アニメのリメーク:どうして受け入れられないのか 「おそ松さん」が受けた理由は…

「おそ松さん」のビジュアル (C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会
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「おそ松さん」のビジュアル (C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会

 話題を呼ぶ人気マンガやアニメの実写化と並んで、賛否両論の意見が飛び交うのが人気アニメのリメークだ。ともすれば実写化以上にオールドファンからの厳しい声がたたきつけられることもあるリメークに求められるものは何なのか。週に約100本(再放送含む)のアニメを視聴する“オタレント”の小新井涼さんが、これまでのリメーク作品を振り返りながら、独自の視点で分析する。

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 先月取り上げたマンガの実写化と同じく、何かと話題になりやすいのが「人気アニメのリメーク」です。

 マンガの実写化と違って、アニメをアニメでリメークするのだから、こちらは歓迎されるばかりかというと実はそうでもなく……。実写化と同様、比較される原作(この場合は“初代アニメ”になりますが)を持つがゆえに、拒否反応が起きることもあります。特にキャストを変更したり、映像をCG化したりといった分かりやすい変化には、どうしても「初代の方が……」という意見がつきまといます。

 一方、同じリメークでも「ぼのぼの」や「カリメロ」などのキッズ向け作品では、こういった声はあまりみられません。主な視聴者が新規層、つまり“今の”子供達に入れ替わるからでしょう。

 やっぱり比較されやすいのは、例えば「美少女戦士セーラームーン」や「カードキャプターさくら」のように、当時からのコアなファンが未だに多い作品です。これらのリメークは大きな話題を呼ぶ一方で、ファンの不安や反発も多いようです。

 もちろん、そんな批判をうまく回避し、新たな高評価を受ける作品もあります。最近だと「デジモンアドベンチャー tri.」や「夜ノヤッターマン」あたりがそうではないでしょうか。

 2作品に共通するポイントとしては、作中での時間経過も大きいと思います。

 成長後や子孫のキャラならば、見た目(キャラクターデザイン)や声(キャスト)が変化するのは当たり前です。初代アニメのイメージも、比較対象ではなく地続きの過去としてリメーク版と共存できます。

 年をとらないパートナーデジモンのキャストはそのままであったり、元祖ドロンジョ様がゲスト出演したりといった懐かしさのツボも押さえられていて、ファンの持つ初代のイメージとの溝を埋める仕掛けになっていました。

 では、かつてアニメ化されたものを、またいちから作り直すという“純粋なリメーク作品”はどうでしょう。初代アニメのイメージが強かった「HUNTER×HUNTER」や「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」も、やはり最初は批判意見が多数あがっていました。

 それでも、最終的にはリメーク版も高い評価を受けることになっていきました。その決め手は、「初代では映像化されなかったエピソード」です。

 当時の原作状況では描かれなかった続きの話は、コアなファンほど実は待望のアニメ化だったはず。ハンターでは「キメラ=アント編」以降、ハガレンでは原作ラストまでが描かれることが分かると、「どこまでやってくれるの?ここまで映像化されるの?」と、放送中から期待と注目が集まっていました。初代と比べた時のネガティブイメージ払拭の鍵は、初代アニメでは見られなかった要素にあるのかもしれません。

 そんなリメーク作品ですが、たとえ初代と比べられることで強い反発があったとしても、コアなファンが多い作品の方が話題性も高くリメークされやすいのが現状です。比較的広い層を対象とする実写映画と違い、ターゲットがピンポイントなアニメファンに限られるのですから人気作が優先されるのは当然でしょう。

 そんなリメーク作品の前提を覆した異色作が「おそ松さん」でした。

 リメーク化が発表された当時の反応としては、批判というより「え?今おそ松くん?」「どの層向け?」という戸惑いが多かったのを覚えています。

 しかしふたを開けてみれば、それまでコアなファン層が存在しなかったために「キャスト変更反対!」「成人した六つ子なんて見たくない!」といった強い反発もなく、新しい作品解釈や世界観はむしろ10~30代女性という新規のファン層を開拓していきました。そうして、コアなファンがいなくてもリメーク作品は成功するという貴重な前例となったのです。

 リメークアニメの真の面白さは「作品の新たな魅力を現代に“掘り起こす”」ことにあります。「おそ松さん」は、「おそ松くん」というフレキシブルな原作があったにせよ、無個性だった六つ子をキャラ立てしたことが予想外のブームを生みました。これぞリメークしたことによる、作品の魅力の再発見です。

 これまでのやり方では、リメーク作品にもある程度やり尽くした感が出てくるでしょう。しかし、ふと掘り起こしたものを磨いたらとんでもない宝石になった! 「おそ松さん」で味わったそんな驚きは、マンネリ化の回避にもなるはず。「おそ松さん」の成功例はまねしようと思ってもそうそうできるものではないとは思いますが、そんな隠された原石の発掘も期待したいところです。

 ◇プロフィル

 こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。アニメ好きのオタクなタレント「オタレント」として活動し、ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」やユーストリーム「あにみー」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)のアニメを見て、全番組の感想をブログに掲載する活動を約2年前から継続。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、社会学の観点からアニメについて考察、研究している。

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