映画「エデンの東」(1954年)や「理由なき反抗」(55年)などで知られ、1955年、24歳の若さでこの世を去った伝説のスター、ジェームズ・ディーンと野心あふれる若手写真家デニス・ストックの交流を描いた「ディーン、君がいた瞬間(とき)」(アントン・コービン監督)が19日から公開されている。デニスを演じたロバート・パティンソンさんに電話で話を聞いた。
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――デニス・ストックはジェームズ・ディーンに出会う前、写真家としての自信が持てず、また、離婚した妻と幼い息子との関係もうまくいっていない不安定な状況にありました。彼のどのような部分に魅力を感じ、役を演じようと思ったのでしょう。
この役を演じたとき、僕は26歳だったけど、この年齢で悪い父親役を探すのは難しいんだ。だから、観客に共感してもらえないような嫌なヤツを、どうにかして観客に共感してもらう、あるいは自分も共感できる何かを見つけることは、役者としてすごく面白いと思ったし、それがデニスのような役を演じる上で魅力的だと感じた。それに彼は、そんなに悪い人じゃなかったと思う。そもそも、人間誰だって、100%の人から悪くいわれる人はいない。誰かしらその人のことを愛している人がいるものだ。だから、その“差”がなぜ生まれるかを追求するのは面白いと思ったんだ。
――あなたとデニス・ストックの間に共通する部分はありますか。
興味深いことに、デニスという人は、「自分は本当はすごい人間なんだ」と信じている一方で、それをどう表現していいのか分かっていないんだ。世間に認めてもらえないことに対してすごくストレスを感じていて、自分の力を証明しなければいけないと常に思いながら生きている。それは大変なことだったと思う。それから、映画にも出てくるけれど、デニスは、子供や奥さんのことなど金銭的な面で現実的なプレッシャーも抱えている。そんな中で、「自分は正しい道を選んでいるんだ」と自分に言い聞かせようとしている。そういうところは共感できたね。
――ジェームズが、おいと遊ぶ場面が印象に残っているそうですが、それ以外に印象に残るシーンはありますか。
ひどい場面でもあるんだけど、デニスが自分の息子に向かって嘔吐してしまうシーンかな(笑い)。脚本を見たとき、これはひどいと思ったけれど(笑い)、ある意味、面白くもあって、自分にとっては思い出深い、お気に入りのシーンになったよ。
――列車でジェームズと、彼の故郷インディアナに向かう際、ジェームズが亡き母の話をしながら涙を流す場面も印象的でした。
あのシーンは、2人の関係の中でもすごく面白いと感じた瞬間だった。自分の人生の中に、突然ある人が現れて、そのときにいろんな話をしてくれたことが、自分にとって重要な瞬間になり、その後の自分の人生に影響を与えるということがあると思う。ジェームズとデニスが旅をしたあと、彼らは頻繁に会っていたわけではなく、そこまで仲よしでもなかったと思う。だけれども、映画で描かれているあの2週間だけは、知らない者同士が一緒に過ごす、パーフェクトなパートナーにお互いがなっていた。その最初の瞬間ということで、とても面白いと感じたんだ。
――今作で描かれているジェームズ・ディーンは、自由に生きるあまり、周囲の映画人たちと衝突したり、密着取材を持ち掛けるデニスに商業的な匂いを感じて警戒心を抱いたりします。そういったディーンの素顔は、あなたにはどう映りましたか。
現代の俳優は、あまり自分でコマーシャルはせず、自分がアーティストだということを見せようとしていると思う。そういう部分では、僕も彼に共感できる。でも、映画を作るということはすごくお金がかかることだし、役をもらったなら、その作品がある程度ヒットしないと困る。そういう面からすると、コマーシャル的なことも必要なわけで、商業的な面とアーティストの感性がぶつかるところでバランスをとることは大切だと思う。僕が幸運だったのは、やりたくないことを強制的にやらされることはなかったこと。例えば、この映画の中で、ジェームズは「ビキニ・コンペの審査員をやれ」とかいわれていたけど(笑い)、そういうことは僕にはなかったから、ラッキーだと思っているよ。
――アントン・コービン監督はあなたに対して、「いろんな作品に出演することで、役者としての才能を証明しなければならないと思っているように見える」、また「スクリーンでの魅力とは裏腹に、内にはある種の苦悶みたいなものを抱えていて、それが当時のデニス・ストックが持っていたものと同じだと思った」と話されていました。
僕の人生は、かなり変わっている。というか、普通じゃないと思う。予期していない出会いの連続だよ。激しい人生を選んだわけじゃないけれど、そういうふうになってしまったわけで、そういう人生を送っていると、奇妙なエネルギーみたいなものを感じるんだ。例えていうなら、ボートに乗って港を出た瞬間、大きな嵐に遭って、その嵐に翻弄(ほんろう)されながら、ボートが沈まないようバランスを取っている感じかな。僕は、自分が選んだ道の中で、自分自身のパーソナリティーが何なのかを探そうとしているんだと思う。いろんな役を選んでいるのは、確かにそういった面があるからかもしれない。それを苦悶といってしまえばそうかもしれないね。
――今後も、犯罪映画「GOOD TIME」(ジョシュア&ベニー・サフディ監督)や、伝記映画「THE LOST CITY OF Z」(ジェームズ・グレイ監督)など、いろんな作品が控えています。
「GOOD TIME」には、すごくワクワクしている。今までとはまったく違う役だし、監督もすごく才能がある人で、まったく違う映画作りのプロセスになると思う。恐らく今まで仕事してきた中でも、ものすごくクリエーティブな人たちで、個人的にすごくつながりを感じるから、自分にとってもとても意義ある仕事になると思っている。来年は、本当にいろんな役をやるけれど、極端な役が多いんだ。でも、それができることをとてもラッキーだと思っている。これからも、そういったまったく違う役をやり続けていけたらいいと思っているよ。
――ちなみに、先ほどの監督のコメントを受けて、今回カメラマンとして出演していたコービン監督の演技を“プロ”目線で評価してください。
エクセレントだよ!(笑い) あのシーンは、ほかのシーンよりずっとテイク数が多かったんだ(笑い)。
――手元の資料では、完成した作品を、まだご覧になっていないとありましたが……。
奇妙に聞こえるかもしれないけど、自分が出演した映画は3年ぐらい見ていないんだ。いや、数本見たかな。でもまあ、見ないことの方が多いんだ。というのも、見て好きだったら、そこから好きな要素を取り出して、そのあとの仕事につなげることができるけれど、好きじゃなかったら、すごく後悔していろいろ考えてしまうからね。だったら見ない方がいいかなと思っているんだ(笑い)。
――「トワイライト」シリーズも見ていないのですか?
プレミアのとき半分まで見たんだけど、パニックと不安でそこから見ることができなくなってしまったんだ。結局、最後まで見たのは、作られてから4年後だったよ(笑い)。
<プロフィル>
1986年生まれ、英ロンドン出身。2004年、テレビ映画「ニーベルングの指輪」で俳優デビュー。「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」(05年)のセドリック・ディゴリー役で注目される。「トワイライト」シリーズ(08~12年)のヒロインの相手役で一躍スターダムに。ほかの出演作に「リメンバー・ミー」(10年)、「恋人たちのパレード」(11年)、「コズモポリス」(12年)、「マップ・トゥ・ザ・スターズ」(14年)などがある。
(文/りんたいこ)
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