ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
俳優の染谷将太さんが主演を務めた深夜ドラマの劇場版「映画 みんな!エスパーだよ!」(園子温監督)が全国で公開中だ。同作は若杉公徳さんのマンガが原作で、2013年4月クールにで連続ドラマ、今春にはスピンオフ特番が放送され、動画配信サービス「dTV」ではオリジナルドラマ「みんな!エスパーだよ!~欲望だらけのラブ・ウォーズ~」が全3話で配信中だ。映画では、テレビシリーズからのメンバーのほか、池田エライザさんや高橋メアリージュンさんら新キャストも出演し、人類滅亡を企てる悪のエスパーたちとの対決をコミカルに描いている。浅見教授役でドラマ版から出演している俳優の安田顕さんに、役柄や撮影裏話、見どころについて聞いた。
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深夜ドラマとして放送されながら、奇想天外な設定とお色気シーンも交えて描かれる青春SFコメディーが支持を集め映画化されたことを、安田さんは「うれしかった」と満面の笑みで喜び、「ドラマは楽しかったですし、染谷くんはじめ、ご一緒させていただいた方たちと同じ役柄でまた会えるというのは、すごくうれしかった」と力を込める。
映画化にあたって、安田さんは「事前に台本をいただいて読んでいるのですが、撮影が進むにつれてどうなるんだろという、心配ではなくワクワク感がどんどん募っていく現場でした」と自身の期待以上の面白さに胸を躍らせ、「園監督の一筋縄ではいかない発想、瞬間ごとに起きる現場でのひらめきがどういうふうにつながるのだろうと思い、指示の一つ一つの発想に驚かされたので、映画の完成が楽しみでした」と園監督が生み出すアイデアを絶賛する。
園監督と他の監督との違いを聞くと、「どの現場も好きだし、役者だから気を使っているというわけではなく、比較はしたくない」と安田さんは前置きした上で、「園監督のすてきなところは、エネルギッシュで現場を引っ張っていく力というにあふれている」と語り、「そこに現場にいる全員が魅了されていき、ついていこうと思わせてくれます」と説明する。
園監督の現場は一発オーケーも多く、撮影時間が短いと言われているが、「僕の印象ですが、撮影が早いといっても、時間をかけるところはかけている」と安田さんは切り出し、「瞬間的に撮った方がいいシーンはすぐ決めたりと調整してバランスをとっていらっしゃる」と園監督の撮影技法を読み解く。続けて、「文章を書いたり、絵を描いたりされているので、感覚がとにかく鋭い」と園監督の感性を称賛し、「言葉で説明するのではなく、見た人が感じ取るようなものを重ねていくというか、単にひらめきで訳の分からないことをやっているのではなく、構図の一つ一つやひらめきには、きちんと意味がある」と力説する。
安田さん演じる浅見教授は、神楽坂恵さんが演じる助手の秋山多香子の胸を見つめたり、もんだりと強烈な個性のキャラクターだが、自身が浅見教授を演じることについて、「僕に個性がないからだと思います」と意外な答えが返ってきた。続けて、「個性がある人が個性的な役をやったら、ちょっとおなかいっぱいになってしまう」と持論を展開し、「『この人、本当におっぱいをもみそう』というような雰囲気の人だったら意外性がないけれど、僕はやりそうにないでしょう(笑い)」と浅見教授の個性とは正反対の自分が選ばれた理由を分析する。
男らしい役から女装まで幅広い役を演じる安田さんだが、「収録時期と公開、放送時期が違う」と役を引きずってしまうようなことは基本的にないそうだが、「中には引きずりやすい役もあったりはする」という。「極端な役だと、引きずることは少なからずあったりもする」と切り出し、「女性の役をやらせていただいたときは、母性に目覚めたのか、共演している子たちのことをいとおしくてしょうがくなってしまった」と告白。「矯正下着をつけなければいけなかったのですが、自分でも(着用)できるようになっちゃいました」と言って笑う。
映画は愛知県東三河地区で撮影が行われたが、「豊橋が大好きになりました」と安田さんは話し、「1カ月近く滞在させていただいたのですが、収録に比較的余裕があったのでいろいろ散策したのですが、とてもいい」と絶賛する。「住んでいる方も素晴らしいですし、都会すぎないところもいいし、おいしいものもたくさんある」と笑顔で語る。
