女優の杏さんが映画に初主演した「オケ老人!」(細川徹監督)が全国で公開中だ。老人ばかりのアマチュアオーケストラ(アマオケ)に入団してしまった主人公がバイオリンをやろうと思っていたのに指揮までやらされる羽目になり……という作品で、杏さんはバイオリン演奏とオーケストラの指揮の両方に初挑戦した。笹野高史さん、左とん平さん、小松政夫さん、藤田弓子さん、石倉三郎さん、茅島成美さんら大ベテランの俳優たちに囲まれた撮影や女優の仕事、好きなファッションなどについて聞いた。
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映画は、荒木源さんの同名小説(小学館文庫)が原作。高校の数学教師の千鶴(杏さん)は学生時代に趣味でバイオリンを弾きオーケストラに所属していたが、引っ越しを機に地元の名門アマオケの演奏を聴いて感動し、また演奏してみたいと入団を決意。練習場に足を運ぶと、どうやら楽団の名前を間違えたようで、歴史と伝統はあるが今では年寄りばかりのへたくそなアマオケ「梅が岡交響楽団(梅響)」に入団してしまう。千鶴は梅響のメンバーのペースにすっかり翻弄(ほんろう)され、バイオリンのみならず指揮もやらされる羽目になり……というストーリー。
NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」などに主演した杏さんが、今作では意外にも映画初主演。だが、「今回の千鶴という役自体は主演とは思っていないんですね。客観的に見ると主人公、主役とかになるんですけれど、役自体はあまり(主人公と)意識していないし、いままでの作品でもこの作品でもそこまで(主演という)意識はないですね」と自然体で演じた。
大御所の俳優に囲まれた現場だった。「本当に可愛がっていただいたなと思います。また私自身、年代の違う人の話が聞けて、お孫さんの話を聞いたりとか、普段なかなか自分の世代の間では聞けない話ばかりだったのですごく楽しかったです」と現場を楽しんだ。
中でも一番驚いたのが「小松さんだったと思うんですけれど、東京オリンピックの話をしていたら、1964年の話だった(笑い)。しかも見た見ないの話でなくて、(開会式に)出た出ないの話をされていたので。テレビとかでよく見る聖火台のあの場所に、出ていたんだというのはびっくりしました。けたが違うなと思いました」とエピソードを披露する。
杏さんは2012年の山田太一さんが手がけたNHKのスペシャルドラマ「キルトの家」で山崎努さんや北村総一朗さんらベテラン俳優に囲まれた現場を経験。その際には「現場に看護師さんが常駐していた」というが、今回も「オールロケだったのでその場所、その場所で近くの病院を下調べしたってプロデューサーの方がおっしゃっていました」と体調に気遣いながら撮影は進められた。
そんな中でも「皆さん、元気すぎるくらい元気だったので、逆に自分が体調を崩したりしないようにしたいなというのはいつも思っていました。元気を吸い取られないように。本当に皆さん元気だったので……」とそのパワーに驚く。
劇中でベテラン俳優たちは自由奔放にやっているように見える。実際の撮影も「だいたいあんな感じ現場でした(笑い)。オフのときは切り換えて、みんな話さないとかではなくて、(劇中と同じような)あんな感じの現場だったというのは胸を張って言えることです」という。
「楽器の演奏シーンは、本番前はそれぞれの先生にマンツーマンでついて一生懸命練習するんですけれど、和気あいあいとしているシーンは邪魔だったらカメラの前を外れてそのまま移動してそこでしゃべっていて、撮影になるとそのまま(カメラの前に)移動してという感じでした」とカメラが回っていないところでも和やかな雰囲気だったという。
オールロケでそれぞれに控え室があるような場所ではなかったため、「井戸端会議じゃないですけれど、お茶場にみんなで集まってお茶とかお菓子を飲んだり食べたりしながらお話しするという感じでした」と現場の様子を明かす。
杏さんが演じた千鶴は、数学教師という役柄上、コンサバティブな服装をしている。千鶴のファッションについて、杏さんは「ある意味、やぼったいじゃないですけれど……。なので、着ていてすごく楽でした。スカートにしても膝下丈だったり、靴下を履いている感じとか、ストッキングにハイヒールではなかったので、すごく現場では楽ちんでした」と着心地がよかった。
ラストのコンサートで指揮を振る際に着たタキシードは、団員の男性のお下がりでツンツルテンという設定だった。「あれも本当に着心地がよかった。小松さん演じるトミーさんが昔使っていた燕尾服を仕立て直したという設定があって、男性のものをぶかぶかに着るのが面白いんじゃないかというので、ああいう(燕尾服という)きっちりした服だったんですけれど、すごく楽ちんでした。おなかもサスペンダーでつっているだけだったので。きちんとしたファッションがああいう場合は多いんですけれど、普通に座れたりしてとても過ごしやすかったです」と話す。
普段の杏さんのファッションは千鶴とは異なり、「もうちょっと色がない感じ。肌を見せるのはそんなに好きじゃないんですけれど、肌を見せないにしてもスカートで、色がカーキ色だったり、赤だったりというのが可愛いなと思って。私としては今、すごく好きなファッションです」と明かした。
次回は、杏さんの休みの日の過ごし方や生き方について聞く。
<プロフィル>
あん 1986年4月14日生まれ、東京都出身。2005年から海外のファッションショーで活躍。06年ニューズウィーク誌「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれる。07年から本格的に女優活動をスタートし、「名前をなくした女神」(11年、フジテレビ系)で連続ドラマ初主演を果たし、第36回エランドール新人賞を受賞。NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」(13年後期)のヒロインを務め、一躍注目を浴びる。主な出演作は、ドラマが「花咲舞が黙ってない」(14、15年、日本テレビ系)、「デート~恋とはどんなものかしら~」(15年、フジテレビ系)、映画は「おかえり、はやぶさ」「妖怪人間ベム」(ともに12年)、「プラチナデータ」「真夏の方程式」(ともに13年)、声優として劇場版アニメ「百日紅(さるすべり)~Miss HOKUSAI~」(15年)などに出演した。
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