注目映画紹介:「エベレスト 3D」 険しさと美しさに圧倒される実話を基にした山岳サバイバル映画

「エベレスト 3D」のワンシーン (C)Universal Pictures  
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「エベレスト 3D」のワンシーン (C)Universal Pictures  

 世界最高峰のエベレスト登頂に挑んだ人々の、生死を懸けた闘いを描く山岳映画「エベレスト 3D」(バルタザール・コルマウクル監督)が6日から公開される。1996年に起きた実話を基にしており、「ターミネーター:新起動/ジェニシス」(2015年)のジェイソン・クラークさんや、「ブッシュ」(08年)のジョシュ・ブローリンさん、「ナイトクローラー」(14年)のジェイク・ギレンホールさんらが出演している。数々の困難に見舞われながら、標高8848メートルの山頂を目指す登山家たちの様子を、息苦しさを覚えながら見守る一方、青空を背景にそびえたつエベレストの気高さに圧倒された。

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 96年3月30日、ニュージーランドで登山ガイド会社を営むロブ・ホール(クラークさん)は、ジャーナリストのジョン・クラカワー(マイケル・ケリーさん)、医師のベック・ウェザーズ(ブローリンさん)、郵便局員のダグ・ハンセン(ジョン・ホークスさん)、日本人で紅一点の難波康子(森尚子さん)ら8人の客を率い、エベレストの山頂を目指し、ネパールのカトマンズを出発する。約1カ月の入念な準備ののち、第4キャンプ(標高7951メートル)まで順調にやって来た一行だったが、頂上アタックを前に、参加者の体調不良や装備不良、さらに天候の悪化で行く手を阻まれてしまう、というストーリー。

 映像は圧巻の一言に尽きる。そして怖い。ツアーのほんの始まりに過ぎないつり橋を渡る場面で、すでにその高さに足がすくんだ。高度が増すごとに酸素は薄くなり、一行があえぎあえぎ登る姿に息苦しくなった。容赦なく吹き付けるブリザードには身も心も縮んだ。残念ながら、参加した客の中には犠牲者も出る。登山者の一人から「死にたくない」という言葉が漏れたときには心が痛んだ。そういった過酷かつ切羽詰まった状況を、ツアーを率いるロブと客の会話や、彼らの無事を祈る家族の姿を交えて描くことで、人間ドラマの側面も持つ山岳映画に仕上がった。防寒具に身を包んでいるため登場人物が判別しづらかったり、今、どの地点にいるのかが分かりづらかったりするものの、エベレストがいかに気高く、美しく、そして恐ろしいところであるかは直球で伝わってきた。試写室の小さめのスクリーンで観賞したが、大型スクリーンなら、その威圧感はひとしおだろう。ほかに、エミリー・ワトソンさん、キーラ・ナイトレイさんらも出演。6日からTOHOシネマズ日劇(東京都千代田区)ほか全国で公開。 (りんたいこ/フリーライター)

 <プロフィル>

 りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。

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