竹中直人&玉山鉄二:異色のグルメドラマ「野武士のグルメ」の魅力を語り尽くす おいしい店探しの極意も

配信ドラマ「野武士のグルメ」について語った竹中直人さん(左)と玉山鉄二さん
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配信ドラマ「野武士のグルメ」について語った竹中直人さん(左)と玉山鉄二さん

 オリジナルドラマ「野武士のグルメ」が動画配信サービス「Netflixネットフリックス)」で配信中だ。今作は、「孤独のグルメ」などで知られる久住昌之さんが手がけたマンガが原作。定年退職したサラリーマンが、内なる野武士の力を借りて、周りを気にせず流されず、己の流儀で思うままに食べ歩く姿を描く。主人公の香住武を演じた竹中直人さんと、野武士役の玉山鉄二さんに話を聞いた。

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 ◇うまそうに食べることだけを目指した

 定年を迎えたばかりの還暦男が“独り飯”を楽しむという今作で、竹中さんは「うまそうに食べてた方が楽しいでしょうという思いがあるから、うまそうに食べることだけを目指していました」とグルメドラマならではの役作りを明かす。

 今作はグルメ作品だが、主人公・香住の分身として野武士が登場するという異色な“味付け”で注目されている。竹中さんは「香住の代わりに“理想像”として野武士が出てくるというのが、現場で『来た!』って感じで面白かった」といい、「それも堂々というよりさりげなく現れ、『うまい!』って掛け声が聞こえてくると、いつの間にかいるのがすごく面白い」とドラマの魅力を語る。

 一方、野武士を演じている玉山さんは、「グルメドラマだけど、(香住が)定年退職した後の一人旅みたいなもの」と分析し、「その中でいろんな人に出会ったり、いろんなお客さんを見て不満が出てきたり、願望が出てきたりと決してドラマチックじゃないけれど、その人の哀愁であったり、自分も『そうなんだよな。あの店に行ったとき似たようなことがあったな』ってうなずけることだったりが敷き詰められたストーリーになっています。そこがクスッと笑える」と作品の持ち味を説明する。

 ◇2人ともおいしい店探しにこだわり

 香住はさまざまな店に立ち寄るが、竹中さんと玉山さんも日ごろからよく飲食店探しをしているという。竹中さんは「直感で(入る店を)探すのが好きで、ロケや舞台で地方に行ったときは、街をブラブラ散歩しながら『あっち行ってみよう』『第1候補はここで第2候補は……』って決めていくのが、めちゃくちゃ楽しいです」と笑顔を浮かべる。最終的な決め手として「店のたたずまい。もしくは窓がちょっと開いていて(店内が)見えたら、お客さんが適度で静かなところを選びます。、“裏通り”っていうのが決め手にたどり着く第1段階かな」と明かす。

 聞いていた玉山さんも「僕もどちらかというと小じゃれたお店はあまり得意じゃない」と同意し、「僕はネットなども使って結構調べる方で、肩ひじ張っていなくて、ちょっと煙たくて……みたいなところが好き」と言い、「口コミまでちゃんと見て、オススメや店の雰囲気なども考慮しつつ、行く店を決めます」と細部にまでこだわりを見せる。

 実際に訪れてみてよかったかどうかという“勝率”を聞くと、玉山さんは「そこに関してはすごく自信を持っています」と力を込め、「点数だけでは絶対に行かず、口コミや写真も見たりするので、友だちから『今どこどこにいるんだけどオススメない?』みたいな(ご意見伺いの)連絡がよく来ます(笑い)」と頼りにされているエピソードを明かす。

 ◇香住が訪れる店舗スタッフの中には実際の女将さんも!?

 撮影で食べた料理の中で印象に残っているものについて、「調布の “まずいラーメン屋”という設定の中華屋さんで食べたラーメンが本当にまずかったので、一番印象に残っているかもしれません」と竹中さんは苦笑い。

 どれぐらいおいしくなかったと聞くと、「ドラマ用にまずく作ってあるんですけれど、食べたらおいしいんじゃないかと思ったんですが、本当にまずかった(笑い)」と打ち明け、「(撮影協力してくれた店は)実際はおいしいお店なのですが、いくら撮影だからといっても、この年になってまずいものは食べたくない」と笑顔で怒りながら振り返る。

 玉山さんは「お父さんと息子さんがやっておられるこぢんまりとした焼き鳥屋さんのタレが、創業以来ずっと注ぎ足し注ぎ足しで使っているもので、べらぼうにうまくて衝撃的でした」と秘伝の味を絶賛すると、竹中さんが「あったあった! 2日間で撮ったんだけど、朝7時くらいから撮影が始まって24時(深夜0時)までやっていて、朝のうちはご主人も奥さんも機嫌がよかったんだけど、夜になったらさすがの長時間の撮影にお疲れの様子でした」と申し訳なさそうに話す。

 ほかにも「朝のアジ」というエピソードでは、「女将さん役が本当に民宿の方だったので、その方が衣装を着て芝居をしているのが可愛かったです」と竹中さんは笑顔でたたえ、「自分の学生時代、吉祥寺(東京都武蔵野市)によく集まって飲んでいたので、吉祥寺でロケしたときは懐かしかったし、初めて行った御徒町(東京都台東区)も『街並みにこんなに昭和が残っているんだ』って感じ入り、一つ一つの回が印象に残っています」と実感を込める。

 玉山さんも「香住がデパートの屋上で昼間からビールを飲むか飲まないかを迷っている回があるんですけど、(自分が)子供の時に親父とデパートの屋上とかよく行って、小さなアトラクションがあったり、フライドポテトやたこ焼きが売っていたりした思い出がよみがえってきました」と懐かしそうに話す。そして「(父が仕事を)もう引退をしていて別に仕事があるわけでもないのに、昼間にビールを飲むか飲まないかで悩んでいる姿は可愛い」と笑った。ドラマはNetflixで配信中。

 <竹中直人さんのプロフィル>

 1956年3月20日生まれ、神奈川県出身。多摩美術大学卒業後、劇団「青年座」に入団。83年に「ザ・テレビ演芸」でグランドチャンピオンとなる。テレビ、映画、舞台などで幅広く活躍。91年には初監督作「無能の人」でベネチア国際映画祭国際批評家連盟賞、日本アカデミー賞など数多くの賞を受賞し、その後も7作品の監督を務める。「Shall we ダンス?」(96年)や「仮面ライダー×仮面ライダー ゴースト&ドライブ 超MOVIE大戦ジェネシス」(2015年)など、出演作多数。17年4月期のドラマ「警視庁捜査一課9係 season12」(テレビ朝日系)に法医学者・黛優之介役で出演中。

 <玉山鉄二さんのプロフィル>

 1980年4月7日生まれ、京都府出身。99年にドラマ「ナオミ」(フジテレビ系)で俳優デビュー。2005年公開の「逆境ナイン」で映画初主演を果たす。09年には映画「ハゲタカ」で日本アカデミー賞助演男優賞を受賞。13年にはNHK大河ドラマ「八重の桜」に出演、14年にはNHK連続テレビ小説「マッサン」で主人公を好演した。クールな二枚目からコミカルな役まで、幅広い役どころをこなす。17年4月から放送中の東海テレビとWOWOWの共同製作ドラマ「犯罪症候群」(東海テレビ・フジテレビ系)に武藤隆役で主演している。

 (取材・文・撮影:遠藤政樹)

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