福田雄一:「銀魂」監督が語る 「王道の笑い」への真摯な思いとこだわり

「ヒットメーカー・オブ・ザ・イヤー 2017」を受賞した福田雄一監督
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「ヒットメーカー・オブ・ザ・イヤー 2017」を受賞した福田雄一監督

 「勇者ヨシヒコ」シリーズや映画「銀魂」などで知られる福田雄一監督が、流行情報誌「日経エンタテインメント!」(日経BP社)が主催する「ヒットメーカー・オブ・ザ・イヤー 2017」に選出され、東京都内で3日に行われた表彰式に出席。「ヒットメーカー・オブ・ザ・イヤー」は、その年に新しいヒットを生んだクリエーターに贈られる賞で、昨年は劇場版アニメ「君の名は。」の新海誠監督が受賞。名実とも“今年のエンタメ界の顔”となった福田監督は壇上で「王道の笑い」への真摯(しんし)な思いやこだわりを語った。

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 ◇原点は「ドリフターズ」? 誰が見ても分かるような笑いを作ろうと…

 福田監督は今回、興行収入38億4000万円と大ヒットを記録している「銀魂」、興行収入15億円が見込まれている「斉木楠雄のΨ難(さいきくすおのサイなん)」というマンガ実写映画2作品に加え、「銀魂」と同じく小栗旬さんを主演に迎えたミュージカル「ヤングフランケンシュタイン」、堤真一さん主演の連続ドラマ「スーパーサラリーマン左江内氏」(日本テレビ系)などの演出を手掛けたことが高く評価された。

 これまで「勇者ヨシヒコ」シリーズや映画「HK/変態仮面アブノーマル・クライシス」のイメージの強かった福田監督だが、その原点は「ドリフターズとか、テレビの王道の笑い」。「よく『サブカル』って言われるんですけど、僕はずっと『王道』と言い続けてきて……。ずっとドリフターズとか、テレビの王道の笑いに憧れ続けてきたので老若男女、誰が見ても分かるような笑い、映像を作ろうという意志は以前からあったし、それが『銀魂』『斉木楠雄のΨ難』でうまく表現できて、幸いにして多くの人に伝わったことはうれしかった」と笑う。

 ◇橋本環奈“鼻ほじ”演出は事細かく 現場では笑いに対してシビアにジャッジ

 一方でこの日は、福田監督の笑いに対するこだわりや撮影現場でのシビアなジャッジに関するエピソードも披露された。「銀魂」ではヒロイン役の橋本環奈さんの“鼻ほじ”シーンが話題を呼んだが、演出は本当に事細かく、橋本さんが鼻の穴にどこまで指を入れるのか、そのときの目や口、顔全体の表情にまで及んだという。

 さらに福田監督によると、撮影現場でキャスト陣はとにかく監督を笑わせることに必死になるといい、「僕が笑ってないと不安になるらしいです」とにやり。「監督だったら、ちょっとつまんなくても笑ってあげるべきだと思うんですけど、僕は面白くないときは全然、笑わない。『はあー、一回見たことあるやつだな』って(笑い)。ムロ(ツヨシ)君も(佐藤)二朗さんも全作品って言ってもいいくらいご一緒しているから、彼らは地獄のようなもの。だから僕も彼らとやるときは『今回の福田の台本は面白くないな』って思われたくないっていう緊張感があるんです」と明かす。

 ◇ギャグ映画が受け入れてもらえない現状と願い  

 アクションあり、シリアスありの「銀魂」が福田監督による会心の王道エンターテインメントなら、「斉木楠雄のΨ難」は完全なギャグ映画で、同じマンガ実写化でも作風は大きく異なる。特に「斉木楠雄のΨ難」は「日本ではなかなか受け入れてもらえなかったジャンルで、これは一つの挑戦だと思っていた」と振り返る福田監督。「いわゆるB級、C級としてギャグ映画を作るっていうことは可能だと思うんですけど、山崎賢人君という今をときめくトップを走っている役者さんを使ってギャグ映画を作るってことが、挑戦でもあった」としみじみ。

 さらに、福田監督は「いつも思うことですけど、『これはナシ』という考え方を、『これはこれでアリ』とするだけで、エンターテインメントというものは広がっていく。たとえ自分の範疇(はんちゅう)にないことでも『これは、こういうものであってもいいんじゃないか』って、ちょっとでも思ってくれるだけで、いろいろなものが変わっていくので、ちょっとでもそうなってくれたらうれしい」と願いを語っていた。

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