俳優の中井貴一さんがワイドショーのキャスター役で主演し、大ヒットした「踊る大捜査線」シリーズの脚本などで知られる君塚良一監督が手がけた映画「グッドモーニングショー」が8日に公開された。中井さん演じる落ち目のキャスター・澄田真吾の災難だらけの1日をコミカルに描いた作品で、君塚監督は「日本におけるウディ・アレン」というイメージで、中井さんを想定して脚本を書き下ろしたという。中井さんと君塚監督に話を聞いた。
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中井さん演じる澄田は、朝の生放送情報番組「グッドモーニングショー」のメインキャスター。災難だらけの1日は、早朝から始まり、澄田と付き合っていると思い込んでいるサブキャスターの小川圭子(長澤まさみさん)から、生放送中に交際を発表しようと迫られる。出社すると、同期入社の番組プロデューサー石山聡(時任三郎さん)に、番組の打ち切りを告げられ、さらに放送が始まった直後に、東京都内で銃を持った男(濱田岳さん)の立てこもり事件が発生。なぜか犯人から指名されてしまい現場に向かうことになり……という展開だ。
これでもかと“災難”に見舞われる澄田を、中井さんが軽妙に、哀愁たっぷりに演じている。テレビの世界で名をはせ、近年、映画界でも活躍する君塚監督は、中井さんの出演が決まる前から、中井さんを想定して脚本を書き下ろした。そのイメージは「日本におけるウディ・アレン」だったという。
君塚監督は「『なぜ最近、テレビがこんなにいろいろ(悪く)言われてしまうんだろう』ということがテーマ。そのシンボルが主人公なんです。主人公は仕事場でも家庭でも大変で、困っている人。日本におけるウディ・アレンみたいな人として真っ先に浮かんだのが中井貴一さんでした」と明かし、「困った顔や、信念を持っているんだけど、逃げるべきところは逃げちゃおうという幅のある役をやっていただけるのは、中井さんしかいないと思った」と振り返る。
思わずクスっと笑ってしまう描写にあふれた作品だが、中井さんは「決してコメディーにしようとは思わなかった」と語る。「あるアナウンサーの最悪な1日(を描いた作品)だと思うんですけど、僕は『結果として、最高の1日になるように』と思って演じました。『必死で生きる』『必死で逃げる』『必死で困る』。それだけがテーマ。同期の人間に打ち切りを告げられるとか、会社員の人が見たら、『分かるなー。これテレビ局じゃなくてもあるな』っていうところが多々あると思います」と自信をのぞかせる。
中井さんは今回、初めてキャスターを演じ、情報番組への見方が変わったという。「これまで気楽に見ていて(番組でおいしいものを食べていると)いいなーとか思ってたけど、現場を見たら(映画やドラマの)撮影の方がいいなと思いました。見ていることと、やってみることに、こんなに大きな差があるんだということを痛感させられた」と苦笑いする。
役作りのため、情報番組やキャスターらの取材を自ら行った。番組中でのキャスターの振る舞いや、話し方よりも「心情や、感情の動線」を知ることが役に立った。
「(演じる上で)一番分からなかったのは、アナウンサーの心情。サラリーマンでありながら、表に出る商売で、電車に乗って通勤しなさいと言われて、でも世の中には人気ランキングがあって順位が付けられる。その気持ちや、テレビ局に着いて一番最初に何をして、何を考えるか。朝、新聞を開いたときにどこから見るか、衣装部屋に行ったら何を感じるのか、という感情の動線を知りたかったので、『こんなに聞かれてイヤだろうな』と思いながらも、細かく聞きました。『今は何も考えていませんでした』ということもありましたけど」と笑う。
君塚監督は今回、映画であえてテレビを取り上げるにあたり、「テレビのいろいろなものが詰まっていて面白い」と情報番組を舞台に設定した。そして「忘れていたんですけど……」と切り出し、「20年以上前に朝の情報番組の構成をしていたことがあって『グッドモーニングジャパン』っていうタイトルでした。プロデューサーから『刺激的に』と言われていて、本当に刺激的にやったら怒られて、3カ月ぐらいで打ち切りになっちゃった。そのときの『言ったらからやったのに……』という気持ちが(今回の映画に)出ているかもしれないですね」とおどけながら明かしていた。
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