女優の米倉涼子さん主演の連続ドラマ「ドクターX ～外科医・大門未知子～」（テレビ朝日系、木曜午後9時）。第5シーズンとなった今回も、平均視聴率20％超えを連発するなど絶好調だ。天才的な手術の腕を武器に、数々の“敵”と渡り合い、「私、失敗しないので」の決めぜりふとともに視聴者の支持を集めてきた主人公の大門未知子。あの特異なキャラクターはどうやって誕生したのか。大人気シリーズの“仕掛け人”である同局の内山聖子ゼネラルプロデューサーに話を聞いた。

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　◇「米倉涼子に白衣を着せたい」

　「ドクターX」は、天才的な腕を持ちながら組織に属さず、フリーランスとして病院を渡り歩く天才外科医・大門未知子（米倉さん）を通して医療現場を描いた人気ドラマ。「いたしません」「私、失敗しないので」といった未知子の名ぜりふや、権威主義的な大学病院を“一匹オオカミ”の未知子が手術の腕だけを頼りに堂々とかっ歩していく痛快な展開などが受け、大人気シリーズとなった。

　そもそも、ドクターXはどのように誕生したのか。当時、すでに米倉さんとタッグを組んだドラマを手がけていた内山さんの「米倉さんに白衣を着てほしい」という考えがスタートだったが、「私の中で“職業としての医者”が米倉さんにパチンとはまっていなくて」と一度は企画そのものを諦めたという。

　それから数年は別企画を進めていたが、「私もサラリーマン歴が長くなってきたこともあり、医者を職人として考えて、『組織の中にしがらみのない職人が入ってきて、組織が大切にしている患者とか縦社会を奪っていくと楽しいな』と考えるようになった」という。

　また、内山さんはそれまでにも「必殺仕事人」や「家政婦は見た！」、どちらも「社会的な地位や立場があまり高くないプロフェッショナルが派遣されてきて、そこで活躍する」という作品を手がけてきたこともあり、「組織の中にいると、自分の代わりはたくさんいるという考えがあると思いますが、余人をもって代えられない人を主人公にしたい」と考えるようになった。

　そこで浮かんできたのが「組織に属さず、良い仕事をして、仕事以外のことはしない人」という設定だった。それを脚本家の中園ミホさんに話したところ、ちょうど他局で医師もののドラマを書いているタイミングで、「医者にはたくさん友達がいるから、取材はできる」「そういう医者だったら米倉さんに良いかもね」という答えを得ることができた。

　◇「失敗しない」は金メダリストがモデル？

　ただ、そのタイミングでは未知子像は完全には出来上がっていなかった。「米倉さんとは一緒に仕事をしていたので、キャラクターは捉えていました。ただ、フリーの医者をどうやって作っていくのか、どういう医者に私たちが会いたいかなど、（中園さんと）ずいぶん話し合いました」と振り返る。

　「私、失敗しないので」というせりふができたのは、「中園さんと（最初に）ドラマ制作の話をしてからずいぶん後のこと」だった。「『どんなに無愛想でも、失敗しない医者がいいよね』と話していたのですが、中園さんがロンドン五輪で金メダルを取った柔道の松本薫さんの試合をご覧になっていて、翌朝『できたかもしれない』と連絡がありました。『相手に取られていたらどうしましたか』と取材された時に、松本さんが『私、ミスしないので』と答えたのを見て、『これだ！』と思ったそうです」と明かす。

　“失敗しない医者”というキャラクターが決まったことで、企画は一気に進んだといい、「敵対する周りの権力者や嫉妬する人たちと、彼女がどうやって闘っていくのか」を決めていった。放送がスタートすると痛快な展開などが受けて大ヒットし、シーズン5まで続く人気シリーズになったが、「こんなに続くとは思っていなくて、最初は勢いだけなところもありましたね（笑い）」と振り返る。

　そんな“失敗しない医者”大門未知子だが、今シーズンも草刈正雄さん演じる日本医師倶楽部の会長・内神田景信ら新たな“敵”と渡り合っている。7日に放送される第9話の予告映像でも、「フリーランスは排除します！」と声を張る内神田に対して、「患者の将来を潰していいと思ってんの！」と反論しているが、ラストでは目を見開いてあおむけに倒れる衝撃的な姿も映されていた。果たして未知子はどうなってしまうのか、最終回に向けてこれまで以上に目が離せない展開が続きそうだ。