚には『見に行くように』と強く言ってあります!」と話し、笑いを誘った。映画は全国で公開中。

 <菅野美穂さんのプロフィル>

 1977年8月22日生まれ、埼玉県出身。1993年に女優デビューし、95年にNHK連続テレビ小説「走らんか!」の準主役に抜てきされる。96年には「イグアナの娘」(テレビ朝日系)で主人公を演じ注目を集める。97年の「君の手がささやいている」(テレビ朝日系)ではエランドール賞新人賞を受賞。人気女優として数多くのドラマ、映画、舞台などに出演するほか、多くのCMにも出演している。

 <小泉孝太郎さんのプロフィル>

 1978年7月10日生まれ、神奈川県出身。2002年にドラマデビューして以来、ドラマや映画、CMなどで活躍。主な出演作はNHK大河ドラマ「八重の桜」(2013年)のほか、宮部みゆきさんの小説を基にドラマ化し主演を務めた「名もなき毒」(TBS系)、同続編の「ペテロの葬列」など。バラエティー番組にも出演。

 (インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)

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