テレビ質問状:「キリング・フィールドからテニスコートへ~カンボジアテニスの再興と未来」

「ノンフィクションW キリング・フィールドからテニスコートへ~カンボジアテニスの再興と未来~」のキービジュアル
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「ノンフィクションW キリング・フィールドからテニスコートへ~カンボジアテニスの再興と未来~」のキービジュアル

 WOWOWは毎週土曜午後1時に「WOWOWオリジナルドキュメンタリー」枠として、「ノンフィクションW」と「国際共同制作プロジェクト」の2番組を両輪に、国内外のさまざまなテーマを扱ったオリジナルのドキュメンタリー番組を放送している。6月27日に放送される「ノンフィクションW キリング・フィールドからテニスコートへ~カンボジアテニスの再興と未来~」のプロデューサーを務めたWOWOWの制作局制作部の太田慎也さんに、番組の魅力を聞いた。

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 --番組の概要と魅力は?

 錦織圭選手の活躍などにより注目が集まるテニスですが、我々と同じアジア圏において、「ただテニスをしていただけで殺された」、そんな歴史を背負う国があります。それはカンボジアです。1970年代後半、原始共産主義を掲げたポル・ポト率いる暗黒政権は、3年8カ月にわたってすべての教育・宗教などを廃止し、国民に自給自足のための労働を課し、中でも教師・医師・スポーツ選手といった学識ある人々を徹底的に虐殺しました。当時、東南アジア随一の実力を誇ったテニス選手たちはその標的となり、カンボジアからテニスというスポーツは消滅したのです。しかし、内戦が落ち着いた90年代に入り、虐殺を生き延びた数少ない選手や国外へ亡命していた選手の息子らにより、カンボジアテニス連盟が立ち上げられ、ここ数年、再び国際舞台で試合をするまでになっています。今年行われた男子国別対抗戦「デビスカップ」を中心に、その軌跡を追いました。

 --今回のテーマを取り上げたきっかけと理由は?

 スポーツ選手たちが背負うものはさまざまだと思います。チーム、誇り、キャリア、生活、家族、国家、障害、歴史……。かつてカンボジアのテニス選手たちは、選手であることを否定され、命さえ容赦なく次々と奪われました。虐殺を生き延びた数少ない選手たちは現在70歳前後、今もプレーを続けています。若い選手たちに何を残そうとしているのか、若い選手たちは何を思ってプレーしているのか、それらをきちんと映像に収め、伝えたいと思いました。現代においても、スポーツが、政治や国家間・民族間の紛争などによって絶たれることは少なくありません。アジア圏の国カンボジアにおけるこの40年間の出来事は、今こそ残し伝えるべきものだと思ったのです。

 --制作中、一番に心掛けたことは?

 男子テニス・カンボジアテニス代表は現在、デビスカップのアジア・オセアニアゾーン「グループ3」に所属しています。試合のレベル、世界の注目度、競技環境、観客動員、いずれも“世界最高峰”とはほど遠いかもしれません。しかし彼らはアスリートとして、誰にも負けない気持ちで、祖国の歴史と威信を背負ってコートに立っています。「恵まれない国の、誰も知らない選手たちが頑張っている」話にはしたくなかったので、テニスの世界を舞台に、「強いか弱いか」だけではない、彼らが歩んだ歴史や彼らが背負うものが、「現代を生きる我々にとって大切な何か」であるというメッセージを込められるよう、制作しました。

 --番組を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったエピソードは?

 ポル・ポト政権下の虐殺を生き抜いた選手たちは、取材班に当時のことについて貴重なお話をたくさんしてくださいました。耳をふさぎたくなるような話も少なくなかったですが、彼らの言葉と真摯(しんし)に向き合うよう努めました。彼らの言葉に、カンボジアにいる次の世代だけでなく、我々世界中の人間が耳を傾けることこそが大切だと思い知らされました。

 --番組の見どころを教えてください。

 「キリング・フィールドからテニスコートへ」というタイトルの通りだと思っています。この番組は、テニスというスポーツが持つ“日の当たらない陰の歴史”を描いており、スポーツドキュメンタリーではありますが、歴史を語り継ぐという点でも意義あるものになると思っています。カンボジアの歴史とそれを経験した人たちの貴重な証言の数々や、その歴史を胸にコートに立つ若い選手たちの物語は、一人でも多くの方に見て、感じていただきたいと思っています。さらに、カンボジアテニスに関わる人たちは、試合で結果を残すことと同様に大切にしているものがありました。それは、我々にとってとても根源的なものです。そんな部分にも注目いただきたいです。

 --視聴者へ一言お願いします。

 今、日本においてテニスは注目を集めています。世界においてもここ10年ほどは、ロシアや東欧の選手がトップに立つなど、世界的人気も上昇し続けています。そんな現代だからこそ、違った角度からその陰の歴史を知ることで、もっともっとテニスを深く理解し、今のご自身のことや、スポーツの持つ力について思いをはせていただけたら幸いです。ぜひ、一人でも多くの方に番組をご覧いただけたらうれしいです。

 WOWOW 制作局制作部 プロデューサー 太田慎也

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