注目映画紹介:「クロスロード」 EXILE・黒木啓司初主演 一人の男が青年海外協力隊を通じ成長

映画「クロスロード」のワンシーン(C)2015「クロスロード」製作委員会
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映画「クロスロード」のワンシーン(C)2015「クロスロード」製作委員会

 ダンス&ボーカルグループ「EXILE」の黒木啓司さんの初主演映画「クロスロード」(すずきじゅんいち監督)が28日に公開される。青年海外協力隊を舞台にした映画で、同隊に参加した若者たちがその活動を通じて成長していく姿を描く。主人公で、ボランティア活動に懐疑的ながら秘めた熱い思いを持つ隊員・沢田樹を黒木さんが演じ、体より先に頭で考えてしまう隊員・羽村和也を俳優の渡辺大さんが演じる。また、世界を股にかけるモデルで女優のTAOさんが沢田と羽村の仲を取り持つ野村志穂役で日本映画に初出演している。

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 カメラマンの助手になったが目標が見つからない沢田樹(黒木さん)は、自分を変えようと青年海外協力隊に参加する。しかし、沢田はボランティア精神にあふれる羽村和也(渡辺さん)と衝突したり、規則を破るなど問題を起こしてしまう。羽村と助産師隊員の野村志穂(TAOさん)とともにフィリピンに派遣された沢田は観光省での仕事に不満を持つが、一方の羽村は田舎の村で失敗を重ねながらドジョウの養殖を進めていく。ある日、写真を撮るために訪れたバギオの街を訪れた沢田は、少年ノエルと姉のアンジェラ(アローディアさん)と出会い、過酷な現実を目の当たりにし無力さを感じたまま帰国する。8年後、沢田と羽村は東日本大震災後の東北で再会し……というストーリー。

 知っていそうで、詳細はあまり知られていない青年海外協力隊を扱った今作では、多岐にわたる活動内容や訓練所の様子、派遣先での生活などが見られるのが興味深い。沢田のようにカメラマンとしての技術を教えに行くといった活動もあるのだと知り驚かされる。“ボランティアは偽善”と考える沢田が主人公のため、観客はボランティア活動の意義や難しさなどを次第に実感していく沢田と同じ目線で体感でき、フィクションの映画でありながらもドキュメンタリー的な要素を随所に漂わせてリアリティーを出した。協力隊やボランティアがテーマとはなっているが社会派というわけでもなく、物語の中心にあるのは目標が見えないなど悩みや葛藤を抱える若者たちの姿。“青春グラフィティー”を見ているかのような切なさと爽快感を味わえる。映画としての派手さこそないが、静かな感動と深い余韻を感じさせた。28日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

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