「ロゼッタ」(1999年)や「少年と自転車」(11年)などで知られるベルギーのジャン・ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟監督の最新作「サンドラの週末」が23日から公開される。主演はオスカー女優のマリオン・コティヤールさん。リストラの対象となった女性が自分の弱さと向き合いながら闘う数日間をつぶさに描いている。
ウナギノボリ
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サンドラ(コティヤールさん)は、体調不良によってソーラーパネル工場を休職中だったが、ようやく復職の見通しが立った。しかし、金曜日に会社から解雇を突きつけられる。飲食店勤務の夫マニュ(ファブリツィオ・ロンジョーネさん)とともに、ようやくマイホームを手に入れたばかりで、子供たちもまだ小さい。同僚たちは、サンドラの復職とボーナスを天秤(てんびん)にかけての投票をすることになった。半数以上がボーナスを諦めれば、サンドラの復職がかなう。サンドラは夫の助けを借りながら、同僚にボーナス返上を受け入れてもらうために説得に回る……という展開。
まず、コティヤールさんが大スターの存在感を消し去っている姿に驚かされる。衣装も色はカラフルとはいえ、タンクトップに羽織で通す地味さ。サンドラは病気休職を理由に仕事を失いかけている女性で、ダルデンヌ兄弟監督がこれまで描いてきた「社会的弱者」だ。同僚に「私とボーナス、どっちを取るの?」と聞いて回るのは、それだけで心が折れると思うが、弱かった女性が次第に強くなっていくのが見えてくる。これまでのダルデンヌ兄弟監督作では、「家族」は機能していなかった。しかし今作では、夫や子供たちの支えがある。夫役はダルデンヌ兄弟監督作の常連、ロンジョーネさん。この夫がいる限り、サンドラは不幸にならないと思える、そんな温かさがある。もちろん同僚たちの生活にも余裕などなく、我がことのように気をもみながら、サンドラの一挙一動を見守ってしまう。観賞後の後味はとても爽やかで、サンドラの背中に拍手を送りたくなる。Bunkamuraル・シネマ(東京都渋谷区)ほかで23日から公開。(文・キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。ダルデンヌ兄弟監督作は大好き。常連俳優オリビエ・グルメさんがどこに出ているかを探すのも楽しい。
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