最近テレビやCMでちょくちょく見かけるけれど、実はあんまりよく知らない……。そんな、今さら聞けない“ネクストブレーク芸人”の基礎知識を、本人の言葉を交えて紹介。今回はピン芸人の厚切りジェイソンさんをピックアップする。芸歴わずか4カ月にして、ピン芸人日本一を決める「R-1ぐらんぷり2015」(関西テレビ・フジテレビ系)で、大会史上初の外国人として決勝に進出し、注目の的となった。普段はIT系の会社に勤めている会社役員という異色の経歴も手伝ってテレビ番組に引っ張りだことなっている厚切りジェイソンさん。ブレークを感じたのは、意外にも「R-1ぐらんぷり」ではなく、14年12月に出演した「速報!有吉のお笑い大統領選挙」(テレビ朝日系)で司会を務めていたタレントのベッキーさんが絶賛してくれたことだという。芸名の由来、ブレークのきっかけ、今後の活動などについて聞いた。
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ワタナベエンターテインメントに所属しているピン芸人で、1986年4月9日生まれの米国出身。ワタナベコメディスクール第19期卒業生で、2014年9月にデビューし、現在芸歴8カ月目となる。現在はIT企業の役員もやっている二刀流芸人として、バラエティー番組や朝の情報番組などに出演するほか、念願の初DVD「WHY JAPANESE PEOPLE!?」(コンテンツリーグ、税抜き3000円)を、6月24日に発売する。
芸名の由来は、神奈川県厚木市在住であることと胸板が厚いことをかけて「厚切り」、これに本名の「ジェイソン」を合わせた。「厚切り」という言葉は「そんなに頻繁には出ないですけれど(ネット検索などで)引っかかる言葉だし、ほかの芸能人がかぶるものではない」のが決め手となり、「厚切りベーコンや、そういう(分厚い)ものを見たときにも思い出してほしい。マーケティング戦略な意味も入っています!」と熱弁するほど本人は気に入っているが、最初は「養成所でも事務所でもバカにされていました。反対されましたけれど、無理矢理決めました」と主張を通した。
05年に仕事の関係で初来日した際、「一緒にいた日本人がみんな見ていて、僕も毎週見るようになった」というネタ番組「エンタの神様」(日本テレビ系)がきっかけで、お笑いが好きになった。せりふや笑いどころを分かりやすくする番組のテロップで、まだ全然分からなかったという日本語を勉強。「笑うポイントが明確なんですよ。観客もいますし、ここで笑うんだ(と分かりやすい)。自分が面白いと思っていなくても、感覚的に、客観的に分かります」と話す。当時好きだったのは、ピン芸人の「アクセルホッパーさん。リズム芸で『バカテンポ、ポンポンスポポーン!』が耳に残って覚えやすかった」と振り返った。
「お笑い芸人になりたい」という夢が具体的になったのは、仕事で11年に再来日して日本在住になり、所属事務所の先輩お笑いコンビ「ザブングル」の営業を見に行ってから。観客をステージに呼んで腕相撲対決をするという企画で加藤歩さんと共演し、「無理矢理名刺を渡して『連絡してください』と言ったら、(加藤さんは)本当に連絡してくれた」と交流がスタートした。「芸人をやってみたい」と相談すると反対されたというが、厚切りジェイソンさんの熱意に負け、「まずスクールで、とりあえずやってみたら」と、週末コースのあるワタナベコメディスクールを紹介され、「翌日に申し込みました」という。
「R-1ぐらんぷり2015」でも披露された代表ネタ「漢字」は、ホワイトボードを使って漢字を書きながら「漢字、ムズかしいよ!」と、自身が疑問に思うことを訴え、「Why Japanese People!? Why!?(なぜなんだ日本人!?)」と絶叫しながらツッコミを入れるという内容。最初は、母国の主流であるスタンドコメディーを日本語でやっていたが、「なかなか受けなかった。やっぱりお笑い芸人は難しいんだとほとんどあきらめかけていた状態」だったという厚切りジェイソンさんが、毎週新しいネタを作らなければいけない状況で、無理矢理作ったネタだ。
日本語の勉強として覚えようとしていた漢字について、「これおかしいな、突っ込めるでしょう、と思った。それまでは、ただ漫談みたいに何も使わずにやっていたんだけれど、これはフリップでやってみようかなと思った」という。最初のころはまあまあの受けだったが、スクールでのアドバイスを受け、数カ月で今の形に仕上げた。ネタの最後に「以上!」と叫んでポーズを決めるのは、「ちゃんとしたオチが作れなかったので『ネタが終わったよ』という合図の意味だけでした。(漢字で“大”というポーズじゃないかと)よく言われるんですが全く意識はなかった」と苦笑した。
ちなみに、好きな漢字は、分かりやすくて誤解がない、数字の「一」、一番初めに覚えた漢字は、使っていた教科書の最初に出ていた「時」で、「今何時ですか?」が、初めて覚えた日本語だという。一方、嫌いな漢字は「漢字はほとんど嫌いです。ほとんど矛盾ばっかり。(ネタは)漢字が嫌いだからこそできた」と言い切る。一番矛盾を感じたのは、すでにネタにもなっている金属の「銅」で、「金と同じ? いや同じじゃない!!」と絶叫する。
現在はバラエティー番組や、街歩きロケ番組に多く出演し、小学生や中学生などに「結構『WHY?』と叫ばれます」と、人気、知名度ともに上昇中の厚切りジェイソンさん。ライバルとなるような芸人についても「ありがたく、あまり(同じようなネタをする)人がいないところに収まっている」と自己分析。「(ハーフ芸人が多いが)ジェイソンは、ハーフじゃないです。(直接のライバルは「パックンマックン」の)パックンさんくらいですね」と笑う。
自身がブレークを感じたのは、「R-1ぐらんぷり」ではなく、14年12月に出演した「速報!有吉のお笑い大統領選挙」(テレビ朝日系)だった。お笑い芸人の有吉弘行さんとともに番組の司会を務めていたタレントのベッキーさんが絶賛してくれた。「ネタを気に入っていただいて、放送直前とかにツイートしてくれた。フォロワー数が多いベッキーさんが6回くらい『今出たよ』とか『ビデオ出たよ』とか丁寧にツイートしてくれた」と感謝した。
番組放送前は300人ほどだったツイッターのフォロワー数は、放送後に約9000人に増えたといい、「R-1で注目されるまで何もなかったけれど、(放送後、ベッキーさんの発言などが検索され)改めて知名度が一気に上がった」と語った。
会社では米国法人を担当しているため、米国時間に合わせて夜、働いているという厚切りジェイソンさん。「普通の人が寝る時間に会社の仕事をしています。なんとか、楽しく両立しています」というが、睡眠時間は2、3時間のときもあるといい、「(今回発売される)DVDの台本を覚えるのは相当苦労しましたね。寝ないと覚えられないから」と苦笑する。
「R-1」決勝進出後は芸人として活躍の場が広がったが、人気商売のため「芸人一本にするのはあんまり、現実的じゃないと今でも思っている」といい、今後も会社役員との2足のわらじを履いて芸人を続ける予定だ。目標は「2020年の東京五輪で、外国人代表タレントとして活躍していればいいと思っています」と前向きだ。今後やってみたい仕事は「エベレストなどのハードな登山。(リアクションをする)体を張った仕事ではなく、ものすごく大きな挑戦をするとか、冒険的な、普通の人がなかなかできないようなことをしたい」と夢を語った。
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