テレビ質問状:「国際共同制作プロジェクト 格闘ゲームに生きる」 プロゲーマーたちの人間ドラマ

「国際共同制作プロジェクト 格闘ゲームに生きる」のワンシーン
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「国際共同制作プロジェクト 格闘ゲームに生きる」のワンシーン

 WOWOWは毎週土曜に「WOWOWオリジナルドキュメンタリー」枠として、「ノンフィクションW」と「国際共同制作プロジェクト」の2番組を両輪に、国内外のさまざまなテーマを扱ったオリジナルのドキュメンタリー番組を放送している。5月14日午後1時からWOWOWプライムで放送される「国際共同制作プロジェクト 格闘ゲームに生きる」の番組プロデューサーを務めるWOWOW制作局制作部プロデューサーの古谷秀樹さんに、番組の魅力を聞いた。

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 --番組の概要と魅力は?

 世界中で人気が拡大する“e‐Sports”(ビデオゲームによる対戦競技)を題材に、人気対戦格闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズで活躍する4カ国5人のプロゲーマーに迫ったドキュメンタリーです。日本ではまだまだe‐Sportsの認知度は低いですが、プロのゲーマーたちは大手飲料メーカーなどからスポンサードを受け、プロテニス選手のように世界中の大会を転戦して賞金を稼ぎます。しかし世間一般では、まだまだプロゲーマーの社会的地位が高いとはいえません。将来への不安や葛藤を抱えながらも“プロゲーマー”という新たな職業を選び、闘い続ける彼らの1年に密着しました。

 --今回のテーマを取り上げたきっかけと理由は?

 制作会社の東京ビデオセンターさんから企画のご提案をいただいた際は、私もまだ“e‐Sports”という言葉すら知らない状態でした。しかし格闘ゲームに生きるプロゲーマーたちの存在を知った時、そこには新たな分野を切りひらこうとする情熱や輝きがあるのではないかと感じ、一緒に制作させていただくこととなりました。戦前、日本にプロ野球が誕生した時も、プロ野球選手の地位は決して高くなかったと聞いたことがあります。黎明(れいめい)期に生きる人々のドキュメンタリーだからこそ、時代を超えた普遍的なドラマがあるのではないかと思い、そこに可能性を見いだしました。

 また、本企画は当初から国際共同制作を実現させ、日本だけでなく世界中で展開することを目指して企画したものです。2014年の「Tokyo Docs」(国際ドキュメンタリー祭)で企画提案を行った際、世界中から集まったテレビプロデューサーから高い評価を得たことも、企画成立に向けた大きな一歩となりました。

 --制作中、一番に心がけたことは?

 あくまでプロゲーマーたちの人生を題材とした“人間ドラマ”として描くことに注力しました。e‐Sportsやプロゲーマーを新たな事象やトレンドとしてとらえるだけの情報ドキュメンタリーでは、2年後や3年後には作品の鮮度が落ちてしまいます。世界中の人々に、10年後も楽しんでもらえるようなドキュメンタリーとするため、あくまでも“人間ドラマ”を軸とした、ユニバーサルなドキュメンタリーを完成させたつもりです。

 --番組を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったエピソードは?

 今回の企画は海外でも放送されることが前提でしたので、いい意味で日本のテレビドキュメンタリーらしくないものを目指しました。撮影は映画と同じ1秒24コマのフォーマットのシネマカメラで行い、編集でもナレーションを一切排除し、登場人物たちのインタビューや現場の生の声だけでカットをつなぎました。尺も87分40秒と、テレビドキュメンタリーとしては非常識な長さです。

 その分、自分たちが蓄積してきたノウハウがなかなか通用せず、何をするにも試行錯誤でした。幸いにも優秀なスタッフの方々に巡り合え、納得のゆく作品に仕上がったと思います。しかし、通常のドキュメンタリーの10倍くらい労力がかかりました……。

 --番組の見どころを教えてください。

 このドキュメンタリーが描いたのは、プロゲーマーたちの“人間ドラマ”であり、彼らが懸命に日々を送る泥臭くも輝かしい姿です。格闘ゲームファンの皆様にとっては、普段知ることのできないプロゲーマーたちのプライベートや赤裸々な本音が聞け、新しい発見のあるドキュメンタリーかと思います。

 しかし、作品は格闘ゲームファンだけを対象としたものではありません。ゲームに興味がない視聴者の方々も、一つのことに情熱をささげる若者たちの、普遍的な人間ドラマをお楽しみください。もっと言えば、「いい年してゲームなんてけしからん!」「ビデオゲームがスポーツなの?」というアタマの固いオジさんたちにも、ぜひ見てもらいたいですね!

 WOWOW 制作局制作部 プロデューサー 古谷秀樹

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