小野賢章&増田俊樹:映画「ダンケルク」日本語吹き替え版の収録秘話 台本を受け取り「びっくりした」 

映画「ダンケルク」のブルーレイディスク&DVD日本語吹き替え版でトミー役の声を務めた小野賢章さん(左)とアレックス役の増田俊樹さん
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映画「ダンケルク」のブルーレイディスク&DVD日本語吹き替え版でトミー役の声を務めた小野賢章さん(左)とアレックス役の増田俊樹さん

 声優の小野賢章さんと増田俊樹さんが日本語吹き替えを担当した映画「ダンケルク」(クリストファー・ノーラン監督)のブルーレイディスク(BD)&DVDが20日から販売されている。実話を基に、第二次世界大戦中に海の町・ダンケルクに取り残された英仏軍40万人の救出作戦を描いた作品。若き兵士を担当した小野さんと増田さんはどのように演じたのか、収録秘話を聞いた。

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 ◇ノーラン監督作と知らず「驚きました」

 吹き替え版では、小野さんはフィオン・ホワイトヘッドさんが演じた主人公の若き兵士トミーの声を担当。増田さんは英国の人気男性5人組ポップグループ「ワン・ダイレクション」のハリー・スタイルズさんが演じた兵士アレックスの声を担当した。

 台本を手にした時点では、2人ともノーラン監督の作品だとは知らなかったといい、増田さんは「現場に入ったら(映画の)冊子を見せられて、『全米が求める』とか書いてあって『うわっ』と。史実に基づいて作った作品だから、銀幕では流されない作品に多いジャンルだと思っていたんですよ。そうしたら、『ああ、そんなにすごい作品なんだな』と(笑い)。驚きました」と当時の心境を告白。

 「(その後)作品の情報がどんどん解禁されて、周りのみんなが『見に行く』とか言っていて、そういう話を聞いていると『ああ、みんなこの映画を知っているんだ。俺、出てるぞ』と……。少しずつ重圧がかかっていきましたね」と振り返る。

 登場人物のせりふが少ないことも作品の特徴。主人公のトミーでも、長くしゃべるシーンはわずかだ。小野さんと増田さんは「びっくりしました(笑い)」と声をそろえて台本を受け取ったときの感想を明かす。

 「台本に目を通す前に、収録時間のスケジュールが今までやってきた長尺の吹き替え版で押さえられていた時間の3分の1ぐらいしかないことを知って、『こんなんじゃ、録(と)れないよ!』って最初は思いました。でも全然、録れましたね」と笑う小野さん。増田さんは「自分たちがしゃべっていないシーンは極力飛ばすようになっているので、そう考えると短い時間でも録り切れる。言葉を介したコミュニケーションの少ない作品だったと思います」。

 せりふの少なさは、同時に戦争映画ならではのリアリティーでもある、と小野さんは見る。「それはそうだろうな、と。戦争のど真ん中にいて、映画だからといって、べらべらとしゃべらないよな、と。すごく納得できました」。増田さんも「エンターテインメントでありながら、エンターテインメントを主張しない、というか」と納得している。

 ◇芝居をしない難しさ アニメ作品との違いも

 ポスターには、「生き抜け」というキャッチコピーが書かれている。小野さんは「トミーは、生きたいという気持ちがすごく強い役。ただ、彼は結構冷静に見ている部分もあって、そのバランスは難しかった。生きて祖国に帰るんだ、というベースがあって、それをどこまで表現するのか、しないのか……そういう足し算、引き算は難しかったですね」と振り返る。

 絶望のふちに立たされた兵士たちを描いているため、演技面では「芝居をしないということも重要だった」と増田さんは話す。「(他の作品では)言葉がちゃんと聞こえていないとリテイクをもらったりすることが多いんですが、今作では言葉が少し甘くても『それはそうだよな』となる。あんな戦況下で、兵士たちが一言一言きれいにしゃべっているかというと……。そういうことを、吹き替えの僕らにも求めてくる。とても強い意志で作っている現場で、そこにどう応えていくか。難しい課題だな、と思いました」と明かす。

 普段はテレビアニメの声優としても活躍する2人。映画の吹き替えとなると原音のあることが演技に影響してくる、と小野さん。「(演技している)役者さんの声が入っていると、それでせりふのニュアンスが分かるのが、吹き替え。耳という道しるべがあるので、僕の場合はそれが影響してくる」と違いを語る。

 ◇この業界を生き抜きたい!

 2人の今後の野望は? 小野さんは「今年より楽しい1年にしたい」と笑う。「目標を立てるのが嫌で……。立てちゃって、その目標を超えたとき、また次の目標を探すのも面倒くさい。大きな目標を立てず、目の前にあるものに集中して、その結果、来年が今年より楽しくなればいいな、と思います」とも語る。

 増田さんは「この業界を“生き抜き”たいです!」と映画のコピーを絡めたコメント。「来年のうちはまだお仕事をさせていただけると思うんですけど、もう一歩、自分のやりたいことに素直に……。こういう芸術作品に向き合う時間や心の余裕ができるようになったらいいな、と思いますね」と笑顔で語った。

 <プロフィル>

 おの・けんしょう。1989年10月生まれ。福岡県出身。声優としては「ハリー・ポッター」シリーズの日本語吹き替え版でハリー・ポッターを担当。テレビアニメでも「黒子のバスケ」の黒子テツヤ役など多数出演。俳優としては映画「包帯クラブ」(2007年)、「DIVE!!」(08年)ほか、舞台「パッチギ!」(09年)、「テニスの王子様」(11年)などに出演している。

 ますだ・としき。1990年3月生まれ。広島県出身。声優としてテレビアニメ「サムライフラメンコ」の羽佐間正義役、「刀剣乱舞」の加州清光役や劇場版アニメ「KING OF PRISM by PrettyRhythm(キンプリ)」の仁科カヅキ役など多数出演している。

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