アメリカン・スナイパー:脚本家ジェイソン・ホールに聞く(下) アカデミー賞ノミネートの喜び語る

「アメリカン・スナイパー」の撮影中のブラッドリー・クーパーさん(左)とクリント・イーストウッド監督 (C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS(BVI)LIMITED,WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
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「アメリカン・スナイパー」の撮影中のブラッドリー・クーパーさん(左)とクリント・イーストウッド監督 (C)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS(BVI)LIMITED,WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

 第87回米アカデミー賞で、作品賞はじめ監督賞、脚色賞など6部門でノミネートされているクリント・イーストウッドさんの監督作「アメリカン・スナイパー」が、アカデミー賞発表直前の21日に全国で公開された。脚本を執筆し、製作総指揮も務めるジェイソン・ホールさんが、ノミネートの喜びと、その“意義”を語った。

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 今回のノミネートについて開口一番、「とてもうれしい」と口にし、「より多くの人に見てもらうきっかけとなり、それが映画の可能性を広げることになる」と話すホールさん。

 映画は、2003年にイラク戦争が始まってから4度にわたり従軍し、1.9キロ離れた標的を射抜くほどの腕前を持つ狙撃手、ネイビー・シールズ(米海軍特殊部隊)隊員のクリス・カイルさんについて描いたものだ。ホールさんは、カイルさんの回顧録「ネイビー・シールズ 最強の狙撃手」(原書房)を基にしながら、カイルさん本人に話を聞き、脚本を書き上げた。

 ホールさんは、「これは語るべき重要なストーリーだ」と力を込める。「これは、クリス・カイルだけではなく、戦地で戦ってきた軍人たち全員の物語でもある。戦地へ赴いた兵士たちはみな、大切なものを犠牲にしている。この映画を見て、戦争は地獄だがとても個人的なものでもあるということを分かってもらえるとうれしい」と語り、戦争とは「非常に個人的な犠牲を強いるし、戦う青年たちから多くを奪い取るもの」で、そういった認識が深まれば、「戦争へのブレーキになるかもしれない」と今回の作品がもたらす意義を強調する。

 ホールさんはまた、今回のノミネートには大きな意義があると考えている。というのは、実はカイルさんは、映画の完成を待つことなく2013年2月に亡くなったからだ。「いい作品だと認められたという事実に、クリスの家族も報われるのではないかと思う。(カイルさんの)奥さんのタヤ・カイルは、クリスが亡くなってから企画を止めることもできただろうに、製作を承諾してくれた。とても勇気のあることだ。その上、夫のことや夫婦関係について忌憚(きたん)なく話してくれた。そんな彼女に対する報いにもなるだろう」とタヤさんの貢献に感謝する。

 完成した映画を見たら、カイルさんは何と言うと思うかという問いかけに、「クリスは、賞賛されてもそれを他人のお陰だと言い、自分の手柄にすることはなかった。自分のストーリーが戦地へ赴くほかの兵士たちと、彼ら自身や彼らの家族が背負う犠牲をも描いているということに誇りを持ったに違いない」とカイルさんの人柄がしのばれる答えを返した。さらに今回の映画が、カイルさんを“殺し屋”として描くことに終始せず多角的に捉えている点を「気に入ってくれるはずだ」と自信を見せる。そして、「原作からはクリスの一面しか読み取れないし、さまざまな疑問が浮かび上がってくる。その疑問を少しでも映画で解消できるならうれしい。きっと誇りに思ってくれただろう」と胸を張った。アカデミー賞は、現地時間22日(日本時間23日)に米ロサンゼルスで発表される。

 <プロフィル>

 1972年、米カリフォルニア州生まれ。南カリフォルニア大学に進学して演劇を学び、俳優としてキャリアをスタートさせる。米テレビシリーズ「バフィー~恋する十字架~」(97~99年)や「CSI:マイアミ」(2005年)などに出演。やがて脚本を書き始め、「愛とセックスとセレブリティ」(09年)で脚本家デビュー。「パワー・ゲーム」(13年)での共同脚本を経て、今作を執筆。

 (文・りんたいこ)

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