原作やドラマ版なども含め「みんな!エスパーだよ!」という作品の魅力について、「エッチなことや女の子に対する妄想といった思春期にありがちなものを“陰”ではなく、“陽”で表現していること」と安田さんは語る。続けて、「陰・鬱・暗な思春期ではなく、それも含めて思春期や青春なのでしょうが、もっと笑えて面白いこともあったということを思い出させてくれる」と説明し、「今やすっかり見慣れちゃったかもしれないけれど、昔は女の子のパンツの向こうには何があるのだろうとかを考えていて、そこに創造性がふくらだんりするわけです……」と笑顔で男子の思春期について語る。
さらに、「神社の裏側でエロ本を探したりとか、男の子ってそういうもの」と言って笑うも、「思い悩んだり苦しんだりはするけど、それがどう転換していくのかというと、仲間がいたり、自分自身の純粋な気持ちみたいなものがプラスに働いて、次に向かっていくという」と持論を展開する。続けて、「そういうことは恥ずかしいかもしれないけれど、隠すことではないと思う」と言い、「男の子は大人になった今でもみんなエロ本を買っている人も大勢いるわけですから」とちゃめっ気たっぷりに表現する。そして、「そこを大きな声で『頑張ろう』とか、『お母さんありがとう』なんて言葉には興味がないわけですが、最終的にはそういうふうに思わせる甘酸っぱさだったり感動があったりするのがこの作品の面白さ」と紹介する。
セクシーなシーンが注目されがちだが、友情や仲間の大切さを感じさせる描写も数多く用意されている。「胸を熱くさせる青春ものになっていると思う」と安田さんは言い、「パンチラとか胸をもむといった部分がクローズアップされますけど、それだけではギャラクシー賞(優秀な番組、個人、団体などを表彰する賞)を取れないと思う」と言って笑う。
今作の主人公の嘉郎は高校生だが、自身の高校時代について、「どちらかというと“陰”な高校生でした」と話す安田さんは、「受験勉強しないといけないのに、こたつで音楽ばかり聴いていました」という。「カセットテープに自分の選んだ曲を入れてレタリングシートでタイトルをつけたりしていました」と打ち明け、「『mine』という名前で何本もテープを作っていて、恥ずかしいったらありゃしない(笑い)。暗い子でした……」と自虐的に振り返る。
青春時代の恋の思い出を聞くと、安田さんは「中学のときから好きだったのですが、高校は別々の学校だった」と切り出し、「通学に使うバスでときどき一緒になったりしたのですが、その子がバスを降りるときに手を振ったら、女の子の友だちが『気持ち悪い!』とざわついちゃいました(笑い)」と苦笑交じりに衝撃の告白をする。そして、「それからはバスで一緒になっても無視されてしまい、悲しかったです」と言って再び笑う。
パブリックイメージでは明るい印象の安田さんだが、暗かったと自己申告した学生時代と比べ、「今もあまり変わらないと思います」というが、「お酒の力を借りると明るくなるし、調子に乗っていろいろ言っちゃったりすることもあるから、反省の日々です」とまたも自虐的に語る。主演の染谷さんの印象は、「とても素晴らしいの一言」と評し、「瞬発力や持っているエネルギーを出したときの力はすごいし、スクリーンに映ったときの華や熱量は見ていて感動します」と称賛する。
劇中には超能力がいくつか出てくるが、どれかを使えるとしたら……と振ると、「その質問されると思いました(笑い)」とニヤリ。でも「いらないです」と言い切る。「丈夫な肝臓がほしいです」と真剣な表情で語り、笑いを誘った。映画は全国で公開中。
<プロフィル>
1973年12月8日生まれ、北海道出身。演劇ユニット「TEAM NACS」のメンバーで、98年に「水曜どうでしょう」に出演したことで注目を集める。NHK大河ドラマ「功名が辻」やNHK連続テレビ小説「瞳」、「劇場版SPEC」シリーズ、「龍三と七人の子分たち」(2015年)など幅広い作品に出演する個性派俳優として活躍。16年1月には主演映画「俳優 亀岡拓次」の公開を控える。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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