お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さんの2015年の芥川賞受賞作「火花」に続く、2作目の小説「劇場」(新潮社)の単行本が11日、初版30万部で出版され、3万部の重版となった。「劇場」は、又吉さんにとって初の恋愛小説。主人公は売れない劇作家の永田で、女優を目指して上京した大学生の沙希と運命的に出会い、やがて恋人となった沙希の部屋で同棲(どうせい)を始める。永田は自らの夢とうまくいかない現実とのはざまで葛藤しつつ、沙希というかけがえのない人を思う気持ちが交錯する。又吉さんに芸人と作家のバランス、3作目の構想やニューヨークに武者修行のため旅立った相方の綾部祐二さんへの思いなどを聞いた。
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――前作はドラマ化、そして今度、映画化されますが、小説を書くときに映像化はイメージしますか。
いえ、小説を書くときにそういうことは一切考えないですね。今のところ、「劇場」も映像化したいという話はないですし、いろんな方に読んでいただいて、まず本を楽しんでもらいたいということ以外はまだ考えていないです。
――映像化の際は自分は関わらない?
はい、おまかせで。(自分が演じることも)僕はお芝居にモチベーションが一切ないので、僕がやるということはないです。キャスティングにも僕は口出しはしないですね。
――「劇場」はすごく映像が浮かぶ小説だなと感じました。やっぱりこれも映像化されるのかなと読みながら感じたんですが。
20歳くらいから文章を書き始めて、エッセーなども書いていく中でそれはよくいろんな人から言ってもらえるというか、「お前の文章を読んでいると映像が頭に思い浮かぶわ」ということはよく言ってもらえるので、そこはもしかしたら数少ない僕の文章を書く上での特性というか、大事にせなあかん部分なのかもしれないですね。
――ちなみに、次の小説の構想は膨らんでいるんですか?
いや、まだそういう段階ではないですね。
――次はどのくらい先になりそう?
できたら2年以内には書きたいなと思っているんですけれど、とりあえずやるべきことが山積みというか。相方が海外に拠点を移すということで劇場に出るためのコントを今作っていたり、秋の初めくらいに僕が作ったコントとかそういう作品を、割と今までよりは大きめの(キャパシティーの)ところで公演をやるという予定はあったり、そのほかにも相方がいない間一人で活動しないとだめなんで、テレビをやりながらなんですけれど、その基盤になるようなものをいくつか始めていかなきゃいけないので、年内はたぶん小説に着手するというのは難しいのかなと。フルパワーで働いても多分、今いった内容をなんとか成立させられるかなという感じなので、来年くらいからそういうのが軌道に乗れば、具体的に考えていきたいなとは思っていますけれど。
――小説の執筆とコントなど芸人さんとしてのお仕事は、期間で割り切っている感じですか。自分の中でのバランスは?
特別、小説にスケジュールを押さえられているわけでもないので、芸人としてのスケジュールは今月でいうと月に1回しか休みがなくて、あとはずっとだいたい朝から晩まで働いているので、それ以外の部分で書くしかないので、夜書いて、他の時間は芸人の仕事して、次の日、もし昼から仕事やったら朝ちょっと書いて、合間にちょっと書くとかもありますけれど、基本的には芸人の仕事が全部終わって夜に書くという感じですね。
――作家としてこの期間はちょっと書かせてほしい、という日が出てくることは?
レギュラーの番組が土日とか週に2、3本はあるので、それ以外の劇場の出番も毎月入ってきて、まとまって、2日、3日……。2日はいけるかもしれないけれど、3日がかなり現実的に厳しいと思うので。でもまあ、前後に詰めて2日くらい開けてそこでまとめて書こうとかはあるかもしれないですけれど、それも、そんなに今までと大きく変わったいうことでなく、今までも割と休みのない中でやっていて。
もちろん、僕は全部、仕事は吉本を通しているので、エッセーの執筆依頼も吉本から来たものを受けているから、「今、これだけたまっていて、仕事これだとどうしても書く時間がないのでどこかで1日空けてください」と言って、それも「じゃあ木曜日空けます」と言って木曜日の仕事が消滅するわけじゃなくて、水曜日に一個増えて、金曜日に一個増えてと。負担は大きくなるんですけれど、1日増やすために、結局詰めて作業をするという。そういうのは今までもあったんで、それが今後ももうちょっと計画的にできたらいいかもしれないですけれど。具体的にそれで何かが変わるということはないですね。
――相方の綾部祐二さんが米ニューヨークに武者修行に行くことになって、芸人としての仕事は逆に増えた?
今まで2人でできていたネタとかが、なくなるわけですから、でも劇場の出番はなくならへんとなると、そこで新たに一人でできるものだとか、誰かとユニットで組んでできるソフトを作らんとだめですから。そういうのと同時に、ピースで今までトークライブをやっていたものが、月1回で僕一人でライブをやっているんですけれど。ピースでまあまあキャパが大きなところでやっていたんですけれど、それに代わるものとかネタとかをどこでやるんかというのも自分で新たに作らないとだめなので。
相方も向こうで新しく活動すると思うんですけれど、僕もやっぱり新しく始めないとだめな立ち上げの期間になるので、今は芸人の仕事以外をやるのは現実的には難しいですね。まあ、書評を書いたり、対談に向けての課題の読書だったりというのはあるので、あといくつかの連載などは夜にやっていますけれど。
――そういう状況も踏まえて、相方の綾部さんへの思いを聞かせてください。
コントを作るのは大好きですし、ライブやるのも大好きです。だから楽しみな部分ももちろんありますね。何より相方がそうやってNYで勝負するって決断したのはすごく勇気あることやなと思うので応援したいですし。その分、自分もしっかりせなな、という刺激になっている部分もあるので、しっかり準備して自分も勝負したいなと思っています。
――綾部さんがニューヨークに行ったことは執筆にもいい影響がある?
今のところはないんですけれども、今後出てくると思います。
*……著作「劇場」は四六判208ページで1300円(税抜き)。
<プロフィル>
またよし・なおき 1980年6月2日、大阪府寝屋川市生まれ。幼少期から太宰治や芥川龍之介などの小説に親しんできた。99年、吉本興業のNSC東京校に入学。2003年、同期の綾部祐二さんと「ピース」を結成。15年7月、自身初の長編小説「火花」で第153回芥川賞を受賞。「火花」は売れない芸人の徳永が天才肌の先輩芸人・神谷と電撃的に出会い、弟子入りを申し込み、やがて頻繁に会うようになるが……という物語で、累計283万部(単行本253万部、文庫30万部)の大ベストセラーとなった。16年に動画配信サービス「Netflix」でドラマ化。板尾創路監督がメガホンをとり、菅田将暉さんと桐谷健太さんのダブル主演で映画化され、今年11月に公開予定。
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