向井理:「とと姉ちゃん」風来坊の叔父役 盟友の脚本で見せる新境地

「とと姉ちゃん」に出演する向井理さん=NHK提供
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「とと姉ちゃん」に出演する向井理さん=NHK提供

 NHK連続テレビ小説朝ドラ)「とと姉ちゃん」で、高畑充希さん演じるヒロイン・常子の叔父・小橋鉄郎役で出演している向井理さん。西島秀俊さんが演じた常子の父・竹蔵の弟である鉄郎は、いい加減な性格の風来坊で、ふらりと小橋家に現れ、トラブルも起こすが、ピンチを救うこともあるという映画「男はつらいよ」の主人公・寅さんのような人物だ。さわやかな向井さんのイメージとは異なる役どころだが、兄とも慕う西田征史さんが脚本を担当するとあって出演を熱望したという。「今まで役として出てなかった部分を書いてくれている」という鉄郎役を熱演し、新境地を開いた向井さんに、ドラマへの思いを聞いた。

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 ◇「寅さんのような“フーテン”」の鉄郎

 「とと姉ちゃん」は、生活総合誌「暮しの手帖」創業者の大橋鎮子の軌跡をモチーフとしたドラマ。11歳で父を亡くしたことを境に家族の父代わりとなった常子が浜松から上京し、女性向けの雑誌を創刊。高度経済成長期を生きる女性に支持されていく……というストーリー。

 鉄郎は、兄・竹蔵とは正反対のいい加減な性格。サスペンダーに腹巻き、雪駄姿で、定職にも就かず、もうけ話を求めて渡り歩いているが、毎回夢破れて(事業に失敗し)小橋家に転がり込み、大事な米びつの米を一人でたいらげてしまったりと一家を引っかき回して去っていく“迷惑なおじさん”だ。向井さんも「かばんや扇子は毎回持っていて、寅さんのような“フーテン”で、適当が歩いているような人」というが、竹蔵亡き後、小橋家の唯一の男手として、母・君子と三姉妹を気にかけ、時に小橋家のピンチを救い、「よくも悪くも影響を与える、終戦後の闇市で常子が雑誌を編集するきっかけを作ることにもなってくる」という。

 ◇西田作品の常連 念願の朝ドラに“男泣き”

 「こういう役ってそんなにやったことがないので新鮮ですし、いてもいなくていい人なのかもしれないんでしょうけれど、明るい役なので気軽にやれている」と笑顔で語る向井さんは、映画「ガチ☆ボーイ」(2008年)で、脚本を担当し、自らも俳優として出演した西田さんと共演、寝食を共にし、朝ドラへの夢を語ったという。その後も、西田さんが脚本のNHKドラマ「ママさんバレーでつかまえて」では主演の黒木瞳さんの年の離れた夫として出演。西田さんが原作、脚本、監督を務めた「小野寺の弟・小野寺の姉」では、舞台版、映画版ともに主演し、プライベートでも杯を酌み交わす「兄のような存在」という。4月8日に放送された「あさイチ」では、「とと姉ちゃん」のタイトルバックに西田さんの名前を見て、「すごくうれしくて……」と思わず男泣きし、「ちょっとでも出してもらえる役柄があったら」と出演を熱望したことを明かしている。

 西田さんの脚本は、「プライベートも知っているので、今まで役として出てなかった部分を書いてくれている」といい、俳優に合わせて脚本を書く「当て書き」の部分では、「僕のことをそういうふうに見ているんだなっていうのは何となく分かったので、ちょっと溝が深まりそうです」と冗談めかしたが、「西田さんが一人一人のキャラクターに愛情を持って、そのキャラクターを動かしながら書いているから、すごくやりやすいですね」と信頼を寄せる。

 特に笑いの部分の「細かさ」を挙げ、「本当にキャラクターに愛があるからだと思うんですが、その分、細かいですし、演じるのにあたって大事にしないといけない部分で、そこは僕がいる意味でもあるのかなって思っていますね」と“西田イズム”の体現者として思いを明かす。鉄郎は「おちゃらけ担当というか、ボケとツッコミでいうならばボケ」といい、「テンポの部分で、ボケ担当である“こちら側”が芝居を動かしていかなくてはいけない。せりふをワンブレスで言い切るとか。その口調がゆっくりした時には普段とは違う鉄郎が見えてきて、そうすると役に深みが増すのかなと思います」と工夫の一端を明かす。

 ◇西田イズムを体現 枠はみ出る演技を

 さらにテークごとに違った芝居をするなど試行錯誤を繰り返しているといい、「とらえどころのない、何でもありで『あの人ならやりそうだな』って思ってもらった方が、後でいかようにも変化できて、後々使い勝手がいい。どうにでも潰しが利くキャラクターをやるのにはいろいろなことをやっていた方がいいし、最初からわちゃわちゃと引っかき回していた方がハードルが下がる」と解説。「僕みたいな役柄は、型にはまったことをやっているとつまらなくなるので、なるべくそういう枠からはみ出たような演技をしたいし、普通の登場シーンは一切しないつもりです」とも演技への思いを語った。

 「このまま嫌なやつで終わるかもしれないけど、常子が雑誌を作ることに没頭していき、環境もどんどんと変わっていくっていう、そのきっかけを残して去っていくシーンは楽しみ。あまり僕のような役柄って評価されないんですけど、『それでもいいや』って思えるキャラクター。『またこいつ来たな、何かやらかすな』って思ってもらえたらいいですね」と笑顔を見せていた。

 「とと姉ちゃん」はNHK総合で月~土曜午前8時ほかで放送。全156回を予定。

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