三上博史:演技とは「自分をからっぽにして役を入れていく作業」 ドラマ「贖罪の奏鳴曲」で主演

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 俳優の三上博史さんの主演ドラマ「贖罪の奏鳴曲(ソナタ)」(WOWOW)が24日にスタートする。過去に殺人を犯したことがある弁護士を演じた三上さんは「説得力がない主人公を皆さんが納得して楽しんでもらえるにはどうしたらいいかと、微妙なさじ加減をしながら演じています」と語る。そんな三上さんに、俳優としてのポリシーや今作の撮影秘話などを聞いた。

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 ◇殺人を犯したことがある弁護士が主人公

 ドラマは、三上さん演じる弁護士・御子柴礼司(みこしば・れいじ)が主人公の法廷ミステリー。御子柴はどんな罪名で起訴されようが執行猶予を勝ち取るといわれる不敗の有名弁護士だが、弁護料が法外なため、あくどい弁護士として敬遠されている。ある日、河原で水死体が発見され、事件を調べていた刑事の渡瀬は、被害者のフリージャーナリストが御子柴の身辺を嗅ぎ回っていたことを突き止め、御子柴が過去の幼女殺害事件の犯人だったことにたどり着く……というストーリー。

 「さよならドビュッシー」で2009年に「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した中山七里さんのミステリー小説が原作で、「EUREKA ユリイカ」(00年)や「共喰い」(13年)などの青山真治監督と三上さんが主演映画「月の砂漠」(01年)以来14年ぶりにタッグを組んだことが話題を呼んでいる。キャストは、御子柴が弁護する被告人役でとよた真帆さん、その息子役で染谷将太さん、渡瀬刑事役でリリー・フランキーさんが出演する。

 ◇青山監督は貴重な存在

 青山監督との出会いを三上さんは「『ユリイカ』を見たのがきっかけで、なんとかご一緒したいなと当時の仙頭(武則)プロデューサーにお願いして、間に入っていただいて、なんとかつながりました。そして翌年『月の砂漠』を撮ったんです」と自らアプローチしたことを明かす。三上さんは青山監督のことを「個性的というか、不思議なタイプの監督だなと思っていて、絵作りが好きな監督と芝居が好きな監督と大きく分かれると思うんですけど、その二つが絶妙なバランスの方。僕は自分が成長できる種子みたいなものをいつも探しているんですが、いろんな種を与えてくれる、僕にとってはすごく貴重な監督です」と表現する。

 御子柴の役については「人を殺(あや)めてしまった人間が弁護士になるっていうことがまず説得力がないですよね。弁護は正義がモチベーションなのに。そういうところを皆さんが納得して楽しんでもらえるにはどうしたらいいかと、本当に微妙なさじ加減で演じています。ある程度、弁護士であるという心を持って演じるんですけれど、それを見えやすくするのか、見せにくくするのかは、僕と青山さんとの“悪だくみ”のしどころなので、そのへんをさじ加減しながら詰めていきました」と語る。

 ◇役は作るものではない

 そんな“共感”するのが難しい役を演じるにあたって「共感についてはお手上げですね。共感してもらおうと思っていないので。たまには物語として共感されない主人公がいてもいいのではないかと思うくらいで」と言い切る。そして「僕は“役作り”という言葉が大嫌いで、作ったことが一度もないし、役というのは作れるものではないと思っています。僕のメソッドは、役は作るものではなく生まれてくるもの、とにかく自分をなくすという作業。自分の美意識、美学をすべて捨てて演じる。でも変えられないのは僕の顔、声、体。それらはもう使うしかない。中身を出して、できるだけ空っぽにして、そこに台本を読んで、読んで、読んで、隅々まで(その人物を)入れていくという方法をとっています」と力を込める。

 ◇共演者とは毎日バトル

 共演のリリー・フランキーさんについては「渡瀬という刑事は典型的で対峙(たいじ)してもあまり面白くないのかなと思っていたんですけど、リリーさんが演じるというお話を聞いたときに楽しみだな、典型にはなりえないなと思いました。ものすごくリリーさんに興味があったんですよね。共演が実現することになってすごく現場に行くときに興奮しました」と喜んだ。

 染谷さんについては「染谷さんが(被告人の息子の)幹也をやられることになって、またこれはすごいなと。想像できなかったし、すごく(完成への)期待値が上がりました。現場に入って対峙してみて、探り合いの毎日というか。すごく刺激的な撮影の日々だったんです」と興奮ぎみに語り、また「第1話の冒頭で1シーンだけだったんですけど吉田鋼太郎さんが出演されていたりとか、撮影は日々刺激的でした、鋼太郎さんも今回が共演は初めてで、どんな芝居をするのかなと。会ってみたいという人がいっぱい出られているので、ものすごく緊張の日々でした」と撮影を振り返る。

 そんな中で主演の三上さんは「毎日バトルですよね。一瞬気を抜いたら僕が持っていかれる、役がかすんで作品が破たんする。僕はそういう位置にいるので、主役が持っていかれないように。作品が死んでしまわないように踏ん張るしかない」と気を張っていたという。

 ◇視聴者と一緒に想像力を膨らませながら楽しむドラマ

 今後について、三上さんは「僕は30代終わりくらいで失敗したと思ったんですよ。自分のブランド作らないで、役のブランドばかり作ってきちゃったから、僕のことを思い描くことがある人は役の印象なんだと思うんですね。ここまで来ちゃったらそれを売りにするしかないだろうと開き直って。そういう役者が一人ぐらいいてもいい。僕は役というフィルターを通して輝きを出すことしか考えていない」といい意味で開き直っている。

 そんな三上さんが主役を張った今作について「ちょっと変わったドラマです。あえて、こうなるだろうと見ている人が思い描く通りにはならない、予定調和にならない最近珍しいドラマです。こう来るんだ、こういうことだったんだとか、見てくださる人と一緒に想像力を働かせながら見る作品だと思う。画面の向こう側とこちら側で妄想をバトルして楽しんでいただけたらなと。そのことにおいては、スタッフ、キャストみんなで“悪だくみ”をしているので、きっと見応えがあると思います。僕も含めて、どうなるか不安ですけれど、楽しみでもある作品ですね」とアピールした。

 ドラマは、WOWOWプライムで24日から毎週土曜午後10時に放送。全4話で第1話は無料放送。

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