宇宙論の最先端研究で知られる理論物理学者スティーブン・ホーキング博士と元妻のジェーンとの愛の物語「博士と彼女のセオリー」(ジェームズ・マーシュ監督)が、13日から公開される。主演したエディ・レッドメインさんが、今年度の米アカデミー賞主演男優賞に輝いた話題作。実在の人物を迫真の芝居で演じ度肝を抜かれる。
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1963年、英国ケンブリッジ大学大学院で理論物理学を研究するスティーブン(レッドメインさん)は、友人とパーティーに行き、同じ大学でスペイン詩を学ぶジェーン(フェリシティ・ジョーンズさん)に一目ぼれをする。恋のときめきとともに、研究も順調だったが、スティーブンの体に異変が起こる。筋萎縮性側索硬化症(ALS)で余命2年と宣告されたスティーブン。ジェーンは打ちひしがれた彼を支えようと決め、結婚する。子供にも恵まれ、妻に支えられながら研究に打ち込み、世界的な博士となっていくスティーブン。一方で、夫の介護に子育てにと献身的に立ち回るジェーンだったが……という展開。
難病の夫と支える妻が困難を乗り越えていく話というだけではだいぶ言い足りない。男女の愛の変遷が物語の太い軸となっている今作は、いくつもの色彩を放つプリズムのように多面的だ。理系男子の可愛らしさが魅力のスティーブンと聡明なジェーンがカップルで過ごす青春は、ちゃめっ気たっぷりで生き生きしている。そして、余命宣告という壁を乗り越えて、母親と息子のような関係になってしまった結婚生活は、倦怠(けんたい)へと変わっていく。第三者が登場した家庭生活では、スリルだけではなく、長年連れ添った夫婦の友情のような深い理解があり、独特の和声を生み出している。家庭の変遷と研究の成果、病気の進行も同じ時間軸の中にあり、極端な「正」と「負」が混在する数奇な人生に思わず引き込まれる。苦難に負けず、好奇心いっぱいのスティーブンの明るさと強さに敬服。死と隣り合わせに生きる人物の「命ある限り希望はある」という言葉が深く心に刺さる。原作は元妻のジェーン・ホーキングさんの自伝本。TOHOシネマズシャンテ(東京都千代田区)ほかで13日から公開。(文・キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。ホーキング博士の著作は、日本でもブームになりました。宇宙に興味があったので当時を思い出しながら映画を鑑賞しました。
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