注目映画紹介:「龍三と七人の子分たち」2年半ぶり北野監督作 元ヤクザのおじいちゃんがパワフル

(C)2015「龍三と七人の子分たち」製作委員
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(C)2015「龍三と七人の子分たち」製作委員

 「アウトレイジ ビヨンド」(2012年)から2年半ぶりの北野武監督の最新作「龍三と七人の子分たち」が25日から公開される。家族から疎まれている元ヤクザのボスが、かつての仲間を呼び集めて再結成をし、大暴れするコメディー作。主演は藤竜也さんで、近藤正臣さんとともに北野組初参加となった。平均年齢72歳の俳優たちのパワーに圧倒され、ワクワクする映画だ。

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 龍三(藤さん)は、かつて“鬼の龍三”と呼ばれていた元ヤクザの組長。70歳の今は引退をし、息子夫婦の世話になり、肩身の狭い思いをしており、昔の仲間のマサ(近藤さん)と「義理も人情もない」とボヤいている。ある日、留守番中にオレオレ詐欺の電話にだまされた龍三は、お金の受け渡し場所にやって来た。しかし現れた詐欺師をビビらせ、図らずも撃退してしまう。それをきっかけに、詐欺師連中を束ねる京浜連合のボス・西(安田顕さん)と因縁の関係になってしまった龍三は、昔の仲間を招集し、「一龍会」を結成。若い者に勝手なマネはさせられぬとばかりに、世直しに立ち上がる……というストーリー。

 最初から最後まで笑った。同じヤクザが主人公でも、「アウトレイジ」とは全く異なるテイストだ。というのも、こちらは元ヤクザで、体はガタガタ。龍三が仲間を家に呼べば、息子からは「昔のヤクザが家になんて来ないでよ!」なんて怒られる。しかしそこは、演じているのが藤さんなので、ひとたびスーツを着ればダンディーそのもの。上野の西郷さんの下に集まった子分たちは、超個性的で、手はブルブル、足はヨロヨロしているが、心意気だけは忘れておらず、はしゃぐ姿も可愛らしい。オレオレ詐欺、食品偽装など今日的なネタも盛り込みながら、おじいちゃんたちは現役の頃の風情で肩で風を切るが、そこには「トホホ感」たっぷりだ。時代とのズレが、マサが住む古びた団地の様子と呼応し、「失くすものなど何もない」という捨て身感も全開で、仁義など忘れたセコい犯罪に手を染める若いヤツらとの対決へとなだれ込む。セスナ機も飛び出し、派手なカーチェースでストーリーを盛り上げる。藤さん、近藤さん、中尾彬さん、品川徹さんらベテラン俳優たちのせりふの言い回しにも聞きほれる。音楽は北野映画常連のムーンライダーズの鈴木慶一さんが担当した。丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほかで25日から公開。(キョーコ/フリーライター)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。クライマックスの中尾彬さんには度肝を抜かれ、夢で見てしまいました。

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