注目映画紹介:「百日紅~Miss HOKUSAI~」葛飾北斎と娘による創作と風変わりな日々

「百日紅~Miss HOKUSAI~」のワンシーン (C)2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会
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「百日紅~Miss HOKUSAI~」のワンシーン (C)2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会

 杉浦日向子さんのマンガ「百日紅(さるすべり)」が原作の劇場版アニメ「百日紅~Miss HOKUSAI~」(原恵一監督)が9日に公開される。葛飾北斎の娘で浮世絵師のお栄を主人公に、北斎や仲間たちとのにぎやかな日々や交流を江戸の四季を通して描いている。お栄の声を女優の杏さん、北斎の声を今作がアニメ声優初挑戦となる俳優の松重豊さんが担当するほか、濱田岳さん、高良健吾さん、美保純さん、筒井道隆さん、麻生久美子さんら豪華キャストが参加している。

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 父であり師匠の葛飾北斎(声・松重さん)や仲間たちと絵を描いて暮らす浮世絵師・お栄(声・杏さん)は、家にやって来る池田善次郎(声・濱田さん)や歌川国直(声・高良さん)と騒いだり、離れて暮らす妹・お猶(声・清水詩音さん)と出かけたりしながら毎日を過ごしている。さまざまな出来事があふれる江戸の街に、再び百日紅が咲く季節が到来し……というストーリー。

 映画「クレヨンしんちゃん」シリーズや「河童のクゥと夏休み」などで知られる原監督と、アニメーション制作のProduction I.Gが初めてタッグを組んだ今作は、江戸情緒あふれる作風で、浮世絵を2Dアニメで表現、江戸の街並み建築物などには遠近法を利かせた3D描写を織り交ぜることで、質感や奥行きを絶妙なバランスで描くことに成功した。お栄が描き出す龍や北斎が描く波などが動き出すシーンなどは圧巻で、アニメならではのダイナミックさが楽しめる。映画は北斎の創作逸話や長屋での風変わりな共同生活、お栄の絵師としての試練と不器用な恋などを中心に展開するが、江戸っ子の心の機微がじっくりと描かれていて胸を打たれる。主要キャラクターを俳優陣が担当していることは好みが分かれそうだが、劇場アニメの完成度を見るにつけ、ぜひ実写でも見たくなった。テアトル新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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